魔法少女リリカルなのはGK《ガイキング》 ~炎の魔竜伝説~
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第6話 決意(前編)-それはある日の夕暮れに・・なの!-
前書き
なんかすごく長くなってしまった日常回
楽しんでいただければ・・・ではどうぞ。
太陽がこの世界に来てから数日が過ぎ、その間になのははジュエルシードの一つを封印し最初のモノと合わせて合計5つ・・・ばら撒かれた21のジュエルシードの1/4を集めたことになる。
そして、太陽も動けない期間をユーノのレクチャーの下、念話や同時に複数の思考を可能にする|並列思考などの魔導師の基礎の修得に費やしていた。
もっとも、太陽が完全に動けなかったのは1日だけで次の日の昼頃には若干の痛みがあるものの日常の動きに特に支障が無い為、高町夫妻の経営する喫茶店『翠屋』の手伝いとして夕方はウェイターなどをしていた。
ちなみに、人見知りしない太陽の明るい性格と『喋るペンダント』アルとのやり取りが漫才みたいだと好評で2日と経たない内に名物ウェイターとして売り上げに貢献していたという事は本人達は気づいていなかった。
そんなこんなでさらに数日が過ぎ・・日曜日。
太陽は朝から翠屋の手伝い、なのはとユーノはなのはの友達と士郎が監督する地元サッカーチーム(翠屋JFC)の観戦にでかけていた。
さらに今日は毎晩行っていたジュエルシード探索を休みにして休養日にすることにしていた・・・その理由は・・・
「なのはちゃん楽しんでるかな?」
〈ん~・お友達も一緒ですし・・・・っていうかそうじゃないと探査休みにした意味ないですしー〉
開店準備中の太陽の呟きにそう答えるアル。
「・・・・だな、なのはちゃんここ最近目に見えて疲れてたもんな~・・」
なのはは魔法の才能に優れているがそれはあくまで魔法に関してであって、身体・精神面では年相応・・・運動が苦手な分若干低め・・・なので毎日いつ出るか分からないジェルシードに警戒しながら探査をするのは身体や精神的に負荷が大きかった。
鍛えている太陽や発掘作業などの経験で力の抜き方を知っているユーノとは違い、なのはは常に全力なのだから当然だ。
それを考慮してユーノと話し合って息抜きをさせようというのが探査休みの目的である。
太陽は店のテーブルを拭きながら、ふとある事を思い出した。
「そういえば・・・アル、お前の故障直ったのか?・・俺も戦えればあの子の負担減ると思うんだけど・・どうなんだ?」
<あ~・・・それなんですけどね・・・もう少し時間掛けたいんですよ>
「?・・・また不具合が出たのか?」
<違いますよ、失敬ですねー・・・マスターの『炎』ですよ>
「・・・変質したってのは聞いてるけど・・・そんなに厄介なのか?」
少し不安になる太陽。
それをアルは否定する。
<いやそうじゃなくて、もったいないと思うんですよねー、この力・・〉
「?」
〈簡単に言うとこっちの方がマスター向きの力なんですよー〉
さらに首を傾げる太陽。
〈本来デバイスは『魔力』で起動しますけどマスターの場合その『魔力』に『赤い炎』が有るから上手くいかないんですが・・・出力は混ざってる方が高いんですよねー〉
「そうなのか?」
<はい、それに最初作ろうとしたシステムだとフィルターを通して魔力だけを濾し取る方法ですからどうしてもロスが出ます・・だったらいっそそのまま利用した方がより強力な戦力になると思ってそうしました。>
そこまで聞いて太陽は違和感を感じ、
「・・・なあ、それって今後の予定だよな?」
<は?>
「いや、だから・・・まだ始めてないんだよな?・・それ・・」
イヤな予感を感じながら再度問うと、
<はっはっは!変な事聞きますねーマスター・・>
それを聞いて太陽は
