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銀河転生伝説 ~新たなる星々~

作者:使徒
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第2話 これはロアキアの陰謀ですか? いいえ、アドルフの責任転嫁です


――マリウセア星系第三惑星ロアキア――

ロアキア統星帝国の首都星でもあるこの星に緊急報告が届いたのは5月8日のことであった。

「バートウッド艦隊が壊滅……だと!?」

ロアキア統星帝国第五皇子であり、ロアキアの実質的な最高権力者であるオリアス・オクタヴィアヌスは、信じられないという表情で報告書を目にした。

バートウッド艦隊は14000隻の大艦隊であったが、戦場より無事に撤退出来た艦は1000隻に満たなかった。

13000隻。
一度の会戦でこれほどの損害が出たのは、ロアキアの歴史上初である。

「いささか、銀河帝国とやらを侮り過ぎていたようですな。よもや15000隻にも及ぶ艦隊を有しているとは……」

そう応えるのは宰相のプラヌス。
オリアスが幼少の頃より教育係として仕えており、オリアスに帝王学を叩き込んだ人物でもある。
それ故、オリアスは敬意と信頼を込め彼のことを『先生』と呼んでいた。

「報告によれば、こちらの誤解により発生した戦闘のようですが」

「バートウッドに非が有るとはいえ、報復は必要だ。このままでは我がロアキアの沽券に関わる」

なるほど、とプラヌスは返す。
確かに、この問題は現場の暴走で済ますことのできる事態では無かった。

「私が艦隊を率いて一戦を交える。奴等を打ち破った後、改めて交渉を開始するとしよう。無論、こちらに有利な形でな。出来るなら、こちらの支配下に置きたいところだが……」

「敵の規模が判らぬ故、確実なことは言えませんが、それは難しいでしょうな。あの艦隊が敵の全てというわけではありますまい。彼らとの戦いで下手に消耗すれば、ルフェールやティオジア連星共同体の連中を利すばかりですぞ」

ロアキアとほぼ同等の国力を有するルフェール。
先年発足し、辺境13国の内9ヵ国(アルノーラ、ウェスタディア、シャムラバート、大康国《ダージエン》、トラベスタ、ドルキン、ノス・ベラル、ハーラン、リンドガット)が参加するティオジア連星共同体。

ロアキアの国力低下は相対的にこれらの国々の地位を高めることとなる。
そうなれば、ロアキア傘下の国であるイグディアスやオルデランもロアキア陣営を離脱しかねない。

「……そうだな、先生の言う通りだ。多くを望んだが故に多くを失う愚は避けるとしよう」


この1週間後、オリアスは直営の艦隊15000隻を率いて帝都ロアキアを進発した。
途中、マルゼアス艦隊15000、オルメ艦隊11000を加えたその総数は41000隻に達する。

銀河の半分を統べるロアキア統星帝国が本格的に動き出そうとしていた。


* * *


――新帝都フェザーン――

一方、銀河帝国第38代皇帝であるアドルフ1世の元にも、先日の戦闘及びその後の調査結果に関する報告書が送られていた。

「……なるほどね」

レンスプルト星系を占領したロイエンタールからの報告で、アドルフはロアキア統星帝国という国家の概要がある程度分かってきた。

「10万隻以上の艦隊を常備している大国か……」

戦闘艦艇の数こそ全盛期の自由惑星同盟より劣るが、同盟が国家総動員体制を敷いていたことを考えると総合力では互角か……もしくはロアキアが上回るだろう。
どちらにせよ、容易にはいきそうにないことは確かである。

だが、指揮官や兵の質ではこちらが圧倒的に勝るとアドルフは考えている。

片や長きに渡る自由惑星同盟との戦争を勝ち抜いた銀河帝国。
片や自分よりも数で劣る敵に圧倒的な戦力を叩きつけることしか経験のないロアキア統星帝国。

同数以上の戦闘の場合、どちらが精神的に優位かは明白であった。


<アドルフ>

ここは、もうひと押しすべきだな。
資料を見る限り、ロアキアがこのまま大人しく引き下がるとは思えん。
最低でも、もう一戦はすることになるだろう。

敵も次は相当数の戦力を揃えてくるだろうから、ロイエンタールだけじゃちとキツイな。
幸い、ミッターマイヤーとスプレインが既に向かっているから兵力的に著しく劣勢になることは無いと思うのだが……。

念には念を入れておくか。

「ファーレンハイトとミュラーを呼べ」

・・・・・

しばらくして、ファーレンハイトとミュラーが俺の前に現れる。

「ファーレンハイト、卿は直ちに艦隊を率いて新天地へと向かえ」

「御意」

「ミュラー、卿はガイエスブルクの要塞司令官兼駐留艦隊司令官となり、要塞を新天地へと移動させろ。三長官には俺から話を通しておく」

「ガイエスブルクを新天地へ……ですか?」

「そうだ、この先何がどうなるか予測がつかん。補給と艦艇の整備ぐらいは支援しとかんとな」

「そういうことであれば、微力を尽くしましょう」

「うん。では、卿らの武運を祈る」

俺がそう言って敬礼すると、二人も敬礼して部屋から出て行った。


それにしても、気になると言えばロアキア以外の国家もだな。

ロアキアと同等の国力を持つルフェールに9ヵ国の小国が連合したティオジア連星共同体。
これら一つ一つは、銀河帝国には及ばない。

だが、我々という未知の勢力に対しロアキア、ルフェール、ティオジア連星共同体が協力態勢を築くことになれば……。

悪夢だな。
これは最悪のケースも考えて、ドーバー回廊にイゼルローン級の要塞を建設しておいたほうが良いか。

だが、イゼルローン級の要塞となると完成は少なく見積もって7、8年はかかる。
どうすべきか……。

よし、オダワラ要塞をドーバー回廊へ持って行こう。
あれはイゼルローン要塞には及ばないが、ガイエスブルク要塞に匹敵する。
新要塞の建造まで回廊を守り通してくれるだろう。

しかし、さすがにこれだけのことを俺の独断で決めるわけにはいかんな。
決定は三長官と協議をしてからにするか。



……やべぇ、そう言えば今日発売の新作エロゲ買うの忘れてた。
急いで買いに行かねば!

くそっ、これもロアキアの陰謀か!
この恨みは忘れぬぞ!
 
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