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トーゴの異世界無双

作者:シャン翠
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第二十二話 個性豊かだなコイツら

 今日は試験評価返しだけで終わりだそうだ。
 授業は明日からみたいだ。
 先生がいなくなると、闘悟はクィルに声を掛けようとする。
 しかし次の瞬間、ガシッと肩を掴まれる。


「え?」


 闘悟は背後を確認すると、そこにはネコミミ男子がいた。


「さて、話を聞かせてもらおうか有名人」


 物凄い笑顔で言われた。
 え? 何なの?
 すると、闘悟の傍に数人のルームメイトが寄って来た。


「やっほ~、よろしくね転入生くん」


 手を挙げて人懐っこく明るい笑顔を向けてくる。


「アタシはメイム・ウォーレス。ねえねえ、トーゴくんって呼んでいい?」


 おお、随分フレンドリーな女だな。
 見たところ普通の人間のように見える。
 髪色は紫で、短めのツインテールを携えている。
 年齢は自分と同じように見える。
 笑顔が印象的な女の子だ。


「ああ、好きに呼んでくれ」
「ありがと~。ほら、ヒナも挨拶挨拶!」


 メイムがそう言って促したのは、隣にいる見るからに幼い少女だった。
 小学三年生くらい……かな?
 そういや、ルームには年齢で分けられてはいなかったんだっけか?
 だから、ルームメイトは様々な年齢と種族の者達がいる。


「わたし……ヒナリリス・イクス・ヴァウス。…………よろしく……ね?」


 うわ! 何だこの恐ろしく庇護欲(ひごよく)を誘う生き物は!?
 可愛いなんてものじゃない!
 できれば自分の妹にしてみたい!
 そしてシスコンになりたい!
 いやいや、何カオスに包まれてるオレ!?
 闘悟は高鳴る鼓動を抑えつつ、ヒナリリスを見つめる。
 身長は百三十センチくらい。
 足元にも届くほど長い銀髪は、宝石のようにキラキラ光っている。


「よ、よろしくな、ヒナリ……リス?」
「ヒナで……いい……よ?」


 何故か首を傾げてくる姿はもう我を忘れて抱きしめてしまうかもしれない衝撃がある。


「それでそれで? トーゴくんてば~、姫様とはどんなお関係なのかな?」


 やっぱそれが聞きたかったのか。
 闘悟は恐らく聞かれるだろうと思っていたので慌てはしなかった。


「そうそう、早く教えろよな」


 興味深そうにカイバが聞いてくる。
 ヒナも同様なのか、コクコクと頷いている。
 闘悟は一度クィルに視線を送る。
 話してもいいかといったサインだ。
 彼女は穏やかな笑顔を作り頷く。
 了承を得たところで闘悟は自分の立ち位置を教えた。


「異世界人? それホント?」


 メイムが頭にハテナを浮かばせながら問う。


「異世界人……約二百年前にも……訪れた事実が……ある……よ」
「そうなの?」


 ヒナの言動にメイムが目を見開く。
 へぇ、何百年か昔とは聞いてたけど、そうか、二百年前か……。


「黒髪……黒目……異世界人の……特徴……だよ」
「そ~なんだぁ~」


 カイバとメイムがしきりに頷く。
 だが闘悟だけは興味深い視線をヒナに向けていた。
 ヒナの知識に驚いていたからだ。
 恐らく異世界人の情報は、そんなに広まってはいない。
 それはギルバニア王も言っていた。
 文献も少ないのに、彼女はどうやって異世界人の情報を得ていたのか、そのことに興味が湧いた。


「なあヒナ」
「……なあに?」
「どうしてそんなに知ってるんだ?」
「……わたし……知りたがり……だから……だよ」


 ということは、ヒナはオレと同じように知識欲が半端(はんぱ)無いってことだ。


「お父様や……お母様にも……聞いたん……だよ」
「へぇ」
「他にも……図書館で……調べたり……したん……だよ」


 何故かこの子に物凄く親近感が湧いた。
 やっぱり知識ってのはいいよな。


「偉いなヒナは」


 闘悟は微笑みながらヒナの頭を撫でる。
 いきなりの行動に、彼女は瞬間ビクッとしたが、気持ち良さそうに目を細める。
 ああ、何か愛でてるよオレ。
 すっごい気分が和むわ。


「あ、あの……」


 そんな申し訳なさそうな声を掛けてきたのはクィルだった。
 何故か少し不機嫌な雰囲気を醸し出していた。


「ト、トーゴ様! 女の子の頭を、そんな簡単に撫でてはいけませんです!」
「え? あ、そうか? あ……と、ごめんなヒナ」


 闘悟は慌てて手をどけるが、ヒナは物足りない顔をする。


「ううん……トーゴなら……いい……よ」


 うわ! やっばいわ!
 オレ娘ができたら一生嫁になんかやんねえっ! 


「あはは! トーゴくんてば、なかなかのやり手なんだね!」


 面白そうに笑うのはメイムだ。


「くっ、これが異世界人補正だとでも言うのか!」


 おいネコミミ、何だその厨二的発想は?
 てか補正なんて概念(がいねん)よく知ってたな!
 悔しそうな表情で睨んでくるカイバをよそに、クィルは何故かふくれっ面になっている。


「ど、どうしたんだクィル?」
「何でもありませんです!」


 そうしてプイッと顔を背ける。
 ん? 何か怒らせるようなことしたかオレ? 


「クィル様」


 その場にいた者以外の声が聞こえた。
 声が届いてきた方向を見ると、そこにはポニーテール団長ことミラニがいた。
 
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