子供と魔法
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第四章
第四章
「そんな、どうしよう」
そして困り果てて庭の木によりかかると。今度は木が言うのでした。
「痛い、痛いよ」
「えっ!?」
その声に思わず木から離れました。
「僕まだ何もしていないよ」
「前にしたじゃないか」
木はこう男の子に対して抗議するのでした。
「この前ナイフで切ってくれたよね」
「そうだ、僕もやられた」
「私もよ」
他の木も男の子に抗議してきました。
「葉っぱを取られたり」
「枝を折られたり」
「何でそんなことをするんだ」
「痛いじゃないの」
「木も痛いって感じるんだ」
男の子はこのことに唖然としました。
「そんな、全然知らなかったよ」
「知らなかったで済まないよ」
「その通り」
今度はトンボと蝙蝠が男の子の上を飛んで怒った声をかけてきました。
「私の恋人は何処なの?」
「僕の奥さんは?」
「それは」
「さあ、何処なのよ」
「君が捕まえたんじゃないか」
こう言って怒りの声を男の子にかけるのでした。
「教えてよ」
「まだ生きているんだろ?」
「いるよ」
そのことは泣きそうになりながらも答える男の子でした。
「どちらもちゃんといるよ」
「じゃあ早く会わせてよ」
「子供達が泣いているんだからな」
彼等の抗議も続きます。
「さもないと許さないから」
「どうしてくれようか」
「そんな、どうしてくれようかって」
彼等の只ならぬ剣幕にさらに困ってしまう男の子でした。
「トンボは籠の中にいるし蝙蝠もちゃんと檻の中にいるし」
「じゃあ早く出してよ」
「早くな」
「そうよそうよ」
今度はリスが出て来ました。さっき男の子がペンでいじめていたあのリスです。
「何かあったらすぐにあたしをいじめて」
「今度はリス!?」
「そうよ。籠の中にいつも入れてるわよね」
男の子を睨んで言うのでした。
「あんな狭い中に」
「けれどそれは」
「あんたも籠の中に入ったら?」
そしてこんなことも男の子に対して言います。
「どれだけ自由がなくて辛いかわかるわよ」
「自由が・・・・・・」
「この暴君!」
「悪いことばかりする!」
ありとあらゆる家具や木々や動物達の声が聞こえてきました。
「もう許さないからな!」
「この悪党を倒せ!」
「容赦するな!」
こう口々に言うのでした。
「いじめてばかりいて!」
「悪戯小僧!」
男の子を取り囲み逃がそうとしません。男の子はこのまま皆からやっつけられるものと思い頭を抱えて小さくなって震えていました。そして気付いたのでした。
ページ上へ戻る