<できると思いついた2日前から始めてるに決まってるじゃないですかー( ´ ▽ ` )ノ>
「・・・・だろうな~・・」
大きく溜息をついた。
「普通そういうのって始める前に一言あるもんじゃないのか?・・・もしくは、一応でも普通に使えるようにしてから改良するとか・・」
<え~・・だって目の前により高いクオリティーがあるのに妥協するなんて真っ平御免ですよー!・・・それに、結果としてマスターの+になるんですし・・むしろ褒めるべきです!ほら!称えていいですよー?>
謝るどころかふんぞり返りだしたアルを太陽は半目で見つめて
「本音は?」
<あのナマイキなレイジングハートに私の真の実力拝ませてやる為です!!あの赤玉ことある毎に私の機能不全をチクチク論いやがって~・・ここで私の有能性をこれでもかと提示して見返したいんですよ!!・・・・あ、あとついでにマスターの為にも>
9割は私怨だった。
どうもこの2機のデバイスは、主達とは違い衝突することが多い。
3日前にもちょっとした口論から決闘騒ぎになりシュミレーションで勝負したのだが結果はアルの惨敗・・レイジングハートの余裕を持っての勝利に本気で落ち込んでいたのだがどうやらただでは起きなかったらしい。
「・・はぁ~・・で?・・さっき言ってた『俺向き』の力ってのは何なんだ?」
おそらくこれ以上の問答は無駄だと悟り現場把握を始める。
<あ、簡単に言うと魔竜の運用と同じなんですよー>
「・・・悪い、簡単過ぎて分かりづらい」
<えーと、マスター魔竜を動かすのに必要なものが何なのかは知ってますよね?>
「俺たちの世界のか?」
<はい>
「『赤い炎』と燃料になる『ハイドリュート』だろ?」
アルの問いかけにそう答える太陽。
-ハイドリュート-
太陽の世界において大空魔竜やガイキングのエネルギー源となる物質で『赤い炎』の力に反応し莫大なエネルギーを秘める炎『ハイドリュートフレア』を生み出す。
固体時はピンク色の鉱石のようだが精製することで燃料として使用できる。
<はい、正解でーす。・・・で、ここ数日マスターの炎の変質を観察してたんですが・・どうも、炎の魔力への反応がハイドリュートとの反応に近いんですよー>
「!?・・ホントか!・・・・って、待てよ・・もしほんとにそうだとしたらさすがに俺でも気づくんじゃ・・」
<それはですねー、反応しているといってもよく観察しないと分からないくらいの規模だからです。まあ精製前のハイドリュートみたいなもんですからね・・で、此処からは推測なんですけど、マスターのリンカーコアって今まで空だったのかもしれません>
「?・・空って・・?」
<通常リンカーコアは大気中にある魔力を蓄積して回復するんですが、おそらくマスターの世界には大気中に魔力が存在しないんでじゃないですかね・・・生まれたときから周りに魔力がないんじゃコアがあっても蓄積できないですからねー・・・・で、いきなり魔力が満ちている世界に来たことでコアが一時的な飢餓状態になって一気に周りの魔力を大量に取り込んだために炎と魔力が混ざるなんて現象が起きたんでしょうねー>
「・・・それで?」
<はい、そんなわけでそこの所を正常化させその上で『炎+魔力』の運用ができるシステムを構築てるんです>
「そこまでは分かったけど・・・・『俺向き』って所は?」
<ぶっちゃけマスターって魔力の扱いヘタクソですよね?>
「うぐっ!?」
いきなりのアルの指摘に声を詰まらせる太陽。
太陽がこの世界に来て数日、ユーノのレクチャーの下・・修練した結果は・・・・
念話・・・・始めてから3日丸々掛けてでごく短距離のみ使用可(但し短時間)。
並列思考・・・・いまだ習得の兆し見えず。
比較対象 高町なのは
共に魔法獲得の翌日中には完全習得・・以降更なる技術を学習中
なお、念話に関してはユーノに出会った直後、見様見真似で習得(2秒)
