ソードアート・オンライン~神話と勇者と聖剣と~
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ALO:フェアリィ・ダンス~両刃の剣と天駆ける龍~
世界樹へ《5》鉄翼の龍と紅尾の龍
前書き
続々と新キャラが登場ですねw
「……へぇ。あんなことができる子だったんだな」
暗がりの中、一人の人間が口を開く。目の前には、いくつものモニターが開いていて、青白い光で部屋を照らしている。
「面白いなぁ…」
声は女性のものなのに、しゃべり方は男。その人間は、机の上に足を乗せると、後ろの方へ話を振った。
「どう思う?」
「……今はそんなことはどうでもいい。仕事に集中しろ、小波」
「はいはい…」
小波と呼ばれた人影は、再びモニタを向いた。
仮想世界、《アルヴヘイム・オンライン》の映像である。
そこには、茶色い髪をもった、妖精の少年が映し出されていた。
「……清文」
小波はモニタの前…つまり自分の足のすぐそばに置いてある写真に目を向けた。
そこには両親と、幼い小波と、そして茶色いぼさぼさ髪の少年が映し出されていた。
「……姉ちゃんに、かっこいいとこ見せてくれ」
*
斬る、斬る、斬る斬る斬る斬る斬る………。
グリヴィネの戦い方は、《ラスター・ギア》を握った途端に変わった。
行く先々で増えていくスレイヴ達を、エンドフレイムすら残らないように刈り取っていくかのようなバーサクっぷりを見せて、セモン達を驚かせた。
彼女の通り過ぎた後は、スレイヴ達の《浄化》されたエンドフレイムの放つ銀色の光で覆われ、陽光か月光の様に光り輝いていた。
「凄まじいな…」
「こんなに強いプレイヤー、SAOにもいなかったんじゃぁ…」
「ほんとだな。もしSAOに彼女がいたら、間違いなくユニークスキル持ちだったろうな…」
「……お二人とも、そろそろアルンが見えてくるはずです。そこまでたどり着いたら、あとは空を飛んでいきましょう」
「おっ!いよいよ空か」
「なんだかすごく久しぶりのことのように思えるわ…」
「ふふふ。そうですね。では、アルンに急ぎましょう。向こうに着いたら休憩を兼ねて作戦を立て直すとしますか。それではみなさん、出発しますよ」
グリヴィネが二枚の翅を開き、妖精郷の大空に飛翔する。それを追ってセモン、コハクも。
「イヤッホ―――――!やっぱり飛行はやめられないな!」
「セモンさん、このALOがなぜかの《SAO事件》があったにもかかわらず人気なのか、分かりますか?」
「…いや」
「もしかして、今セモンが言ったみたいに…『飛べる』から?」
「正解です、コハクさん。本来VRでは、人間にできないことをすることはできません。しかしこのゲームでは、自力で空を飛ぶことができる。人類の古代からの夢である、『自力で空を飛ぶこと』をなしえるのです。だから、このALOはここまでの人気を誇る」
「は~…」
そのまま飛行を続けること約十分。ついに、前方にこの世界の中心である《央都アルン》が見えてきた。
グリヴィネが振り向き、前方を指さして言う。
「見えましたよ!あれが《世界樹》イグドラシルです!!」
「でっか――――!」
「すごい!!」
雲に隠れた空までその枝を伸ばす巨大な大樹。二重表現になるが、そうとしか形容の使用がない。あまりにも大きな、大きな、木。
「もうすぐアルンの入口が……」
「?」
「どうしたの?」
「!!―――――二人とも、私の後ろに!!」
「へ!?」
「な…きゃぁぁぁ!?」
ものすごいスピードで、巨大な剣が飛来した。
「なんだ今の!!」
「来ますよ!」
もう一本。さらにもう一本。
「何のつもりなんだ!」
「……『ジェネレート、《ラスター・ギア》。SS《マスターズ・カウンターメモリー》」
グリヴィネの右手に黒ずんだ鎌《ラスター・ギア》が出現する。同時に、彼女の周りにいくつものホロウィンドウが開く。
「なんだ!?」
「お二人とも、下がっていてください。ハザードさんが来ます」
「え!?」
「…ハザードが?」
その言葉が嘘ではないことが、次の瞬間に証明された。
「グルルル……ルゥォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」
真紅の双翼をもった竜が、現れた。
「ハザード!」
ハザードは右手に握った大剣でグリヴィネを攻撃する。しかしその攻撃は、ホロウィンドウに阻まれてしまう。さらに攻撃されたウィンドウが光を放ち、反撃の魔法を打ち出した。どうやら攻撃されたときに自動でカウンターをするシールドのようだ。
「グルァ!!」
「……」
ハザードが剣を振る。カウンター魔法を受ける。グリヴィネが鎌をふるう。しかしハザードも左手と尾の大剣をふるって防御する。
一進一退。どちらのHPもなかなか減らないが、確実なヒットをすればその瞬間に戦いの勝敗が決まるであろう。
そしてその瞬間は、意外と早くやってきた。
ハザードが、どこから持ってきたのか四本目の大剣をふるったのだ。これによりラスター・ギアの軌道がわずかにずれた。
「しまった!」
「グルァァッ!!」
三本の大剣がふり下ろされた――――――その瞬間。
ガキィィン!!という音がして、凄まじいインパクト光が弾けた。
「!?」
「なんだ!?」
「何が起こったの…?」
グリヴィネもその隙に引き返してくる。ホロウィンドウはいつの間にかすべて消えていた。
「まさか……。傍観の立場を決め込むと思っていたのに……」
グリヴィネは天を仰いで叫んだ。
「私だけでは頼りにならないと!?私ではこの仕事が務まらないというのですかマスター!!」
その声にこたえるように、聞きなれた声がした。
『そんなはずないじゃないか、僕のグリヴィネ。君がピンチだから駆けつけてやったのに。…まぁ、僕の《鎌》ならそんな助けは要らなかったかもしれないけどね』
同時に、空が、裂けた。
そしてそこから、何者かが降りてくる。
オレンジ色のぼさぼさの髪。眉間と鼻の間に走ったX字の小さな傷。
見間違えるはずもない。セモンのもう一人の親友にして、グリヴィネの兄――――――――
「シャノン」
シャノンはセモンとコハクに笑いかけてから、ハザードの方を向くと、言った。
「そんなナンセンスな翼つけて…。ほんとにモンスターじゃないか。翼っていうのはね、今はこういうものが流行なのさ」
その背中に、金色の光が密集し…
金属の翼が、現れた。
「はじめようか。《英雄殺しの龍》と、《龍殺しの栗鼠》の戦いを。」
後書き
はい、久々の投稿であると同時に、久々のシャノン君の登場です。
しかも金属の翼って…。
ちなみにファーヴニルは北欧神話でジークフリードと戦った伝説の英雄殺しの龍。発音の問題で『ファフニール』とも言います。ラタトスクは世界樹ユグドラシルに住み着く、大蛇ニーズホッグ、大鷲フレスヴェルグと対立する栗鼠または鼠の名前です。
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