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連隊の娘

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第二幕その四


第二幕その四

「トニオ・・・・・・」
「久し振りだねマリー」
 トニオであった。彼はにこりと笑ってマリーに言ってきたのであった。
「元気そうで何よりだよ」
「貴方、まさか」
「そうだよ。あれから頑張ってね」
 トニオはその笑顔のままマリーに話していく。62
「こうして隊長になったんだ」
「まだ一年なのに」
「一年だけれど武勲を挙げ続けてね」
 その結果だというのである。
「それで今はね」
「そうだったの」
「お嬢様」
 二人が話をしているとホルテンシウスが部屋に入って来た。
「奥様は・・・・・・えっ!?」
 彼は兵士達を見て。まずは飛び上がらんばかりに驚いた。その目を大きく見開かせて。
「何で兵隊さん達がお城に!?」
「やあ、貴方ともお久し振りです」
「お元気そうで何よりです」
 兵士達は驚く彼に対して気さくに述べた。
「お変わりもないようで」
「真に有り難いことです」
「再会はいいのですが」
「まあまあ」
「それでですね」
 兵士達はにこやかに笑いながら彼の周りに集まって来た。そうしてその肉付きのいい背中に手を回してそのうえで誘うのであった。
「あちらで飲みましょう」
「ワインがあるのですよ」
「お酒ですか」
「ええ。ソーセージもありますよ」
「それで一杯」
「それなら」
 ホルテンシウスはそのワインとソーセージに誘われて兵士達と共に部屋を後にした。部屋に残ったのはマリーとトニオだけだった。二人は熱い目で見詰め合う。
「まさかこんな形で再会できるなんて」
「君に会う為に来たんだ」
 じっと自分を見詰めるマリーに対しての言葉である。
「その為に戦って。ここまでね」
「そうだったの。私の為に」
「それでマリー」
 彼もまた熱い目でマリーを見て言うのであった。
「僕は君を」
「迎えに来てくれたのね」
「そうだよ。君の為にここまでね」
 こう話しているとであった。今度はシェルピスが部屋の中に入って来た。その手にはコーヒーポットがある。だがそのコーヒーポットを手に立ち止まることになってしまった。
 そのトニオを見て。びっくりした顔で言うのであった。
「まさかと思うがもうなのか」
「はい、戦ってその武勲で」
「隊長になってそのうえ」
「マリーを迎えに来ました」
 シェルピスに対しては誇らしげな顔で述べるのであった。
「こうして」
「凄いものだ」
 その彼を見て首を横にゆっくりと振りながら感歎の言葉を漏らした。
「僅か一年で、とはな」
「マリーは僕にとって女神だよ」
 トニオは満面の笑顔のままであった。
「それで僕を隊長にしてくれたんだ」
「私がなの」
「そうさ。僕が隊長になれたのもマリーに会いたいから」
 だからだというのである。
「マリーを迎えたいからだったからなんだ」
「それで一年で隊長に」
「だから言えるよ」
 マリーをじっと見詰めての言葉だった。
「僕は君が好きだ。そして」
「そして?」
「結婚しよう」
 プロポーズだった。
「僕とね」
「ええ、私も」
 マリーに異存がある筈がなかった。
「私もよ。二人一緒にね」
「ずっといよう」
「そう。また三人が巡り合えた」
 シェルピスもここで言ってきた。
「だからもう三人は離れないでおこう」
「軍曹も一緒にいてくれるのね」
「そうさ」
 優しい笑みでマリーに告げる。
 
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