【完結】剣製の魔法少女戦記
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第四章 空白期編
第九十五話 『見つめ直す心…復活のエース』
前書き
今回は出だしからいきなり空白期の設定時期で重なる暗い話ですが、題名通りなのはを色々と癒します。
そしてゴンゴロ様からいただいた宝具や真名開放の言霊の設定、他にも色々な意見を取り入れて書いてみました。
ゴンゴロ様、ありがとうございます。
…フェイトが執務官試験に落ちた。
まぁ、今回はなのはの重傷の時期も重なったことなので集中することができずしょうがなかったと思いあきらめるしかないだろう。
フェイトも今回の反省を活かしてもっと勉強して知識をつけて再度執務官試験を挑戦しようと心を新たに奮起している。
アルフやアリシアも応援しているしまだ頑張れるだろう。
しかし、それになのはは一番責任を感じてしまっているのだった。
フェイトがなのはのお見舞いをしにきていた時に、
「フェイトちゃん、私がこんな事になっちゃってフェイトちゃんの執務官試験にも影響を及ぼしちゃって、ごめんね…」
「そんなことはないよ、なのは。私の事は気にしないでいいからなのはは早く体を治してね…?」
「うん。ごめんなさい、フェイトちゃん…」
なのはのネガティブな姿を見てフェイトは私だけじゃなのはを勇気づけることは難しいとさらに悩んでしまっていた。
それからいくつか話を交わした後、病室を後にするフェイト。
すると前方からシホがお見舞いにやってきたらしい。
それで、
「シホ…」
「フェイト、なのはの様子はどう…?」
「…うん。やっぱり色々と心に抱えちゃっているんだと思う。それに少し焦っているように見える。リハビリはやってるみたいだけどあんまり捗っていないらしいし…」
「そう…。いきなり壁ができちゃったら止まっちゃうものね。なのはは今決断を迫られているのよ。
だから傷がたとえ治っても立ち直る事ができなきゃまた同じ失敗を繰り返しちゃうわ」
「そうだね…シホはどうにかできない?」
「期待されていて悪いと思うけどこればかりはなのは自身が乗り越えなきゃいけない道よ。だからいくら言葉を重ねてもなのはの心にはきっと響かないわ…」
「…うん」
それでフェイトは悲しみの顔になり俯く。
そんなフェイトの肩にシホは手を乗せて、
「安心しなさい。気休めかもしれないけどなのははきっとまた立ち上がれる事ができるわよ。そんな弱い心じゃないわ、あの子は」
「うん。私、なのはがまた空を飛ぶことを信じるよ」
「そう。その意気よ。まわりも暗かったら本人にも影響しちゃうんだから根気よくね」
「うん!」
それでフェイトは元気が出たのか笑顔を浮かべて帰っていった。
しかしその反面、シホはフェイトがいなくなると途端に浮かない顔になり、
「…とはフェイトに言ったものの、心配の種は尽きないのが正直なところよね。なのはにどんな顔をして会えばいいのかしら…」
《奏者の気持ちも分かる。だが本人の前では前向きに行くというのも奏者が決めたことだろう? ならば奏者の心行くままに接しればいい》
ネロが霊体化してシホにそう話しかけてきた。
なのはの一件以来各サーヴァントはよりいっそうマスター達につくことが多くなったというのも現状である。
フェイトの背後にはランサーの気配があったからさっきの会話を聞いているから後でフォローを入れてくれるだろう。
「…そうね。とうの私が気落ちしていたら締まらないものね。よし、なのはに会いにいくとしようか」
《うむ》
シホはなのはの病室に一度ノックをして返事があったので入った。
「あ、シホちゃん…」
「なのは、調子はどう…?」
「にゃはは…大丈夫だよ。こんな傷、すぐに治せるよ」
「そう。でも無理はしちゃダメよ。もうなのはのあんな姿は見たくないからね?」
「うん。シホちゃん…」
「そういえば、レイジングハートは戻ってきたの…?」
「まだ修理中みたい…結構派手に壊しちゃったから…」
「レイジングハートも早く戻ってくるといいわね…」
「…うん。シホちゃん、少しお話いいかな?」
