戦国異伝
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第百二十一話 四人の想いその八
「そのうえて傾いておるな」
「まあ腐った奴は好きではない」
そうした者はというのだ。
「曲がったことはせぬ」
「そうしたことが茶にも出ておるわ」
「左様か」
「実によき茶じゃ。それでじゃが」
「うむ、今度は何だ」
「御主は酒も飲むな」
今度は酒の話だった。
「それも飲むな」
「確かに飲むぞ」
「では今度は酒も飲みたいな」
慶次と共にだというのだ。
「機会があれば」
「そうじゃな。ではその時はいい肴を用意しておこう」
「肴か」
「肴は何が好きじゃ」
「塩か梅じゃ」
そうしたものと共に飲んでいるというのd。
「上杉、越後では酒はそういったもので飲んでおる」
「確か謙信殿の好みじゃな」
「実際にそれで飲むと美味い」
「ふむ、そうか」
「織田家ではそうした飲み方はせぬか」
「酒は飲む」
まずはこう返す慶次だった。
「肴は色々じゃな」
「塩や梅はないか」
「梅はあるがな」
それはあるというのだ。
「しかし塩はあまりないのう」
「そうなのか」
「干し魚に漬けものじゃな。ただ謙信殿は随分と酒を好まれておるが」
慶次の話が変わった、その話はというと。
「我が家の殿は酒は飲まれぬ」
「全くと聞いておる」
「左様、酒は全く駄目じゃ」
実際にそうだというのだ。
「茶はお好きじゃがな」
「そうじゃな。織田殿ともお会いしたいが」
そして飲みたいというのだ。だがそれはだった。
「酒は諦めるか」
「飲まれぬからな」
それではどうしようもなかった。
「甘いものはお好きじゃがな」
「ふむ、甘党か」
幸村が横で聞いて言う。
「わしも甘いものは嫌いではないがな」
「しかし御主は酒も好きだな」
「うむ、そうじゃ」
「それは人それぞれじゃ。まあとにかく今は茶じゃ」
言いながら自分も飲む慶次だった、そしてだった。
自分のその茶についてこう言うのだった。
「「わしもこの茶は美味いと想う」
「自分の茶が美味いっていうんだね」
「自画自賛になるか」
「そうは思わないね」
笑ってこう返す阿国だった。
「それはいいことだよ」
「自分で入れてそれで美味いというのはじゃな」
「ああ、いいことよ
「人にもてなし自分も楽しめるからか」
「そうだよ。しかしあんたの傾きはいいね」
阿国は艶やかな顔で慶次に言った。
「筋が通っていてね」
「惚れたか」
「あんたって人にね。とはいっても女としてじゃないよ」
阿国は女だがそれでもそうではないというのだ。
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