| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

トーゴの異世界無双

作者:シャン翠
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第四十七話 これがホントの社会勉強だ!

 闘悟は男の申し出を受けた。
 三人の男はニヤッとする。
 獲物がかかったとでも思っているのかもしれない。


 しかし、他の者は全員眉を寄せている。
 どうやら男達のすることに気づいているのだろう。
 もしかしたら、こうして三人の男達にターゲットにされた者が数多くいたのかもしれない。
 だが、誰も何も言わない。
 言えば自分達に被害が及ぶと考えている。
 それだけでも、三人の男達の評価が窺い知れる。
 それなりの実力は持ってはいるが、一度事を起こすと手がつけられないのだろう。
 乱暴者の登録者ってところか。
 闘悟は男達の分析が終わり、フッと口角(こうかく)を上げる。


「よ~し、俺は一歩も動かねえ。さあ、いつでも来い小僧!」


 待ち切れないといった感じで急かしてくる。
 闘悟はジリッと距離を詰めようとしたところ、アンシーが声を発した。


「あ、あのトーゴさん! これは……っ!?」


 その言葉の続きを言おうとした時、手をかざして止めたのは、男達ではなく闘悟だった。


「え……?」


 そして、闘悟は人差し指を立てて口元に持っていく。
 無声音(むせいおん)で口だけを動かす。
 だ・い・じょ・う・ぶ。
 その行為を見てアンシーは何も発せなくなった。
 男達もそのやり取りを不審に眺めていた。


「早くきやがれ! それともビビったか! ああ?」


 闘悟は微笑を崩さず男を見る。


「行くぞ?」


 すると、闘悟は無造作に歩を進める。
 男は宣言通り一歩も動きはしない。
 そのため簡単に男の懐に入れる。


 その時、ほとんどの者は息を飲んだ。
 殴られる。
 皆がそう思った。
 三人の男達も愉悦な表情をする。


「ははは! 甘いわ小僧っ!!!」


 男は力一杯拳を握りしめて、闘悟に向けて振りかぶった。
 その拳には男の魔力が込められてある。


 バシィィィッッ!!!


 そんな小気味いい音が周囲に響く。
 アンシーは見ていられず目を閉じた。
 ほとんどの者は、闘悟の体を心配して目を閉じていた。
 だが、男の拳がぶつかって音がしたのは、闘悟の人差し指だった。
 魔力と魔力が衝突し、衝撃音を生んだのだ。
 それに気づいた男は顔を引き攣(つ)らせる。


「なっ……ななな……っ!?」


 言葉にならない衝撃が走る。
 今、目の前に写っているのは現実なのか分からなかった。
 何故なら、自分の渾身(こんしん)を込めた一撃、闘悟を粉砕しようとした一撃が、その闘悟に指一本で防がれていたのだ。
 その事実をあっさり受け入れられる者などいないだろう。
 男の驚く声で、目を閉じていた者は現実を直視する。
 それはアンシーも同様だった。
 皆が驚きに包まれる中、闘悟ただ一人だけが笑っている。


「さて、一発、本気で殴っていいんだよな?」


 闘悟の言葉に明らかに動揺する男。
 理解が及んでいないせいか、足元がふらつく。
 額から汗が垂れてくる。


「ま、待て……何が……一体……?」
「ま、これも社会勉強だ」
「は?」


 ドゴォッッッ!!!


「ぐぼあぁっ!!!」


 ちょうど入口の方へ、ドアを破壊しながら男は勢いよく飛んでいく。
 一パーセントパンチ・弱ってとこだな。
 男は外に投げ出され、体をピクピクと痙攣(けいれん)させている。
 どうやら、一撃で意識を刈り取られたみたいだ。
 白目をむき泡を吹いている。


「格の違いが分かったか?」


 闘悟はもう返事は返ってこないはずの男に向かって言葉を放った。
 自分に言われた全てを、逆に言い返してやった。
 だが、飛ばされた男だけではなく、その場にいた誰もが目を点にして、闘悟の言葉を聞いてはいなかった。
 それだけ、今目前で起こったことが驚愕からも逸脱(いつだつ)していたのだろう。
 まるで予想していなかった結末。
 尋常ではない魔力を拳に纏(まと)っている少年。
 現に男をあっさりと吹き飛ばした現実。
 誰もが確信した。
 この少年が、先程の異常な魔力の正体だと。

 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