「いいわよ。私に話せることならなんでも聞くわ。だって私は高町なのはの姉妹のシホ・E・S・高町なのよ? だから遠慮はすることないわ」
「うん…。あの事故の時ね、私、恐怖しちゃったんだ」
「恐怖…?」
「うん。どんなに頑張って努力して鍛えても魔法が使えなかったら私は所詮ちっぽけで無力な人でしかないと、思い知らされたんだ」
「そう…でもそれは誰だってそうよ。人は所詮人でしかないから。どんな力を持っていてもそれは変わらないわ」
「うん…それでこうして入院して考える時間があるといつも考えるんだ。
私は、なんでこんなに無茶をし続けてきちゃったんだろうって…」
「なのは…」
「弱気だよね、私。これじゃみんなに胸張ってありがとうを言えない…。ごめんなさいも言えない…。私は、こんなに弱かったんだって…今は思うの」
それでシホはどんな言葉をなのはにかけていいのか迷う。
「…でも、今回の件で一つ分かった事があるの」
「なに…?」
「私を支えてくれるみんなのありがたさが身に沁みるんだ…。
こんな無茶をした私をこんなに心配してくれて、お見舞いもしてくれて、フォローもしてくれる。
…ああ、私はこんなに恵まれているんだなぁ…って」
「そう…そう思えるのは嬉しい事よ。私も過去、色々なものを無くしてきてこの世界に来て得た家族、親友、仲間の大切さを改めて認識できたから」
「シホちゃんも…私みたいに大怪我を負ったことはある?」
「何度かあるわね…。その度に私の親友や仲間達は介抱をしてくれたわ」
「そっか…。やっぱり家族や親友、仲間は大切だね」
「ええ。とても大切で、でもその輪から逃げたらすぐに無くなってしまうような危うい暖かさ…」
シホとなのはは心を通わさせている。
そして二人は思う。
フェイトやはやて達親友の事を。
桃子や士郎、恭也、美由希達家族の事を。
サーヴァント達仲間の事を。
そしてなのはは今一番会いたい人物の事を思う。
「レイジングハートに会いたい…。私のパートナーに早く会いたい…。一緒にまた、空を飛びたい…ッ!」
それでなのはは涙を流す。
シホはそんななのはを抱きしめて介抱する。
少しそのまま二人はじっとしていて、しばらくしてなのはは泣き止むと、
「…ごめんね、シホちゃん。なんか色々と恥ずかしい事私しちゃった…」
「いいわよ。なのはのためなら私はなんでもするわ。だから傷が治ったらまた一緒に空を飛びましょうね?」
「うん…!」
それでなのはは久しぶりに笑顔を浮かべた。
「よし、いい笑顔ね。なのは、リハビリを頑張るのよ。私はもちろん、みんなはなのはが早く治るように応援しているからね?」
「うん。ありがとう、シホちゃん!」
「それじゃまた来るわね。なのは…」
「うん!」
それでシホは病室を出る。
病室の外では、
「なのはを勇気付けてくれてありがとうございます。シホ」
「なのはのためですから。オリヴィエ陛下」
オリヴィエにそう答えてシホは道を歩く。
そして後は帰るだけなのだがシホは反対側を歩いていきマリーがいるデバイス室へと向かう。
◆◇―――――――――◇◆
Side シホ・E・S・高町
私はなのはの願いを叶えてあげようと思いマリーさんの下へと向かった。
「すいません、マリーさんはいますか…?」
「あれ? シホちゃんだ。どうしたの?」
「はい。レイジングハートの修理具合はどうなっていますか…?」
「うん。色々とフレームを交換しなきゃいけなかったけどもうだいたい直っているよ」
「そうですか。…話はできますか?」
「できるよ。今、モニターに出すね」
マリーさんはそう言ってモニターを展開する。
そこにはレイジングハートが映し出される。
「レイジングハート、久しぶりね」
《はい、シホ。…ところでマスターは今どうしていますか?》
「少し元気がついたみたい。でも、涙を浮かべてレイジングハートに会いたいって口をこぼしていたわ…」
《そうですか…。私も早く直してもらいマスターのもとへ行きたいです》
「そうよね。それで一つ提案があるのよ」
《なんですか…? マスターのためになるのならいくらでも協力しますよ、シホ》
「うん…それはね?」
