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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──

作者:なべさん
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ALO
~妖精郷と魔法の歌劇~
  ネタばらし

そんなこんなで歩いていると、やがて前方に小ぢんまりとした酒屋兼宿屋が見えてきた。

デザート類が充実しているのでリーファが贔屓にしている《すずらん亭》という店だ。

スイングドアを押し開けて店内を見渡すと、プレイヤーの客は一組もいなかった。まだリアル時間では夕方になったばかりなので、冒険を終えて一杯やろうという人間が増えるにはしばらく時間がかかる。

奥まった窓際の席にキリト達と向き合って腰掛ける。

ちなみに、レンの使い魔であるという黒狼は、その大きすぎる巨体のせいで店の外で大人しくお座りして待っている。それでも怖いものは怖いのだが。

「さ、ここはあたしが持つから何でも自由に頼んでね」

「じゃあお言葉に甘えて………」

「あっりがと~」

「ありがとうございます」

「あ、でも今あんまり食べるとログアウトしてから辛いわよ」

メニューの魅力的なデザート類を睨みながらリーファもしばし唸る。

実に不思議なことなのだが、アルヴヘイムで食事をすると仮想の満腹感が発生し、それは現実に戻ってからもしばらく消えることはない。

カロリーの心配なしに甘い物が好き放題食べられるというのは、リーファにとってはVRMMO最大の魅力の一つなのだが、それで現実世界での食欲がなくなると母親にこっ酷く怒られてしまうのだ。

実際、このシステムをダイエットに利用したプレイヤーが栄養失調に陥ったり、あるいは生活の全てをゲームに捧げた一人暮らしのヘビープレイヤーが食事を忘れて衰弱死したりというニュースはいまやあまり珍しくない。

結局リーファはフルーツババロア、キリトは木の実のタルト、少々驚いたがユイはチーズクッキー、カグラはボリューミーなアップルパイ、レンに至ってはこの店の開店以来、完食されたことのないとまで言われる超巨大なスーパーデラックスミラクルジャンボデラックスゴールデンパフェをオーダーし、飲み物は香草ワインのボトルを二本取ることにした。

