トーゴの異世界無双
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第七話 初めての異世界人が王族って……
「ところで、クロはこんなとこで何してんだ?」
「え? あ……その……」
バツが悪そうに顔を伏せる。
その様子から察知して、これはテンプレ的な展開じゃないか?
闘悟はそう思い、思ったことを口にすることにした。
「ん~と、クロって貴族?」
その時、軽く彼女の肩に動きが見られた。
「……もしかして、王族?」
今度は大きく体が動く。
あわあわと動揺する。
マジか……ていうか王族が何でこんなところで一人なんだ?
「……も、申し訳ありませんです」
「な、何が?」
クロはフードを取って顔をハッキリ見せる。
青く綺麗な髪の毛が現れる。
見たところ十四歳くらい。
目がパッチリしていて、とても愛嬌(あいきょう)のある顔立ちだ。
それと、どことなく気品を感じさせる。
さすがは王族かな?
「じ、実は私の本当の名前はクィルネス・フィル・グレイハーツなのです」
「……はあ」
「そ、それだけですか?」
「え? それだけって?」
何? 何か驚く要素あった?
王族なら名前を偽っても仕方無いと思うんだが。
「わ、私の名前聞き覚えはありませんですか?」
「……無いけど」
「もしかして、トーゴ様は他の大陸からいらしたのですか?」
「いんや、異世界だ」
「……はい?」
「いや、だから異世界だよ異世界」
「……いせかい?」
クィルネスは闘悟の言っている意味が理解できず目をパチパチさせている。
「そ、こことは違う世界。今さっき来たばっかだ」
「……よく分かりませんです」
何故か泣きそうになるクィルネスを見て焦る。
「あ、いやいや、分からないなら別にいいって! と、とにかく、とっても遠い所から来たって思ってくれ!」
「理解力が乏(とぼ)しくて不甲斐無いですぅ……」
いや~それが多分普通の反応だと思うんだけどな。
オレだったら異世界人なんて言う奴と会ったら、凄まじい勢いでポリスマンを呼んでるだろうしな。
「ははは、それで? クィルネスの口ぶりだと、この大陸ではグレイハーツという国があって、そこの王族がクィルネスってっわけか?」
「クィルでいいです。あ、それとやはりご存じなのですね?」
「いんや、初めて知ったぞ」
「え? ですが、ピッタリ言い当てられましたのですが……」
「まあ、そうじゃないかと思っただけだ」
小説とかでは、こんな展開が多いからな。
「はあ……そうなのですか?」
可愛く首を傾げてくる。
まるで小動物を相手にしているようだ。
撫でてみたくなるじゃないか!
そう思っていると、クィルの顔が真っ赤だ。
湯気(ゆげ)が出てもおかしくないほどの赤面状態だ。
どうしたんだろうと思っていると、気がついた。
オレが頭を撫でていたからみたいだな。
「ぁ……あう……」
恥ずかしそうに目を細める。
いや~思っただけのつもりだったが、無意識に手を伸ばしていたとは、恐るべしクィルの小動物オーラ!
「わ、悪い!」
というかいきなり女の子の頭を触るのは駄目だよな。
もしかして、怒らせてしまったかと不安になる。
「ご、ごめんな」
闘悟が手を離すと、何故か少し物足りなさそうな表情が見えたが、気のせいかもしれない。
未だに真っ赤な顔をしている彼女に聞く。
「と、ところで、その王族がどうしてこんなトコに?」
この空気を変えるために話題を振る。
「え……あ、そうですね。そのお話でした」
どうやら彼女も正気に戻ったようだ。
「じ、実はですね……」
クィルが言うには、宮殿で世話をしている生物が、最近元気が無いらしい。
どうやら、何かの病気にかかっているらしく、診断してもらったところ、治すにはこの森にある『フワの実』という木の実が必要とのこと。
そして、話をよく聞いてみると、その『フワの実』は先程闘悟が食べようかどうか迷っていたあの木の実である。
いや~都合のいい話だ。
そのことをクィルに教えると、嬉しそうに場所を聞いてきた。
闘悟は木の実のあった所まで彼女を案内する。
そして、幾つか採って彼女に渡してやった。
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