私の提案にレイジングハートと、そしてマリーさんも賛成してくれた。
ネロも興が乗ったと言って話に乗ってくれた。
これだからやっぱりいい人達である。
レイジングハートは人工AIだけどしっかりと自分の意思を持っているから嬉しいわ。
それから私はなのはを勇気付ける会と評してみんなにも協力してもらうことを決めた。
◆◇―――――――――◇◆
まずはフェイト達から。
「…シホ? どうしたの? え? なのはを勇気付ける会! うん、いいと思うよ!」
「なのはを勇気つけるなら私も協力するよ!」
「いいね。その案は賛成だよ」
「そうだな。いいと思うぞ」
「いいと思うよ、シホちゃん」
「いいですね」
「いいんじゃねぇか…?」
アリシア、アルフ、クロノ、エイミィさん、リンディさん、ランサーも協力してくれるというのでよかった。
………………
……………
…………
次ははやて達。
「え? なのはちゃんを勇気付ける会? ええね。私は賛成や! みんなもそれでええね?」
「はい、主」
「いいと思いますよ、はやてちゃん」
「シホもいい事を思いつくな! あたしは賛成だ!」
「それで高町が勇気つくならいいだろう」
はやての言葉にまず守護騎士達が賛成し、
「高町をか。いいだろう、私で役立つならな」
「シホが言い出したことだ。なのは嬢にもきっと届くだろう」
リインフォースと士郎も賛成、っと。
「いいですね。宴会ごとはタマモも楽しいですよ!」
「宴会じゃなくて勇気付ける会だからな、キャスター。ああ、俺でよければ協力する」
「そうだね。いいと思うわよ」
キャスター、志貴、アルクェイドも乗ってくれた。
「リインも賛成ですよ!」
末っ子であるリインも賛成してくれた。これで八神家も全員オッケイね。
「あ、でしたら私の宝具である玉藻鎮石でなのはの心を見つめ直させるいい機会ですねー」
キャスターがなにかを考えているようだ。
内容を聞いてみて私はこれも使えると思い協力してもらうことにした。
………………
……………
…………
次はすずかとアリサ達。
「なのはちゃんを…? いいよ、シホちゃんの頼みなら喜んで協力するよ!」
「はい、スズカの友達であるナノハのためですからね」
「なのはのためなら協力させてもらうわ!」
「呵呵呵! 楽しい催しになること請け合いだな」
すずかとアリサ、そしてライダーとアサシンも受けてくれた。
後は、高町の家族達。
「シホちゃん、なのはを勇気付けるというけどなにか考えはあるのかい?」
「はい。これに関してはマリーさんもレイジングハートも納得済みです。後はなのはが使えればの話ですが…。
以前から何度も教えてきましたからきっとなのはならできます!」
「そうか。シホちゃんがそう言うなら協力させてもらうよ」
「そうね。なのはが良くなるんなら私たち家族もいくらでも協力するわ。ね、恭也に美由希」
「ああ、母さん」
「うん! なのはの為だもんね!」
「今までシホが教えてきた甲斐がありましたね。まさか最初に自分に使うとはナノハも思わないでしょうね」
高町の家族とそしてアルトリアにも賛成してもらった。
それから後は、ユーノとフィアにも連絡をとった。
『うん。なのはのためなら僕は構わないよ』
『なのはさんの勇気をつけるんですね。はい、協力させていただきます、お姉様!』
よし、これであらかた知り合いには話が出来た。
後はマリーさんが仕上げてくれるのを待つだけ。
私も準備をしなくちゃ。
◆◇―――――――――◇◆
それから計画は立って時間と日にちは過ぎていき、
「シホちゃん、どこに連れて行ってくれるの…?」
今日はリハビリ終了後のなのはを車椅子で連れてもうみんなで集まる場所の定番となった月村邸に向かっていった。
「今日はなのはを勇気つけるためにみんなである事を計画していたのよ」
「私を、勇気付ける会…?」
「うん…そのために今日まで準備をしてきたのよ。みんなの協力もしっかりととって…」
それで私達は月村邸に入る。
「なのはちゃん、いらっしゃい!」
『いらっしゃい!』
そこではもう先に集まっていたのかみんながなのはを出迎えてくれた。
それでなのはは驚きの表情をしている。
