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【完結】剣製の魔法少女戦記

作者:炎の剣製
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第四章 空白期編
  第八十九話    『オルタ降臨。翠屋恐怖の日』

 
前書き
アルトリアのくせっ毛(アホ毛)を触ってしまいます。 

 
ある日の休日、なのはは管理局のお仕事もないので少し時間を持て余していた。
そしてふと中庭の縁側でアルトリアがお茶を飲みながらゆっくりしている光景を目にした。
それを見てなのはは平和だなーと思いながらも、ふと気になっていた事を試してみたくなった。
それとは…。






シホはようやく最近落ち着いてきた。
すずかとの件もほとほりが冷めてきたのか正常にまで戻ってきているし、管理局の仕事も軌道に乗り始めたので遅れをとることはない。

「奏者よ。こんなところにいたか」
「あ、ネロ。どうしたの?」
「いや、なに。今日は久しぶりの休日だからな。翠屋で食事でもしようかと思った次第だ」
「そっか。それじゃ私も手伝いに行こうかな?」
「奏者の給仕姿か…、それだけで余は楽しみだぞ」
「ははは…、その変わりネロも働いてね?」
「うむ。余の皇帝特権にかかればお仕事も楽に会得できるだろう。黄金律も持っているから役に立てるだろう」
「それじゃアルトリアとなのは、オリヴィエ陛下も連れて翠屋にいきましょ―――…」


キィンッ! ドゴオオオオオンッ!!


「きゃあああああーーーーーッ!?」

突如としてすごい轟音(エクスカリバーの宝具開放音とも言う)となのはの叫び声が同時に聞こえてきてシホ達は「何事!?」と思いながらも悲鳴の聞こえた中庭の方へと向かった。
見ればなのはは茂みの中に頭から突っ込んでいた。
シホ達は急いでなのはを救出した。

「なのは!? いったいどうしたの! さっきの悲鳴は尋常じゃなかったわよ!?」
「ふぇー…目が回るよ~」
「しっかりしなさい!」
「う、ううん…あれ、シホちゃん? ネロさんにオリヴィエさん? どうしてここにいるの…?」
「なのはの悲鳴が聞こえてきたから急いで駆けつけたのよ」
「それでなのは。どうしたのですか? 敵襲ですか? 相手は誰ですか?」
「敵ならば余に任せておけ。見事撃退して見せようぞ!」
「あ、敵じゃないの…ただ、私はアルトリアさんのくせっ毛がつい気になっちゃって…」
「―――え?」

シホは瞬時に戦慄の表情をする。

「う、そ…まさか…そんな。そんな事って…!」
「どうしたのだ奏者よ!?」
「シホ、どうしました!? すごい汗ですよ!?」
「シホちゃん、どうしたの…!?」

シホはしばし言葉を失い、次に言い放った言葉は、

「魔王の降臨だわ…」
『魔王…?』

全員がシホの言った言葉を理解できず首を傾げる。
しかしそれはすぐにやってきた。

ガシャンッ!

なにか、重い鎧のような物を着た人が歩いてくるようなそんな足音。
シホは泣きそうになりながら、

「オルタナティブが降臨してしまった…!」

泣きそうな表情でそれを見る。
そこには黒く染まった鎧を着用した反転したアルトリアの姿があった。
当然くせっ毛はなくなっている。
でもそれを見てネロがいち早く反応し、

「セイバー!? バカな! 彼奴は余が倒したはず!?」
「…なにを言っている? それよりシホ、食事にしようか」
「は、はい。我らが王様!」

シホは泣きそうになりながらも「ははぁー…」とアルトリアに頭を垂れる。

「シホちゃん…? なんで、そんなに低姿勢なの…?」
「なのは達は感じないの!? あの空間が歪むようなアルトリアの殺気と威圧感に!
そしてアルトリアは今や逆鱗を触られて反転してしまった…!」
「逆鱗とは…?」
「アルトリアのくせっ毛よ…。あれを掴むとアルトリアは性格が反転してオルタナティブに変身してしまうのよ」
「な、なんと…そのような事が!」
「なのは、もしかして触ってしまったのですか…?」
「う、うん…つい気になっちゃって…」
「そうだ、シホ。翠屋にでもいくとしようか。ぜひ味を見てみたい!」
「だ、ダメです、王様! あなたのような人が行く場所ではありません! だから今回はこの場だけで納めてください!」
「王の決定を覆すというのか? シホ、お前はそこまで私に逆らうのか…?」

