| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ファイアーエムブレム~ユグドラル動乱時代に転生~

作者:脳貧
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第五十四話

 
前書き
いつもご覧の皆様ありがとうございます。

お気に入り350件、総合評価2000点突破、ありがとうございます!

 

 
 ダーナの被害は先日の比では無く、多くの市民が被災していた。
 火災がそう酷くなかったと言っても、隕石召喚(メティオ)により破壊された家屋の倒壊や破損部分の飛礫、それによって引き起こされた混乱による二次三次の災害、それを鎮める為の衛兵や守備隊は先日の戦で大きく損害を出しており、また城壁外の敵軍にも備えねばならなかったのも被害の拡大に拍車をかけた。
 市長を始め有力者は行方不明、もしくは遺体が確認された。
 外を囲んでいた軍勢は乗り込んで戦う為に来ていたと言うよりはむしろ、脱出しようとする市民を閉じ込めるためだったのでは無いかと証言の結果そう思った。
 ここから逃がさず、皆殺しにする算段だったのだろうか?





 とりあえずは輜重隊の物資を各地の炊き出し所に配り、泊る所の無い人々のために瓦礫を片づけ、こちらも軍用品である天幕を張り、マナナン王にはイザーク本国へ救援隊の要請を願い出た。
 
「市民のみなさん! 先日、リボー軍に襲われた際に、お仲間と共に街を守ってくれたお方です!」
「……ダーナの方々、ご安心ください。 わたしはレンスターのミュアハ王子です。 あなた方を襲ったグランベルでもリボーの者でもありません。 また、リボー族長の過ちを詫びに来られたイザークのマナナン王は救援の物資を速やかにこちらへ提供してくださると仰せです!」

 天幕を幾つも設営した街の広場で演説(リップサービス)を行った。
 それというのも、生き残っていた市長の家族から市民を元気づけるために、街の外から救援が来ていると知らせて欲しいと依頼されたからだ。
 市長の家族や一部の有力者、それに子供などの弱者の一部は詰所(アジト)の地下に掘っていた地下道に匿われていた。
 彼らからの聞き取り調査によるとアイーダ将軍らは最初、救援に来たという触れ込みでダーナを訪れ、友邦グランベルからの使者に安心した市長らを城外に設営した自らの陣地に連れ出し、すぐさま攻撃を開始した。
 城門や城壁は見向きもせず、街の中へ隕石召喚(メティオ)を行うアイーダ将軍の部隊は打って出てきた守備隊の残兵や義勇兵を散々に打ち破り、レイミア隊の残留部隊は弓箭隊を中心にしていたが、隕石召喚(メティオ)を操る魔道士周辺には重騎士が取り囲み、狙撃すら叶わない状況だったという。
 隕石が降り注ぎ、火災や家屋の倒壊が引き起こされたそんな状況に恐慌状態になった市民の一部は城門から逃げ出そうとしたが、そこを狙ったかのように敵部隊は火炎魔法を次々に放ち、凄惨な地獄絵図を作り上げたそうだ。
 隕石召喚(メティオ)の魔法は術者の力量で威力は大幅に変わるとはいえ、堅固な城壁、城門を破壊するのはよほどの局所集中でもしない限り難しい。
 一般の家屋などに被害を与えるのが目的ならばその限りでは無いので、敵地を焦土にするのが目的で使ったとしか思えないやり方は、手段を選ばず戦争を引き起こそうとする並々ならぬ決意の現れとさえ思えた……
 





 事態の収拾や復旧に数日過ごす中、望楼からどこかの軍勢のような物が見えると知らせがあり、一気に緊迫した事態となった。
 各員に緊急事態を告げるよう指示を出し、詰所(アジト)に寄ってレイミアにはここでしっかり構えていてくれと告げ、抱き寄せてから口づけを交わした。

「……さぁ、いっといで」

 手指までは靭帯を傷つけられておらず指で俺を押しやると、彼女は微笑んだ。
 左右両腕を三角巾で吊っているのは、僅かに残った腱や靭帯を保護したりするためで、リハビリ時間以外はそうしている。
 肩からガウンをかけて三角巾を目立ちにくくしているその様は、腕組みをした俺たちの指揮官みたいに見えるのは贔屓目だろうか。
 新調したいくつかの装備を引っ掴み、出がけにもう一度だけ口づけを交わすと城壁を目指して俺は駆けた。