そのあと、念話は魔導師の基礎の基礎で魔力があれば小さな子供でも習得できるレベルだと知り太陽は少しへコんだ。
<でも、炎の扱いはお手の物でしょ?>
「・・・そりゃあ・・」
<私が提示したシステムなら魔力に炎を合わせる事で『赤い炎の特性を持つ魔力』としての運用が可能ですからマスターでもちゃんと扱えるようになりますよ・・・たぶん・・>
「ほんとか!」
<はい、しかもパワーも上がって更にお得です!・・・・ってわけなんで後3・4日ほど待ってくださいねー・・・あ、後私それに掛かりきりなんで皆さんの説得もお願いしたいんですよー>
「・・・わかった、なのはちゃん達に説明しとく」
<よろしくー。さあ、長くなったんでさっさと掃除終わらせちゃいましょう!>
「おう!」
返事と共に元気に掃除を再会する太陽。
それを見ながら
<(フ~・・・何とか誤魔化せましたねー・・思いつきでやってたんで許可取り忘れてたんですよねー・・・ついでに説得もやってもらえるんですからがんばりますかー)・・・アルちゃん・・・ファイト!!>
いつの間にか責任問題を棚上げしさらりと純朴な少年を手玉に取ったアルは気持ちを新たに作業を開始した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そうして時間が少し経ちウェイターをしていた太陽は桃子に呼ばれた。
「太陽君、悪いんだけどちょっとお使い頼めるかしら?」
「はい、いいですよ。・・で、何をすれば?」
太陽の返事を聞いた桃子はカウンターに置いてあった大きめの水筒が幾つか入った箱を指差す。
「これは?」
「特製キャラメルミルクよ♪・・・今日は少し気温が低いそうだから士朗さんの所に差し入れにね」
「じゃあコレを士朗さん達の所へ届ければいいんですね」
「うん、場所分かる?・・それに少し重いけど大丈夫?」
「あ、大丈夫ですよ、アルがナビできるし・・荷物もこの位なら」
そう言って箱を運ぼうとする太陽。
それをカウンター席で見ていた年配の常連客は
「イヤ、桃子ちゃん無理だろそれは・・なんだったら帰り道だから俺が車で・・」
とそこまで言って
「よっと」
「へ?」
ひょいと軽い感じで持つとそのまま軽い足取りで出て行こうとしたところで、
「あ!太陽君!それ持って行ったら今日はあがりでいいわよ。お昼から士朗さんの所のチームがお店貸切で使うから・・・なんならなのはのお友達に挨拶しておけば?・・・たぶん必要になると思うし・・」
「?・・分かりました!・・じゃあ行ってきまーす!」
「はい、いってらしゃい!・・気をつけてねー」
太陽は桃子の最後の台詞に首を傾げながらとりあえず返事し走って店を出た。
それを目を丸くしてみている常連客。
それもそのはず、太陽が走って持っていった箱には2リットルペットボトルくらいの大きさの水筒・・計10本。
しかもそれを少し離れた運動グラウンドまで運ぶのは大人でも辛い筈だがそれを9歳位の子供が軽々と持ち、しかも結構な速度で走っていけばさすがに驚きもする。
「・・・・・・桃子ちゃん・・・あの子何者?」
「うちの看板ウェイターですよ♪」
そう笑って桃子は答えた。
ちなみに、
- たぶん必要になると思うし -
桃子のこの言葉の意味を太陽達が知るのは2日後の事だった・・・。
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そうして太陽がアルのナビで10分程走って行くと目的地の川沿いのグラウンドに到着した。
「・・・お~・・やってるな~・・」
<士朗さんのチームの試合だって言ってましたしね~・・・どれどれ・・・なんか接戦っぽいですねー・・>
翠屋JFC 1点
桜台JFC 0点
点差は見たとおり一点差で士朗のチームがリードしているが・・・・
<押されてる方が士朗さんのチームみたいですねー>
