久遠の神話
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第四十二話 表と裏その三
「無論あの巨体です。ただ力を放ってもです」
「簡単には倒れないですね」
「そうなるでしょう。しかし」
だがそれでもだというのだ。
「何度も。風、鎌ィ足を放てば」
「鋭い刃で斬るってことですね」
「斬り続けます。そうすれば」
「倒せますか」
「このままでは埒があきません」
海の中から急上昇と急降下を繰り返しす相手には中々攻撃を加えられないというのだ。鯨はその動きで己も守っているのだ。
それでだ。大石は上城に提案したのだ。
「ですからまずは」
「動きを止めて」
「それからです」
攻めるというのだ。
「そうしましょう」
「そうですね。確かにこのままだと」
「怪物を倒せません」
「ええ、ですから」
「ではまずは」
二人で海、怪物のいるそこを観ながら話す。
「鯨が出て来るその時に」
「海を凍らせて」
「そこから私が攻めます」
風、彼の力でだというのだ。
「それで勝ちましょう」
「そうですね。それにしても」
「それにしてもとは」
「この怪物はペルセウスが石にして倒してますよね」
「はい、神話では」
確かにそうしたとだ。大石はこのことをまた話す。
「そうしています」
「そうしないと倒せない相手だったんですね」
「伊達に星座にはなっていないということですね」
ここでこう言う大石だった。
「やはり」
「鯨座にですか」
「それだけ人々に印象を与えた怪物だったのです」
印象のないものなぞ星座にはならないということだ。古代ギリシア人もその彼等が信仰する神々もである。
「そしてその怪物を今からです」
「僕達が倒すんですね」
「わかりますね。来ますよ」
「はい」
海の下に見えていた。怪物のその動きが。
今まさに海面から飛び出ようとしている。姿を現すまで僅かだ。それを見てだ。
上城はその剣を構えた。そのうえで。
大きく上段に振り被ってから振り下ろした。そうしてだった。
剣から氷の柱を出した。氷の柱は上から下に一直線に落ちた。
そして海面、鯨が今まさに上半身を出したそこを凍らせその動きを止めた。そしてだった。
大石もそれに動きを合わせてだ。彼の剣を一閃させた。
そこから無数の鎌ィ足を出し怪物を襲う。その無数の刃で。
鯨を切り裂く。だが、だった。
「致命傷ではないですね」
「何か。皮が厚いですね」
「鯨の皮は元々かなり厚いです」
それで自分自身を鮫や鯨から守っているのだ。
「ですがこの怪物は」
「普通の鯨以上にですか」
「私の予想以上に」
こうも言う大石だった。
「厚いですね」
「そうですか。それじゃあどうします?」
「はい、ここはです」
すぐにだ。大石は閃いた。そして言うのだった。
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