 城壁に登り、軍勢を確認するとどうにも違和感が……いや、あれは!
 見知った旗印を見て俺は警戒感を数ランク落とした。 
 装っている恐れがあるとはいえ、あれはシアルフィの軍旗。 
 リボーとの戦いに伴い走らせた伝令への答えと見るべきだろう。
 それにアイーダ将軍との戦いからまだ日は浅いので彼らにその情報は伝わっていないと思う。
 もしものことがあればすぐにでも城門を閉ざす準備をしっかり伝えて、数名を伴い城門の外で彼らからの使者を待ち受けた。

「……こちらはグランベル六公爵家が一つ、シアルフィ家からの使者です。 ミュアハ殿下、お久しいですね」
「これはノイッシュ殿、ご無沙汰しております。 先日の戦で街の中は荒れ果て、軍勢を留める余地がないものでして、しばしの間、貴軍には城外にお留まりいただけないでしょうか」
「わかりました。 あるじにはそう伝えましょう。 それにしても……」
「それにしても?」
「しばらくお目にかからぬ内に、ひとかどの武将のような佇まいにおなりのことと思いまして」

 ……シアルフィ家に滞在していた頃、彼には訓練をよく付き合ってもらったものだ。
 久闊を叙したとはいえ、一度彼には戻っていただき主人の(おとな)いを待つことにした。





 久々に会ったシグルド公子は、なによりもまずダーナ市民達の身を案じ、救援物資の搬入を最優先にしてくれた。
 率いてきた軍勢には宿営地を築いてその場で待機するよう命じ、自らはわずかな伴を従えたのみで入城した。
 グランベルの有力者の子弟である彼のことを紹介すると、今は市長の代行をしている彼の息子をはじめ代理や代行というものがついた有力者達は警戒の色を濃くしたのも致し方ない。
 どの程度意味があったのか未知数だったが、俺が全責任を持つと宣言することによって彼らも不審を表立って表すのを控えてくれたので多少は信頼を勝ち得ていたのを知ることになった。
 これに先立ちマナナン王についてはどうだったかと言うと、グランベル軍を追い払ったことやリボーとの戦での被害はあくまで戦闘員同士でのものに留まったことにより大きなしこりは残っていないようだ。
 



 シグルドさんを俺たちの詰所(アジト)に招待し歓待すると共に、レイミアと、そして彼女とのことを報告すると大層驚かれると同時に、自分以外がどんどん所帯持ちになってしまうと笑いだした。

「笑い事ではございませんぞ、公子をお慕いしておられるお方は今か今かとお声がかかる日を待ち侘びておいでなのです」
「はははっ、ミュアハ王子、大人をからかうものではない。 私にそんな人など……未来の公爵夫人になりたいからというお方達ならばそうであろうが……」
「いえ! 公子その人を想われておられる方がおいでなのに気が付かれておられぬだけです!」
「……まぁ、そういうじれったい二人を眺めているのも乙なもんだよ」

 
 ブリギッドさんがそう締めると、彼は少し憮然とした表情を見せたがすぐに改め、

「そういえば行軍中にシルヴィア君を迎えに行くと言っていた方達が居たので同道してもらったよ。
……私はあの子とミュアハ王子が結ばれると思っていたのだが……人生は色々あるというやつだね、はははっ」
「迎えの方がお出ででしたか、なかなかいらっしゃらなくて気を揉んでおりました」
「明日にでもお引き合わせするよ」

 リボーとの戦、そして先日のグランベル軍との戦の話を伝えると全面的な協力を約束してくれた。
 そんな簡単に信じたりしていいのかとの思いもあるが、街を荒らしたのがグランベル軍の手によるものならば、むしろ自分がそれを止めなければならないと熱く語ってくれた。
 ……シアルフィ軍が城外で街を守護していると思うと安心してその夜は過ごすことができた。
 
 
 



 翌日、迎えの使者達が詰所(アジト)を訪れてくれたので、シルヴィアを交えて話し合いを始めた。
 急を要する負傷者への治療、両腕が思うように動かないレイミアの身の回りのことを手伝ってくれたりと、得難い人材ではあるけれども、これ以上危険に晒す訳には行かないという気持ちもある。
 ただ、結局のところこの子は自分のやりたいようにしかしないしという諦めのような呆れたようなそんな気持ちもある…………