そうそう、驚いて欲しいのよ。
でも、まだ驚きは終わらないんだから。
なのははみんなに手を引かれて中心へと連れてこられて、
「なのは、みんなで録音したボイスレコーダーだよ」
フェイトが代表してそれを渡す。
それをなのはは、
「聞いていい…?」
「うん…」
それでなのははボイスレコーダーを再生する。
そこには私も含め『なのは、頑張れ!』といった感じの内容のみんなの声が入れられていた。
それを聞きなのはは涙を流す。
「にゃはは…。嬉しくて、涙が止まらないの…これをみんながわざわざ録音してくれたの?」
「そうだよ、なのは。シホの提案でこれを録音したんだ」
「シホちゃんの…?」
それでなのはは車椅子を動かして私の方へと体を向ける。
その顔には感謝の意が込められていた。
「シホちゃん、ありがとう! とっても嬉しいの!」
「よかったわ。喜んでもらって…それと少し今からなのはの心の闇を見つめ直す呪術をキャスターにやってもらうわ」
「私の心の、闇…?」
「ええ。それじゃキャスター、お願いね?」
「わかりました」
キャスターはその手に神宝である玉藻鎮石を出現させた。
「古来より鏡とは人の心の真実を映し出すものと言われています。さぁ、なのは。今からこの鏡をじっと見ていてくださいね?」
「う、うん…」
そしてなのはは鏡をじっと見つめていると次第に鏡が光りだしてそこにはまだ幼かったなのはの一人で部屋の中にいるという光景が映された。
「さぁ、なのは。あなたはこの光景…覚えていますね?」
「うん…お父さんが事故で大怪我をして入院していた時期のこと。
私はお父さんのお見舞いにいくお母さんやお店の手伝いをするお兄ちゃんやお姉ちゃん…いつも一人で寂しかった。
けどずっと家でこれ以上みんなに迷惑かけないようにみんなが帰ってくるのを良い子でいようと待っていたそんな時間…」
それで士郎お父さん達は「なのは…」と声をあげて改めてなのはが抱えている闇と対面する。
「…その頃からあなたは他人には無茶を隠すようになったのですね?」
キャスターの問いかけになのはは無言で頷く。
「では、次はご家族の事を映しますね?」
そう言ったキャスターはまた鏡を光らせる。
そして映し出される士郎お父さん達の姿。
そこではなのはが一人でなにもかも抱え込んでしまい喋ってくれない事に対して自分達がもどかしく不甲斐ない思いをしているといったものだった。
「…あなたの家族の人達はずっとあなたの事を心配していたのですよ?
なのは、あなたはまだ子供なのですから素直に甘えてもいいのです。なんでも相談してもいいのです。それが家族の絆というものなのですから」
「うん…うん…!」
「次、いきますね?」
また鏡が輝くとそこには私がこの家にやってくる光景が映し出された。
「…シホが高町家にやってきた時期ですね。なのは、あなたはシホと…それにすずかとアリサ、フェイトにアリシア、はやて、ユーノにフィアット。
他にもたくさんの人々によって支えられているのです。一人でなんでもできるというのは愚かな思い上がりもいいところです。
ですからいつでも友人達に相談しなさいな。そうすればあなたはその心に抱えている闇を乗り越えることができます。
たとえ遠く離れていようともいつでもみんながいると自覚できます。
…あなた一人が無茶をする必要などありません。ここにいるみんなが…あなたの家族、友人、仲間…他にも色々…あなたの手をとってくれます。あなたは恵まれています。
だから、もう無茶をしないと約束できますか…? なのは…」
キャスターの問いかけになのはは、
「…無茶をしないっていう保証はできません。でも、もう相談なしに無茶はしません。
お父さんやお母さん、お兄ちゃんやお姉ちゃん、シホちゃん…それにみんなにも私と同じように辛い気持ちになってもらいたくない…いつでも笑っていて欲しい…!」
なのはの心からの言葉にキャスターは笑みを浮かべる。
「それでいいのです。あなたの心の闇は一生かけても無くしたりはできませんが…それでも正面から向かい合うことはできます。だから…もうわかりますね? なのは」