そしてアルトリアの殺気が瞬時に倍増した。
シホはそれに恐怖しながらも、

「そんな滅相もございません。ですができれば…!」
「聞かん! 翠屋にいくぞ。…っと、そうだな。服を変えるとしようか」

アルトリアはなにを思ったのかその姿を光らせて次には黒いゴシック系の服装へと変わっていた。
いつその服装を手に入れたという突っ込みは無しで。

「さて、ではまいろうか。私が翠屋の味を審判してやろう」
「は、はい…わかりました。我らが王様…。―――翠屋が潰されるぅ…!?」

シホは翠屋の未来を案じ悲観する。

「シホちゃん、翠屋が潰されるって、いったい…?」
「もう取り返しはつかないわよ。今、アルトリアの味覚は激しく変わっている。そして後に残るのは死屍累々だけよ…。
なのは…アルトリアのくせっ毛を触ったことを今のうちに後悔しておきなさい…」

もうシホの表情には悲壮感しかない。
この先、なにが起こるのかなのは、オリヴィエ、ネロは恐怖を抱いた。


◆◇―――――――――◇◆


そして到着した。到着してしまった翠屋。
アルトリアは乱暴に扉を開き、

「あら? アルトリア、さん…?」
「モモコ、手早く言うぞ。ここの最高級の品を出せ」
「はい…?」
「士郎お父さん! 桃子お母さん! 美由希姉さん! 恭也兄さん! ちょっと裏まで来て! なのは達はアルトリアのご機嫌を取っていて!」

シホはすぐさま指示を出して桃子達を裏の方へと連れて行く。

「シホちゃん、アルトリアさんはどうしたんだ? いつもと様子が違うようだが…」
「はい。なのはがアルトリアの逆鱗を触ってしまったんです」
「逆鱗…?」
「はい。くせっ毛を。あれはアルトリアの逆鱗で掴むと性格が反転して味覚まで変わってしまうんです」
「そんな事があるの? シホちゃん…」
「はい。そして味覚が反転してアルトリアは“雑”だと評価するファーストフードを主食に食べてしまうんです。
過去、私が作った料理は尽くまずいで潰されました…」

それを思い出しているのかシホの目に涙が浮かぶ。
こんな事に悔し涙を流すシホというのも珍しいが、それ以上に桃子は料理魂を燃え上がらせた。

「…シホちゃん。ようはアルトリアさんはファーストフード以外の料理をまずいで済ませちゃうのよね?」
「はい。残念ながら…」

もうシホは半場泣き出していた。
過去、アルトリアとのご飯ライフがそれによって覆されたのだからたまったものではない事態である。

「燃えてきたわ! シホちゃん、あなたの仇は私が取るわ!」
「ダメです! 桃子お母さん! 今のアルトリアは食欲の化身…太刀打ちできる相手ではありません!」
「でもファーストフードにかまけて負けを認めるなんて私のプライドが許さない! 絶対にアルトリアさんにうまいと言わせてみせるわ! パティシエールの意地にかけて!」

そうして桃子は調理を開始した。
それをシホは悲しそうに見守った。
そんなシホの肩に恭也が手を置き、

「今は母さんを信じよう。アルトリアさんもそこまで鬼じゃないさ」
「…過去、暗黒面になって高級中華料理店に行ったことがあるんです。
そこですべての料理を食べ尽くして最後に言い放った言葉は『ふっ、この程度か? まずくてならない』だったんです…。
そして店主は料理人のプライドをズタズタにされて店は数日して潰れました…。
約束の四日間のことだから良かったものの本当のことだったら恐ろしいです…」

それに士郎、恭也、美由希の顔は引き攣る。
シホはトラウマになっていて体を震わせている。
今の今までこんな弱気でネガティブなシホの姿を見たことがなかった士郎達はこれは強敵かもしれないと…戦慄した。

