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戦国異伝

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第百二十一話 四人の想いその十三

「それはな」
「左様ですか」
「家臣達が食う為にはやはり土地や銭が必要だ」
「その為のものですか」
「領地や銭はな」
 己には必要なものだけあればいいというのだ、幸村はそうしたことにはあくまで無関心であり頓着することがない。
 それでさらに言うのだった。
「今のままで十分だ」
「百万石は」
「過ぎたも何もわしは大名になるつもりもない」
「では官位や役職も」
「いらぬ」 
 そうしたものもだというのだ。
「特にな」
「やはり求められるのはお心ですか」
「それ以外はない」
「そうした方だからこそです」
「多くの大きなことを為すか」
「そして天下にその名を残すでしょう」
「そうか、ではわしはこのまま進めばいいのだな」
 幸村の顔が笑みになった、そして利休に述べた。
「有り難いことだ」
「私はこれまで多くの方を見てきました」
 信長もまた然りだ。
「真田殿はその中でもかなりの方です」
「そこまで言われると恥ずかしいな」
「これは失言だったでしょうか」
「わしは褒められすぎるとな」
 弱いというのだ。
「どうも駄目だ」
「では以後控えます」
「そうしてくれると有り難い。そして利休殿はこれからも」
「はい、茶の道を進みます」 
 彼は彼でそうするというのだ。
「必ず」
「その果てまでか」
「果てはないです」
「ないか」
「そうした道ではありませぬ故」
「そうか、ではその生涯に渡って」
「茶の道を進みます」
 極めてもまだそこからがある、言うならば解脱の様なものでありだからこそ果てがないというのだ。利休の言うことは深かった。
「それが私の天下です」
「そうでござるか」
「信長様の天下とはまた違います」
 しかしそれもまた天下だというのだ。
「そう考えています」
「ではそれがしは武士の道を歩み」
「私は茶の道を進みます」
「共にそうしていきますな」
「そうですね。では」
「うむ、また機会があればお会いしましょうぞ」
 幸村は利休に深々と頭を下げた、そのうえで十勇士達の下に戻った。そのうえで彼は晴れやかな笑顔で言った。
「わしは素晴らしき友達を持った」
「おお、そうなのですか」
「殿にですか」
「うむ、御主達がいてじゃ」
 そしてだというのだ。
「また新たな友達を得た」
「我等も友ですか、殿の」
「それは」
「御主達はわしの家臣であり友じゃ」
 まさにそうだというのだ。
「それ以外の何でもないわ」
「殿、幾ら何でもそのお言葉は」
「あまりにも」
 十勇士達は自分達を友人と言った幸村に申し訳ない顔でそれぞれ言った、見れば十人共その顔になっている。 
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