「うん…! キャスターさん!」
それでなのはは私達全員に車椅子を向けると、
「みなさん、心配かけてごめんなさい。でもこれからは無茶はあまりしないように心がけます。だから! そんな私でもいいなら見守ってください!」
それに一同は「当然だ!」と言わんばかりに頷く。
どうやら全員なのはを受け入れてくれたようだ。
桃子お母さんもなのはを抱きしめている。
他のみんなも色々な表情をしているけどどれもいい顔だ。
もう、なのはの心は大丈夫だろう。
それで私はキャスターに話しかける。
「ありがと、キャスター。なのはの心と向かい合わせてくれて…」
「いえいえ、この程度お安い御用です♪ 久しぶりにいい仕事をしました!」
「キャスターさん、ありがとうございます!」
「なんのなんの♪…さて、それでは私の出番はここまでですね」
キャスターはそれで引き下がっていった。
「なのはにはビックリしてもらったけど、でもまだ驚いてもらいたいのよ」
「シホちゃん…?」
それで私はポケットから修理と改修が終えたレイジングハートを取り出す。
「あ! レイジングハート!」
《マスター。待たせてしまって申し訳ございません。ようやく帰ってこられました》
「うん! うん!…よかった、レイジングハート…」
私はなのはにレイジングハートを渡し、
「なのは、レイジングハートを握りしめて魔術回路を起動してみて…」
「魔術回路を…? なんで…?」
「きっと、なのはは驚くわ」
「う、うん…」
それでなのはは魔術回路を起動した。
それによってレイジングハートから光が溢れなのはを包み込む。
それは特定の人にしか話していなかった事で話していなかったみんなも驚きの声を上げていた。
なのはの魔術回路を通してレイジングハートがなのはの体を治癒しているのだ。
「これって…!?」
「レイジングハートに今まで仕事があって見送っていた魔術式システムを修理がてらにマリーさんに私が頼んでレイジングハートにも了承を得て搭載してもらったのよ。
なのはの治癒魔術がレイジングハートを通して使えるように…」
「シホちゃん…! レイジングハート…!」
《マスター…》
「レイジングハート…」
《あなたが折れない限り、私は絶対にあなたの力になります》
「うん…!」
《そしてマスター。こういうものは前向きな気持ちと気概で乗り越えていけるものです。
私も気休めですが、これからもあなたの体を癒します。そして守り抜きます。
…大丈夫です。マスターの体は必ず快復します。
だって、あなたは不屈の心…レイジングハートのマスターなのですから…。
そしてまたあの約束の空へともに駆けましょう…。
あなたと私でならどこまでも飛んでいけます。そう、マスターが望む限りどこまでも…》
「うん! うん! ありがとう、レイジングハート! 私、リハビリ頑張るから! だからまた一緒に…空を飛ぼう!」
《はい、約束です》
そしてまたなのははレイジングハートを握りしめて涙を流した。
でも、もうそれは不安からくるものではない。
私達が安心できるものだ。
「シホちゃん、ひどいで…? こんなサプライズ、私達に黙っていたやなんて…」
そこにはやてが話しかけてきた。
みんなも続くように私に教えてもらえなかったことで不満の声を漏らす。
「そうだぞ!」
「うんうん!」
「ごめんごめん…でもみんなもびっくりしたでしょ?」
「それは…まぁ、うん」
「なら、それでいいじゃない? なのははもう不安な事はないわ。後は体を治すだけよ」
「呵呵呵! セイバーのマスターはなかなか粋なことをする!」
「奏者よ。そなたのその魂はとてもいま輝いているぞ。ますます惚れ直した!」
「シホ。とても今あなたはカッコイイですよ」
「ありがとう。ネロ、アルトリア」
「シホ…。なのはの心を救っていただきありがとうございます」
「オリヴィエ陛下…私にできるのはこれくらいでしたから」
「ですがなのはは笑顔を取り戻しました。感謝します」
「はい…」
それでその気持ちを素直に受け取ることにした。
そこになのはがやってきて、
「シホちゃん。レイジングハートに新しい力を与えてくれてありがとう!