シホはせめてもの助けとして接客でアルトリアに料理を運ぶ役を担っていた。

「まずはこれよ。具沢山のパスタの盛り合わせ! シホちゃん、お願い!」
「わかりました!」

そしてアルトリアへと運んでいき、

「アルトリア。これを…」
「これがここの最高級か…?」
「まだよ。この先楽しんでもらうんだから」
「そうか。ならば許そう。ではいただくとしよう」

そしてアルトリアはもっきゅもっきゅと料理を豪快に平らげていく。
そしてすぐに料理はなくなり、ただ一言。

「マズイ」
「グハッ…!?」
「ああっ…!?」

その強烈なボディに響くが如くな言葉にシホと桃子の二人の叫び声が翠屋に響いた。
それを席に座って聞いていたなのははとんでもない事をしてしまったのだと今更に後悔をする。

「こんなもので私が満足するとでも本気で思っているのか? さぁ早く次を持って来い」
「か、かしこまりました…我らが王様…」

それでシホは食器を下げてすごすごと引き下がっていった。
そして厨房にまで戻ってくると、

「桃子お母さん、ダメです。今のアルトリアには太刀打ちできません…」
「弱音を吐いちゃダメよ、シホちゃん! まだだわ。まだ私達は終わらないわ!」

桃子は心を奮起させてアルトリアへと挑んでいく気になった。
そして今度はジャンボオムライスを作った。
それをアルトリアへと運ぶシホ。

「今度はどうですか? 王様…」

シホは引き攣る顔をどうにか正してアルトリアに問いかける。
そしてすぐさまアルトリアは平らげると、

「ダメだな、マズイ」
「ぐぅっ!?」

またしてもアルトリアはマズイを言い放った。
それによって精神的ダメージを負うシホ。
しかし桃子は負けない! とさらにビックハンバーグを作り出した。
それを軽く消化して、

「ダメだな」
「うっ、うう…!」
「母さん!?」
「無茶しちゃダメだよ、お母さん!」

恭也と美由希がどうにか慰めているが桃子の限界は近いのだろう。
でもしかし桃子はめげなかった。

「マキシマムカツ丼! お願い!」
「はい!」

そして結果は、

「ダメだな」
「ああぁ…心が折れそうだわ…」
「桃子…もう無理するな!」
「いいえ、あなた。まだよ…まだこれからだわ!」

桃子は泣きそうになる心をなんとか立ち直らせて、

「ビックステーキ!」
「次!」
「ビックラーメン!」
「甘い!」
「私の本気! 翠屋自慢の海鮮盛り合わせ!」
「ぬるい…!」


………………
……………
…………


それから桃子の挑戦は続いていったがとうとう桃子は心の限界を大幅に越えてしまって、

「…シホちゃん、みんな…後は、よろしくね…?」

そう言ってプライドを砕かれた桃子は倒れて気絶してしまった。
それでどうしたものかという会議に陥る。

「ここは士郎やはやて、鮫島さん、ノエルさん、ファリンさんも呼んで総動員で桃子お母さんの仇を取るべきだと…!」
「しかし、桃子の腕で敵わなかったアルトリアさんにどう立ち向かえばいいのだろうか…?」

全員はそれで押し黙る。
高町桃子の腕は上で出した全員が認めるほどのパティシエの腕だ。
だから太刀打ちできるものではない。
そも、たとえ全員を呼んだとしても桃子の二の前になるのは明らかである。
料理魂を砕かれてジ・エンドの未来を辿るだろう。

「…もうおしまいか?」

しかしそもそもアルトリアは待ってくれない。
もう出す手がない。
どうすればいいかと思ったその時に、

「ふむ、ミユキ。そなたが作ってみろ。私が審美してやろう」
「わ、私…!?」

突然のご指名に美由希は焦る。
私は料理は下手だから食わせられたものじゃないという気持ちである。

「モモコの娘なのだから腕は引き継がれているだろう。ならばいざ食してみたい」
「ううぅ…アルトリアさんがそこまで言うんだったら…」

それで美由希は今私が作れるありったけのものをサンドイッチに詰めた。
それを見た恭也が、

「美由希…それは、食べ物か?」
「そうだよ恭ちゃん! 私が料理が下手なのは知っているでしょ!? これでも一生懸命作ったんだからね!?」

それでシホの手で運ばれるがシホもさすがにこれはアルトリアには通じないだろうと内心諦めているほどだった。
そしてアルトリアはそれを目の前にして、

「ほう…食べごたえのありそうなものだ。どれ、食してやろう…」

アルトリアはそれを一口口に含む。
その瞬間、

(ぐあぁーーーーーッッ!!?)

