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ヘタリア大帝国

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TURN67 ドクツ軍壊走その十

「予想通りにはいかなくともね」
「それでもですね」
「結果が大事ですね」
「何事も結果が全てだよ」
 こぷ言うのだった。
「そう、結果がね」
「我々がドクツを支配する」
「そのことがですね」
「如何にも。まあドクツが負けてもいいんだよ」 
 ヒムラー達にとってはだというのだ。
「大事なのはあくまで」
「ドーラ教ですね」
「それですね」
「俺はドクツ人である以前にドーラ教徒なんだよ」
 それが今の彼だというのだ。
「だからドクツが勝つとか負けるよりも」
「ドーラ教をどう広めるか」
「それが我等の目的と関心ですから」
「ドクツが負けても構わない」
「そういうことですね」
「そうそう。俺はドクツとかどうでもいいんだよ」
 またこう言うヒムラーだった。
「勝つには越したことがないけれど」
「その方がドクツを乗っ取りやすいですからね」
 側近の一人が言った。
「ですから」
「あの娘を篭絡すればいいだけれだからね」
 ヒムラーもロンメルと同じくレーティアをあの娘と呼んだ。だがそこには敬愛の念はなく軽く見ているだけだった。
「それだけだからね」
「そうですね。総統を篭絡すれば終わりです」
「ドクツが勝利した場合は」
「モスクワを陥落できたら勝てたけれど」
 ヒムラーも確かな戦略眼がある、だから言えた。
「もうドクツは勝てないね」
「このままずるずるとですか」
「敗れていきますか」
「戦争ってのは勢いも大事なんだよ」
 伊達に士官学校にいた訳ではない。ヒムラーは戦局も見られた。
 それで今もこう側近達に話していくのだ。
「流れってやつだね」
「しかも総統は過労で倒れています」 
 グレシアしか知らない筈のことも彼等はどういう訳か知っていた。
「総司令官不在です」
「実際今の状況でもあの娘がいればドクツは勝てるさ」
 ヒムラーはまた言った。
「今の状況ならあの娘の力なら挽回できる」
「即座に軍を立てなおしあの大怪獣のことも調べて、ですね」
「リベンジを果たしますね」
「それが出来るよ、あの娘ならね」
 レーティアの巨大な資質はヒムラーも見極めている、とはいっても認めているのはそういったものだけである。
「けれど倒れているのなら」
「どうにもならない」
「そうですね」
「そう、ドクツはこのまま崩れていくよ」
 まさにそうなると再び言うヒムラーだった。
「ベルリンも陥落だね」
「そして我々はどうするか」
「それが問題ですが」
「カテーリングラード辺りで一旦消えよう」
 ヒムラーは軽くこう答えた。
「全てはそれからだよ」
「ガメリカからあの人造人間のデータは手に入れました」
「既に北欧で開発中です」
 部下達はヒムラーにこのことも述べた。
「それにサラマンダーもあります」
「一旦北欧に消えますか」
「そしてベルリンが陥落すれば」
 まさにその時はだというのだ。
「出るよ。ただ」
「ただ?」
「ただといいますと」
「あの娘の開発した、そしてしている兵器のデータはあらかた手に入れたけれど」
 だが、だというのだ。
「一つだけ手に入ってないね」
「そうですね。爆弾も」
「それは」
「まあ。ドーラ砲のデータも入ったし人造人間部隊とサラマンダーがある」 
 この二つがあるというのだ。
「それを出して俺の力があれば」
 ヒムラーは手袋を脱いだ。その手の甲には青い宝石がある。
 その宝石を見て摩りなが奇妙な微笑を浮かべて述べた。
「ドクツはそのまま健在だよ」
「カテーリン書記長相手にもドクツをそのまま戻せますね」
「ドーラ様より頂いたそれなら」
「ああ、大丈夫さ」
 ヒムラーは今度は軽い笑みを浮かべた。
「じゃあ何も知らない面々を盾にして消えよう」
「カテーリングラードにおいて」
「そうしましょう」
 側近達も応える。ヒムラーは再び手袋をはめてその手にあるものを隠した。敗走をはじめたドクツ軍を見て彼等だけが笑っていた。


TURN67   完


                    2012・11・13 
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