そして…ううぅ、色々言いたいことがあるのに言葉が出てこない。でも、全部をひっくるめてありがとうシホちゃん!」
「ええ。だからなのはもこれからもリハビリを頑張るのよ」
「うん! 私、頑張る。そしてまたみんなのところに戻ってくるね! そして遅れを取り戻すんだ!」
「その意気よ」
「うん!」
それから全員でなのはを勇気づける会は行われていきその日は全員表情に陰りもなく楽しんだ。
◆◇―――――――――◇◆
そして時間は経ち勇気づける会も終了となりなのはは一時帰宅を許されて一度家に帰ってきていた。
それから私は高町家の家族全員を集めてある事をしようと話す。
気休めだけど私はなのはに対してある事を実施することにした。
「桃子お母さん、ちょっとなのはに試したいことがあるんですけどいいでしょうか…?」
「なに、シホちゃん…? 言ってみてちょうだい?」
「はい。どこまで効果があるか分かりませんけどなのはの快復がより早められるかもしれませんので…」
「シホちゃん…それって」
美由希姉さんに聞かれるが少し待ってもらって、
「ちょっと待ってくださいね…? 投影開始…」
私はギルガメッシュの原典宝具から解析して得たある宝具を投影する。
それは二匹の蛇が杖に絡まっているというものだ。
解析して使い方も分かっている。
これをなのはの前にかざして、
「いくわよ、なのは?」
「う、うん…」
「“我が前に傷つき横たわりし者に医神アスクレピオスの名をもって彼の者に加護を与えん”…」
これはマグダラの聖骸布と同じように言霊を発することで真名開放にまで繋がるもので、なのはの体を少しずつ癒していく。
これこそアヴァロンに並ぶ治癒宝具『医術神の蛇の治癒杖』。
「なにか体が軽くなっていくよ…シホちゃん、これってなんの宝具…?」
「アスクレピオスの杖…ギリシア神話に登場する名医アスクレピオスの持っていた蛇の巻きついた杖よ。
治癒の象徴という概念が刻まれているから使えば対象者を癒す効果を発揮するわ。
これはリンカーコアの損傷までは簡単に治せそうにないけど、でも気休めでも体が治ってくれたらと思って使ってみたわ」
「うん! なにかわからないけど体がリハビリ以上に癒えた感じがする! シホちゃん、本当に色々とありがとう!」
「うん…。よかった。レイジングハートの後なんでなんか悪い気はするけどね…」
「そんな事はないよ。レイジングハートもシホちゃんも私をしっかりと癒してくれたよ…」
「なら、よかったわ」
「シホちゃん、なのはのために色々と手を打ってくれてありがとう…」
「士郎お父さん、気にしないでください。家族じゃないですか?」
「奏者よ。そなたはとても家族思いなのだな。余も嬉しくなってくるぞ」
「そうですね、ネロ」
「でも、その宝具はここだけで使用してよかったですね」
オリヴィエ陛下がそう話す。
まぁリンディさん達が知ったら裏切るってわけじゃないけど私の使える宝具の一つとして報告されかねないからね。
今まででも使って映像に残されている宝具は管理局の上層部に知られていると思うし。
「それにそんな便利な能力だったらシホちゃんは他にもある宝具を頼りにされて色々なところに引っ張りダコにされてしまうからな…それだけが心配だな」
恭也兄さんの心配の言葉に感謝の気持ちになる。
「確かにそうですね…ま、今はなのはの体が快復が早まっただけでよかったと思えばいいじゃないですか」
私の言葉に全員は「そうだね」と返してくれる。
そう、何があろうとなのはやみんなは私が守ってみせる。だけど無茶はせずにね!
◆◇―――――――――◇◆
…それからなのはは元気にリハビリに励んでいき、小学生の六年生に上がる頃に通常生活で普通に生活できるまでに復帰し、リンカーコアも完全に治ってすぐに管理局の仕事を再開した。
でも、もう以前のように考えなしではなく自身の体も考えて無茶はせずに冷静に行動するようになった。
「シホちゃん、私、やっと復帰できたよ!」
「そうね。頑張ったわね、なのは」
「一緒に教導隊に入ろうね?」
「ええ。頑張っていきましょう」
「お姉様! 私も頑張ってお二人についていきますよ!」
「わかっているわ、フィア。三人で教導隊入り、よね?」
「うん!」
そして三人で一緒に教導隊入りをする誓いを立てたのだった。
後書き
キャスターの呪術や宝具はこういう時に色々と活用できて便利ですよね。
そしてなのはとレイジングハートとの不動の絆を描かせていただきました。
マジでいい相棒ですね。
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