アルトリアは内心で強烈な叫びを上げた。
アッパーブローを食らったかのように舌と胃を多大に揺さぶられ悲鳴が轟く。

(な、なんという味の破壊力…! たった一口で、この、私が…!?)

それでアルトリアは黙り込んだ。
それを見て不思議に思ったシホは、

「アルトリア…? どうしたの?」
「…見事だ」
「へ…?」
「私の舌をここまで驚嘆させたのはミユキ、そなたが初めてだ。誇って、いいぞ…?」

ガシャンッ!

そう言い残してアルトリアはテーブルに突っ伏して気絶をした。
見ればアルトリアのくせっ毛が戻ってきている。
それで状況を見守っていた一同は他のお客さんも含めて、

「やったー!」

と、歓喜の叫びを上げた。

「お姉ちゃん! やったね! アルトリアさんを倒したよ!」
「ああ、美由希! お前の料理は翠屋を救ったんだ!」
「よく桃子の仇をとってくれた!」

なのは、恭也、士郎が美由希を絶賛する。

「なにがアルトリアを屈服させたのかしら…?」
「ふむ、その原因はこのサンドイッチにあると見た。どれ一つ食してみるとしよう」

ネロがそのサンドイッチに手を伸ばして口にする。
途端、

「うっ!? こ、これは、正直に言ってあまり美しくないものだな…」
「や、やっぱり不味かったってことかな…?」

美由希はそれで喜んでいいのか悲しんでいいのか分からず落ち込む。






…その後、気絶した桃子が復活して美由希に感謝の言葉を述べていたり、アルトリアが復活して暗黒化した記憶がなくなぜか「胃が痛い…」と言っていたりしていたが今回はそれで話は終わった。
それからはアルトリアの食べた分も取り戻すということで全員で接客を切り盛りした。
全員給仕服を着て接客をして特にネロが黄金律のスキルを発動させて客が次々とやってきて翠屋は嬉しい大黒字になった。

「楽しいな、奏者よ」
「そうね。ネロ」
「…すみません、シホ。ご迷惑をおかけしました」
「いいわよ、アルトリア。もう終わった事なんだから」
「はい…しかしやはり私の暗黒面はそうとう強烈なのですね。話では聞いていましたが…今後はくせっ毛を握られないように注意しましょう」
「私も反省するの…」

なのはが今日起きた事を反省して接客を頑張っている。
しかしふとなのははアルトリアとは別に揺れているくせっ毛を目にする。
それはネロのものでついついなのはは好奇心で手を伸ばそうとしてしまっていた。
それを見たシホは、

「なのは、よしなさい! 何が起きるかわからないわよ!?」

と、必死になのはを止めていた。
その後、ネロのくせっ毛は握られたのかは、分からない。


◆◇―――――――――◇◆


シホは士郎と会話をしていた。

「…ということがあったのよ」
「そ、そうか。アルトリアのくせっ毛をな」
「ええ。士郎ならこの苦しみを理解できるわよね?」
「…ああ、その気持ちは私にも分かるぞ。あれは恐怖と言っても過言ではないからな」
「そないうまい話があったんやね?」
「はやて。もしかして握ろうという魂胆じゃないでしょうね…?」
「い、嫌やわ。そないことあるわけないやんか…」
「そう…。ならいいけどね。はやてももし握った時には料理人のプライドを打ち砕かれると思いなさい」
「わかったわ…」

だが面白いネタを見つけたという感じではやては心にメモをするのだった。



 
 

 
後書き
AATMのひびチカネタを持ってきました。
そして最後のオチは美由希に取らせました。
さらにそれを聞いてほくそ笑む狸w
シホは反省を活かせずはやてに話してしまうのだった。

話は変わりますがネロのくせっ毛を握ったらCCCの嫁化すると思うのですがどうでしょう? 
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