八条学園怪異譚
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第二十六話 植物園その七
「そんなに驚くことはないよ」
「北海道限定じゃなかったのね」
「それは昔の話だよ。それ言ったらキジムナー君達も同じじゃない」
「そういえばそうね」
「別に国旗食いちぎったり全身に蜂まとってダイビングしたり大使館の前で雉を生のまま食べたりしないから」
「そこまでやったら変態どころじゃないんじゃないの?」
聖花は送り犬のその例えに異様なものを見て言う。
「というかお医者さんが必要なんじゃ」
「まあなあ。おいらもネットで見て引いたよ」
猫又は後ろ足で歩きながら前足を腕の様に組んで述べた。
「正真正銘の変態がいるってな」
「正真正銘よね」
「ああ、そうだよ」
まさにだというのだ。
「そういうのに比べたらおいら達は普通だからさ」
「普通っていうかそういう人達の方が変でしょ」
比較対象として間違っている、聖花はこう突っ込みを入れた。
「生のお肉食べるって」
「勿論その場で殺してね」
それで大使館の前でわざわざ食べるというのはというのだ。
「味付けなしで内臓とかを食べたんだ」
「やっぱり普通にお医者さん来るわね」
「ネットで流れて大騒ぎになったよ」
実際にそうなったことである。
「いや、凄かったから」
「だから普通じゃないから」
聖花も話を聞いて引く。
「どういう意図でやったのよ、そんなの」
「生のお肉って危ないのよ」
愛実はここから言う。
「よっぽど確かなお店でないと食べたら駄目だし。それに」
「内臓はだよな」
「内臓は特に気をつけないと」
愛実は真剣に猫又達に話す。
「寄生虫とかいるから。そうそう、ホッキョクグマさんの肝臓はビタミンAが多過ぎて火を通しても食べたら駄目なのよ」
「よくそんなの知ってるね」
「お姉ちゃんに教えてもらってね」
それで知っているというのだ。
「そうでなくてもホッキョクグマさんはね」
「まだあるの?あの熊には」
「絶対に寄生虫がいるからって。セイウチさんもらしいけれど」
「虫だね」
「そう、お肉は生で食べるなって」
勿論虫を避けてだ。
「そう言われたの」
「よく知ってるお姉さんだね」
「成績優秀なの、大学でも学年で首席らしくて」
「へえ、凄いね」
「八条大学でね」
つまり二人の上の学部である。
「そこでなの」
「学部何処?」
「文学部よ」
そこだというのだ。
「そこの国文学科ね」
「そこで首席なんだ」
「そうなの、とにかく何でも知っててね」
何気に姉自慢に入る。
「美人で優しくて色々教えてくれてるの」
「あんたシスコンだね」
猫又は姉について喋り続ける愛実に突っ込みを入れた。
「そうだね」
「いや、シスコンじゃないけれど」
「充分シスコンだよ」
客観的に見てそうだというのだ。
「そこまで熱く語れるっていうのはさ」
「そうかしら」
「そうだよ。まあとにかくそのお姉さんにだよね」
「そのホッキョクグマさんのこともね」
教えてもらったというのだ。
「とにかく生のお肉、特に内臓系は」
「迂闊に食べたら危ないってことだよな」
「うちでもレバニラ炒めとかホルモンあるけれどね」
定食である、無論単品でもある。
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