アマールと夜の訪問者
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第三章
第三章
「どうぞ宜しく御願いします」
「王様が一度も二人も」
「二人じゃないよ」
しかしここでアマールが言うのだった。
「三人いるよ」
「三人!?」
「そうだよ、三人だよ」
こう母に話すのである。
「三人いるんだけれど」
「まさか」
「いえ、そのまさかです」
母が驚いているとこの声が聞こえてきたのだった。
その声がした方を見ると白い髪とそれと同じく白い色の長い髭を持つ老人がいた。彼もまた立派な服を着てそこにいるのであった。
「私も入れまして」
「貴方様まで」
彼の姿を見て余計に驚く母だった。
「いらしてたんですか」
「やるべきことがありまして」
「ねえお母さん」
アマールがここで母に尋ねる。
「この方も?」
「そうよ、王様よ」
「バルサザーといいます」
それがこの白髪の王の名であった。自ら名乗ってきたのだった。
「はじめまして」
「王様が三人も」
母はあらためてその三人の王を見て言った。
「どういうことかしら」
「それでですが」
「宜しいでしょうか」
「あのです」
その三人の王達が母とアマールに声をかけてきた。
「宜しければですが」
「一晩の宿を御願いできますか」
「御礼はしますので」
「御礼ですか」
御礼と聞いて母の目が動いた。
「それは一体」
「これです」
「如何でしょうか」
「これをお渡しするということで」
王達がこう言って出してきたのは宝石だった。それもかなり大きな。
「それは・・・・・・」
「駄目でしょうか、これでは」
「ではこういうものもありますが」
「これも」
王達は続いて珊瑚を出してきた。次に水晶を。どれもアマール達にとっては全く縁のないものだった。
「そちらの都合もありますし」
「駄目ならいいのですが」
「私共は外で休むことにしますので」
「いえ、そんな」
母の目は王達の出す様々な宝に釘付けだった。そしてそのうえで言うのだった。
「宜しければ」
「そうですか。それでは」
「御言葉に甘えまして」
「お邪魔させてもらいます」
「わあ、王様がお家に入って来たよ」
アマールは三人の王と従者が家の中に入って来たのを見て満面の笑顔になった。王達は家の空いている場所にそれぞれ座った。そうしてアマールと母の話を聞くのだった。
「そうですか。アマール君が脚が悪いのですね」
「はい」
暗い顔でカスパー王の言葉に答える母だった。
「その通りです。二年前の怪我で」
「その時の怪我で、ですか」
「その時に夫も亡くなりまして」
母はそのことも話すのだった。
崖から落ちて」
「それはまた」
メルチオ王は彼女の言葉を聞いて同情を見せてきた。
「お気の毒な」
「それからは母一人子一人です」
「しかもお子さんは脚が悪い」
バルサザー王はアマールを見ながら述べた。
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