相手の猛攻で防戦一方になっているようだ。
「・・・・・・っと、試合見る前に届け物!」
太陽は、目的を思い出しベンチにいる士朗の下に歩いて行き声を掛ける。
「士朗さん!」
「あと少しだ!がんばれ・・・ん?・・あれ?太陽君・・どうしたんだ?」
「桃子さんに頼まれてコレ届けに・・・差し入れだそうです」
そう言って太陽は持っていた箱を見せる。
「おお!そうか、ご苦労様。重かっただろう?とりあえずあっちのベンチに置いておいてくれ」
「分かりました・・・・あの~・・」
運ぼうとして立ち止まり士朗に声を掛ける。
「ん?・・なんだい?」
「・・・・もしかして、チーム・・ピンチですか?」
「・・・ん~・・先制したのは良かったんだけどそれから相手の反撃がすごくてね・・なんとかキーパーが奮闘しているんで凌いではいるんだがけどね・・このまま逃げ切りたいが・・・」
「あ、桃子さんが上がっていいって言ってたんで応援していきます!」
「お!そうか!・・・じゃあ、向こうのベンチになのは達が居るからそこで一緒に応援してやってくれ」
「はい!」
そう元気に返事すると太陽はなのはの居るベンチの方へ走っていった。
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「なのはちゃーーん!」
太陽は、なのはの姿を見つけ声を掛ける。
その声を聞いてなのはとその隣に座っていた二人の女の子が振り向く。
「あ!・・太陽君!・・・あれ?今日お店手伝うって・・・」
「桃子さんのお使い。・・で、もう上がって良いって言われてるから俺も応援しようかなって・・」
「あ、そうなんだ!」
<まあ暇つぶしですねー>
そうして話す二人をジーッっと見る二人の女の子。
「・・・・なのは?・・誰?この子・・・知り合い?」
そう言って声を掛けてくる金髪ロングヘアの少女。
「・・・・あ!・・もしかして、彼がなのはちゃんの言ってた・・・」
そう言って控えめに話し出す紫のロングヘアの少女。
その二人の言葉に
「うん!石蕗 太陽くんだよ!」
笑顔でそう答えるなのは。
それを聞いた金髪の少女は少し不機嫌そうな顔で太陽を見る。
「・・・ふーん・・あんたがねー・・」
「え・・と・・・はじめまして」
初対面なのにあまり歓迎されてない様子に少々怯みながらも挨拶する太陽。
そして、それを見て首を傾げるなのはと何か思い当たるのかクスクスと小さく笑う紫髪の少女。
「・・・・なによ、すずか」
「ふふ・・別に?」
「・・・・まあいいわ・・えっと、太陽って言ったわね。私はアリサ=バニングス。なのはの友達よ」
そう言って胸を張るように自己紹介する金髪の少女・・・アリサ。
それに続くように、
「こんにちは、太陽君。私の名前は月村 すずかって言います。よろしく」
そう言ってペコリとお辞儀する紫髪の少女・・・すずか。
「あ・・よろしく!」
礼儀正しいすずかの態度に慌ててお辞儀する太陽。
そして、
<は~い!私はアルちゃんって言うんでよろしくお願いしまーす!>
「「・・・・・・」」
軽い感じで名乗るアルとそれを見詰めるアリサ達。
<・・?・・なんです?>
「・・・話には聞いてたけど・・コッチも喋るのね・・」
「うん・・・なのはちゃんのとは少し感じが違うみたいだけど」
そう言って2人はなのはの首に掛けられているレイジングハートを見る。
ここまでペラペラと喋る機械など珍しいのだから驚くのは当然である。
「・・・ねえ、アルって言ったっけ?・・あんたは何ができるの?」
そう聞いてきたアリサにアルは、
<あっはっは・・・お嬢さん。女は秘密が多い方が魅力的なんですよ?>
「は?」
<つまり、秘密の多い私は『いい女』という事です>
「「「「?」」」」
アルの回答の意図がつかめず首を傾げるなのは達・・・そこに、