「こうしてはるばる迎えにきていただいたのだし、神父様のもとに戻ったほうがいいよ」
「……お願いします。 どうかあたしをここに居させてください。 言いつけは絶対破りません」
「またここは戦場になるのだからいけないよ………」
「だったら尚更、わたし……償いたいの」

 真剣で迷うことなく一途な、そんな姿を見ると無条件に認めてしまいたくなる。
 レイミアのことで自分をきっと責めているのだろう………その代償となることをしたい……そう思っていることも痛いほどわかる。

「……償う必要があるようなことなど無いんだから自分を責めちゃいけない」
「違う! みんな何も言わないけど、全部あたしが悪いんだもん……」

 心無い第三者から見れば泣き落としにしか見えないだろうけれど、涙ながらに訴える彼女の真剣さ、切なさ、辛さはよくわかる。
 もし、無理に帰らせたところで、また嘘をついて途中で引き返してきた時に戦に巻き込まれたら……それに、素直に聞いて帰ったとしても彼女の心はずっと苛まれるだろう……

 
「いや、あの時、みんながお前のことを置いてやれって言ったんだし、レイミアは命に代えてもなんとかするって言ったんだ。 ……ちょっと体の自由が効かなくなったけど彼女は生きている。 だからいいんだよ」
「でも、あなただけは、そうじゃなかったもの……それにレイミアの身の回りのお世話する人だって要るじゃない……そんなことじゃ全然だけど、少しでも責任とらせてほしいの」

 俺の中ではとっくに答えは出ていたけれど、素直になれない自分はなんて愚かなのだろう……
 


 なんのことは無い、心の中ではみんなを巻き込んだ自分が悪いなんて思っておきながら、彼女(シルヴィア)のことをどこかで責めつづけているんだ、俺は。
 一番つらい目に遭わされたレイミアが、そんなこと微塵にも表さないのに、何なんだよ、俺は……
 


 
「…………………この前は、もう知らないとか特別扱いしないとかさ、酷いこと言って、すまなかった。 これからも、居て欲しい」
「……いいの? ほんとに?」
「もちろんだよ。 それに……口では気にするなとかお前は悪くないって言っておきながら、お前のこと、心のどこかで責めていたかもしれない……許して欲しい」
「許すも何も……ミュアハは何も悪くない! あたしのほうこそ、自分の気持ちを少しでも楽にしたいだけで我儘言ってるだけだもん……」





 迎えの方々には非礼の極みと思いながらもクロード神父のもとへとお帰りを願った。
 しかし、彼らなりにダーナの事情を知ったようで生き証人としてここに残ると申し出てくれ、随員の一人だけは事情を知らせるために帰還の運びとなった。
 帰還する使者を見送った後、再び会うことになったのは……あの美貌の占い師だった……

 



 
 その後、シグルド公子、マナナン王、それに主だった街の方々を交えて対策会議を開いた。
 もちろんレイミアは俺の傍に居てくれる。
 三つ、いや、ダーナも加えれば四つの勢力で構成された俺たちは互いに誰が仕切るかで揉めそうなものだがマナナン王もシグルド公子も主導権争いなど興味が無いようでダーナ市長代行に全てを委ね、市長代行は軍権を俺に一任してくれた。
 規模から言うと二か国の軍はもとより、ダーナ守備隊の残存よりも小規模な俺たちが何故……と思うところだが、シグルド公子は実戦経験が浅くマナナン王は実際に戦火を交えた相手の直接の上役、守備隊は瓦壊しており……公子か王のどちらに任せても角が立つ。
 レイミア隊は実戦経験、装備、練度などの総合力を見ればどこにも引けは取らず、文句の付けどころだったかもしれないのが代表が女性ということだったが、それもクリアし、公子や王にも位負けしない王子が代表だ。




 ……だが、任された本人としては無理w俺は神器使え無いしwww格下wwwwwwwwwwwww
  
 
  
 

 
後書き
ずいぶん更新が空いてしまい申し訳ありません。
つぶやきをご覧の方々には繰り返しになり、言い訳にしかなりませんが
月曜日にPCが壊れて木曜日に買い換えたのですが・・・windows8が原因か新PCが原因か不明ですが
どうにも使いにくく、すぐに全文が消去されてしまったり、急に書いた部分が消されたり、
カーソルが変な場所にワープしたりと・・・
こういう不具合みたいなので手が止まるとガクッとモチベ下がるのですが、負けずに頑張ります。.. 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