トーゴの異世界無双
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第五話 寝てる時に奪われました
どう考えても、その中にオレが関わる理由が分からない。
「実はの、地球とある世界が、破壊される寸前だったのじゃよ」
「ふうん、破壊ねぇ……って大事じゃねえかそれぇっ!?」
何をあっけらかんとカミングアウトしてやがる!
「まあ聞け。そこで、破壊を免れるためには、膨大な魔力が必要になるのじゃ」
「ま、まりょく? あ、あのさ、まりょくって、あれか? 魔法使いの力の……あれか?」
「その魔力じゃ」
「……ますます分からねえ。オレは魔法使いでも何でもない普通の高校生だぞ」
歳は十六歳。
黒髪黒目で、身長百七十二センチ、体重五十四キロの平凡な体。
決してイケメンではないが、不細工でもない、額の黒子がチャーミングな至って普通の男の子だ。
「そりゃそうじゃろ。地球では魔力は必要ないからの。体内に封じられとるだけじゃ」
「……マジか?」
「マジじゃ。然(しか)るべき世界に行けば、主の力は覚醒するじゃろうの」
な、何だその厨二病的な展開は……?
残念ながらアニメや漫画は好きだが、病を持つところまで進んだ記憶は無いぞ?
「お主の持つ魔力は膨大じゃ。たった一人で世界崩壊を防げるほどのものじゃ」
トビラは闘悟を探し出して、その然るべき世界へ飛ばした。
そして、本人は気づいていないが、封印されていた魔力が徐々に開放されつつあったところ、トビラにこの狭間(はざま)という所に連れて来られたわけだ。
「どうじゃ? 体が怠(だる)くはないか?」
「そ、そういや、ちょっと気怠(けだる)いかな? ほんのちょっとだけど」
「やれやれ、世界崩壊を防ぐほどの魔力を頂いた後だというのに、ちょっと気怠い程度とは……この規格外め」
「そんな人外を呼ぶような感じで言わないでくれるかな!」
まったく、オレはれっきとした人間だぞ。
「あれ? もう世界は大丈夫なのか?」
「うむ、お主が寝ている間に魔力を頂き、世界のバランスを保った。もう崩壊は起こらん」
それは良かった。
未練なんてない地球だけど、破壊したらやっぱ困るからな。
ていうか、勝手に魔力を頂くなっての。
「それでじゃ、本題はこれからじゃ」
「……だろうね」
「ん?」
「だって、言ってただろ? あの少女を助けたいかって」
「……」
「つうことは、オレに助けられるチャンスがあるってことだろ?」
「ふむ、思ってた以上に頭も回るようじゃな」
「ま、賢くなけりゃ、今のオレはないからな」
闘悟は昔を思い出すように遠い目をした。
「……そうか。なら話は早い。闘悟よ、お主、異世界に住む気はあるか?」
「あるぞ」
「はやっ!!!」
トビラは驚愕の声を上げた。
「早くないか? 少しは考えたらどうなんじゃ?」
「いんや、考えるまでもねえよ。地球は助かったんだろ?」
「ん? う、うむ」
「だったらもう未練はねえよ」
「闘悟……」
「オレのこと、どこまで知ってるか分かんねえけど、あの世界には、オレの居場所はねえよ……もうな」
闘悟は寂しそうに言葉を放つ。
「なら、新しい世界で居場所を作ってみよ」
「……トビラ……」
闘悟は驚いたように目を見開く。
「お主なら……あの世界ならできるはずじゃ」
「…………おうよ」
「うむ。それと、餞別(せんべつ)じゃ。お主の能力を教授(きょうじゅ)してやろう」
「おお……まさに厨二的展開だな」
だけど、闘悟は胸のワクワクが止まらなかった。
自分に力が本当に隠されているなら知りたい。
あの世界で自分に何ができるか知りたい。
「では知識を流すぞ」
その時頭の中に情報が流れ込んできた。
時間にして数秒。
「……行けるかの?」
闘悟はゆっくりと、自信にあふれた表情で言い放つ。
「ドンと来い!」
眩い光が闘悟を包む。
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