テーブルにでかでかと乗るパフェを見る客達のざわめきが耳に痛い。

NPCのウェイトレスが即座に注文の品々をテーブルに並べる。

「それじゃあ、改めて助けてくれてありがと」

リーファが言ったその言葉とともに、カチンとグラスを打ち鳴らした。










「じゃ、じゃあ午後三時にここでね。あたし、もう落ちなきゃいけないから、あの、ログアウトには上の宿屋を使ってね。じゃあ、また明日ね!」

レンとカグラは、眼前で行われている会話をそれぞれ獲得した獲物を、はむはむもぐもぐ食べながらほけーっと見ていた。

「………レン。そのパフェ、少し頂けないでしょうか」

「ヤだよ。これ僕んだもん」

「……………ケチ」

「ケチって言ったでしょ、今?」

否、見てすらいなかった。二人してスーパー以下略パフェを争って、熾烈かつ超絶にどうでもいい言い争いを繰り広げている。

その間にも、どうやら世界樹までのガイド役となった様子のリーファは左手を振ってウインドウを出した。

シルフ領内ではどこでも即時ログアウトが可能なので、そのままボタンに触れる。

「あ、待って」

黒衣の少年の声に顔を上げると、キリトはにこりと笑いながら言った。

「───ありがとう」

キリトのその言葉に、リーファははにかんだような笑みを浮かべた。

レンとカグラは、いらついてきて殺気だったような笑みを浮かべた。

リーファはこくりと頷くと、指を動かしてOKボタンを押す。

途端にリーファの体を虹色の光が包んで、徐々にその姿を滲ませて消えていった。

なんとなく消え行くその姿に手を振る一同。

シルフの少女がつい今しがた座っていたその椅子を、キリトがやや呆気に取られながら見ていた。

「───どうしたんだろう彼女」

訊いてきたキリトの顔を一瞥して、レンとカグラは顔を見合わせて嘆息した。アイコンタクトで言葉を交わす。

───鈍いねー。

───鈍いですね。

キリトの肩の上で、親譲りの鈍さを発揮するユイも首を傾げた。

「さあ………。今の私にはメンタルモニター機能がありませんから………」

「ううむ。まあ、道案内してくれるって言うのはありがたいな」

「マップなら私もわかりますけど、確かに戦力は多いほうがいいですね。でも………」

手の平サイズのピクシーが静かに立ち上がって、キリトの耳に顔を寄せて言った。

「浮気しちゃダメですよパパ」

「しない、しないよ!!」

泡を食ってぶんぶん首振るキリトの肩から飛び立つと、ユイは再びテーブルの上に着地して食べかけのチーズクッキーを両手で抱え上げた。

「くそう、からかいやがって………」

愚痴りながら、キリトは憮然とした表情でハーブワインのボトルを直接呷る。

そして───

「んで、何でお前らがここにいるんだ?レン、カグラ」

言った。










ずるずるとハーブワインをストローで吸いながら、レンは打って変わって冷めたような眼でキリトを見た。ゾクッ、とキリトの背筋を訳のわからない悪寒が這いずった。

レンはただ見ているだけだ。

笑っているわけでもなく、嗤っているわけでもなく、嘲笑っているわけでもない。

ただ、見ている。

静かにキリトを見ている。

言うなれば、モノを見定めるような二つの眼。

ただそれだけのことで、キリトは途端に動けなくなった。脚のつま先から、人差し指の先端までピクリとも動かせなかった。この世界で初めて会った時と同じだ。まるで蛇に睨まれたカエルのごとく、動かない。

マフラーを解いたその口元がゆっくり開き、《普通》の言葉を紡ぐ。

「その理由を……キリトにーちゃんはもう知ってるんでしょ」

「……………マイ………ちゃん、なのか?やっぱり…………」

漆黒のその瞳に、形容しがたい光を浮かべながらキリトが身を乗り出す。

その声に、レンは答えない。ただ黙って、ワインを啜っている。

先ほどのリーファがいた頃に纏っていた空気とは、全く質も量も違う。ただ黙っているだけで呑まれそうな雰囲気。

異様と言えば、隣に座っていたカグラもだった。

この騒ぎを受けてもほぼ完璧な沈黙を保って、ワインカップを傾けている。

半開きになった微かに青みがかった両の瞳からは、何の感情も読み取れない。

だが、キリトはその空気だけで肯定だと言う事だけは十分にわかった。

「………じゃあ、やっぱり……」

そこでやっとレンが口を開いた。

「…………キリトにーちゃんがさっきから僕に訊きたいのは、アスナねーちゃんのこと?」

「知ってるのか!!?」

弾かれたようにキリトが顔を上げる。

その顔を眺めながら、レンは肯定とも否定とも言わなかった。ただ黙ってカップを傾けている。

その胸倉を、キリトは思わず掴んでいた。

「知っているのかって……訊いてんだ…………!」

レンはそこまでされても、ただ黙っていた。相変わらず、何かモノを見定めるような眼でじっと間近にあるキリトの顔を見つめている。

やがてその手を横合いから払いのけた手があった。カグラだった。

その眼に一瞬、どこか悲痛そうな光が浮かんだが、キリトが再度見る前にその光は綺麗さっぱり消え去っていた。

「やめてください」

そこそこ広い店内だが、女性では珍しい低音のその声は隅々まで響き渡った。そして、その声はキリトの握力を緩めるに足るオーラを放っていた。

「……………………………………」

黙って手を緩めるキリトを尻目に、レンは何事もなかったかのように席に着く。

それを見ながら、カグラはゆっくりと一つ頷いた。

「話せと言うならば、私達は話しましょう。私達の知っていることの全てを。しかし、それを聞いてどう行動するかはあなた次第です」

どういうことだ、とキリトは訊こうと口を開きかけたが、それよりも早くカグラは日本刀を思わせるような鋭い顔で、ゆっくりと、しかし不思議に脳に染み渡るような声で話し始めた。 
 

 
後書き
なべさん「始まりました!そーどあーとがき☆おんらいん!!」
レン「やっと僕が活躍し出したね!」
なべさん「そうかぁ?ただ単に大食いってアピールしてるだけだと思ったんだが」
レン「それを言うな。て言うかそれを書いたのはお前だろう」
なべさん「えーなんのことかな~(棒)」
レン「……………………」
ブヂッとな☆
なべさん「え、あれ?ちょっと待ってクダサイ。これはあれですか?久し振りの…………」
レン「うん、あれだね」
~少々お待ちください~
なべさん「反応はない。ただの屍のようだ」
レン「はい、自作キャラ、感想を送ってきてくださいね~♪」
──To be continued── 
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