トーゴの異世界無双
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第四十二話 このメイド……最強なのか?
闘悟はヒナを家まで送ることにした。
まだ日が落ちてはいないとはいえ、小さな女の子を一人で帰らせたくは無かった。
ヒナは大丈夫だと言ったが、闘悟もそこは譲れない所であり、結局はヒナが折れた。
だが、ヒナの家までたどり着いた時、少しばかり後悔したのも事実だった。
何故なら今目の前にあるのは、間違いなく豪邸だったし、それに……。
「も、もしかして……ヒナって……貴族?」
「そうだ……よ?」
え? 知らなかったの?
みたいな顔をされても全然知らなかったよ。
それに……どういうわけか、殺気を放っているメイドさん達に囲まれているこの状況を、誰か説明してほしかった。
闘悟は両手を軽く上げながら、周りを囲んでいるメイド達の視線を受け止めていた。
「ヒ、ヒナ? こ、この方達は一体……?」
「メイド……だよ」
いや、それは分かってるんだ。
オレが聞きたいのは、どうして怖い顔でオレを取り囲ってるのかということで……。
すると、一人だけ雰囲気の違うメイド女性が現れた。
「お帰りなさいませお嬢様」
「ん……ただいま……ニコ」
丁寧に頭を下げるメイドの名前はニコというらしい。
長くサラサラしているオレンジ色の髪の毛を揺らしながら、こちらに歩いてくる二十代前半くらいの女性。
少し目はつり上がっているが、間違いなく美人にランクされるルックスである。
他の人も美人な人が多いが、この人はまた一味違う。
ヒナの前に来ると、闘悟にも視線を送る。
「こちらは?」
「ヒナの……大切な人……だよ」
時間が止まったと思った。
おいおい、ヒナよ、その言い方はいろんな意味で危ない。
冷たい汗が全身から噴き出す。
驚いているのは、ヒナ以外の全員だ。
だが、何故かニコと呼ばれたメイドだけは嬉しそうに微笑んだ。
「まあ、それではこの方がトーゴ様でしょうか?」
「……ん」
ヒナはコクコクと肯定を表す。
すると、周りにいたメイド達もいきなり顔を赤らめていく。
きゃ~とか、やる~とか、わけの分からない声が耳に入ってくる。
闘悟にはもう何が起こっているのか判断できずにいた。
「送って……くれた……の」
またもや周りから、下校デートとか、手は繋いだのかしらなどという言葉が届く。
「それはようございました」
ニコは闘悟の方へ向き、頭を下げる。
「お嬢様をお送りして頂き、真にありがとうございます。それと、いきなりの不躾な対応、申し訳ございませんでした」
いきなりの感謝と謝罪に戸惑いを隠せないが、一応反応は返していく。
「あ、いえ、こちらこそ遅くなって申し訳ありませんでした……」
「あら、どうせならもっと遅くなっても構いませんでしたのに」
突然何を言い出すんだこの人は?
十歳の女の子を夜遅く連れ回すのはダメだろう。
「そ、それじゃ、オレはこの辺で……」
一刻も早くこの場から逃げた方がいいと判断した闘悟は背を向けようとした。
しかし、いきなり肩を掴まれる。
な、何ぃっ! 気づかなかっただとぉっ!?
本当に肩を掴まれるまで近づかれた気配を感じなかった。
「まあまあ、せっかくですから、お夕食をご一緒になどいかがですか?」
物凄い笑顔なのだが、手に込められた力も物凄かった。
「い、いえ、そんな、貴族様のお家に平民であるオレが世話になるなんて……」
「あらあら、そのようなことお気になさらないで下さい」
「はは、いえでも、家主(やぬし)様が何て仰るか……」
「ご心配ございません。わたしが言って聞かせますので」
あなた何者なんでしょうかぁぁぁぁ!!
一介のメイドが家主に抗議できるってどんだけだよ!
「ニコは……最強」
「嫌ですお嬢様。そんなことありませんよ? おほほ」
絶対最強だこの人!
闘悟の中でこういう人は逆らったら駄目だと判断が下りている。
「それに、お嬢様も、トーゴ様とご一緒にお食事頂きたいですよね?」
闘悟はそっとヒナの顔を見る。
「トーゴ……だめ?」
そんな潤んだ瞳で見ないで!
そんな捨て猫のような庇護欲出されたら、オレはこう言うしかないじゃないか!
「お世話に……なります」
渋々了承することになった闘悟であった。
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