<欠陥品の戯言です。気にする必要ありません、アリサ様>
と、レイジングハートが告げる。
<・・・どういう意味ですかね~・・赤玉さん?>
明らかに先程より低い口調で問い返すアル。
<どういうもなにもそのままですよ・・素直に『故障している』と言えばいいのにわざわざ意味不明な表現で誤魔化すことを『戯言』と言われても仕方ないでしょう?・・・骨>
そう言って冷淡に返すレイジングハート。
アリサ達も2機の雰囲気を察したのか黙り込んで息を飲んでいる。
<・・・・ここじゃなんですから、ちょっと電脳空間に出ましょうか?>
<・・・・そうですね、マスター・・「え!?・・はい!」・・少し外しますがよろしいでしょうか?>
「・・・はい・・どうぞ・・」
息を飲んでいたなのはは唐突な要請にそのまま頷く。
<では・・>
<・・ええ>
<<決着つけましょうか>>
その言葉を最後に2機は沈黙した。
おそらく、シュミレーション用の仮想空間で色々やっているのだろう。
そんな沈黙を合図に
「「「「は~~・・」」」」
プレッシャーから解放された4人は息をつく。
「・・・・・あの子達・・・いっつもあんなんなの?」
そんな問いに
「「・・たまに・・ちょくちょく・・・・・結構・・・」」
「あ~・・うん、もういいわ・・」
そう返すなのは達を見てアリサはいろいろ諦めた。
「は・ははは・・」
すずかはそれを見て乾いた笑い声を出していた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そんなこんなで時間が過ぎ試合も終盤に差し掛かっていた。
なのは達も気を取り直して応援していたがここにきて相手チームの猛攻に耐え切れずゴール前での混戦にもつれ込む展開になってしまっていた。
「がんばれー!」
「耐えなさいよー・・って危ない!?右、右!」
「相手の攻撃すごいな~」
「キーパーの子が耐えてるから持ってるみたいだけど・・・このままじゃ・・あ!?」
そんな時、ボールの争奪戦で何人かの選手がぶつかってもみくちゃになって倒れた。
ピィィィィー
笛とともに試合が中断する。
倒れていた選手はすぐ起き上がるが、1人だけ様子がおかしいことに太陽は気づいた。
「・・・・ん?・・・あいつ・・・」
だが、すぐ起き上がったのでたいしたことないのかと安心した。
そうして下った審判の判定は相手チームのフリーキックだった。
「・・・防げるかな?」
そう言って不安そうにするなのは。
「防がないと同点じゃない・・・防ぎなさいよー!」
「キーパーの子は調子良さそうだし大丈夫じゃないかな?」
そう言って試合を見守るアリサとすずか。
「!?・・蹴るぞ!」
太陽の言葉と同時にシュートが放たれ・・・
ピィィィィィィー!
笛の音とともにボールがネットに突き刺さった。
「「「「あーー!?」」」」
そんな落胆の声を上げる太陽たちと翠屋JFCの選手。
その反対に活気づく相手チーム。
それもつかの間すぐに試合再開というところで、
「タイム!」
監督の士郎がそう宣言した。
そのあと選手が士郎の所に集まる。
「どうしたんだろう?」
「さあ?」
「・・・もしかして・・」
「・・?太陽くん何か知ってるの?」
太陽の言葉にすずかが問いかけると、
「ん~・・さっき選手がもみくちゃになったときこっちの選手の一人動きが変だったんだ。・・怪我してたのかも」
「「「え!?」」」
驚いてなのは達が選手たちを見ると士郎が選手の一人の脚を診断していた。
気になって4人が近づいてみると、
「・・・やはり足首をひねっているな・・・これ以上は無理しないほうがいい」
そんな士郎の言葉が聞こえてきた。
どうやら当の選手はもう出られないようだ・・・ならば控えをと言いたいところだが今日に限ってチームの控え選手の子は家の都合で休んでおり誰もいなかった。
だが、軽いとはいえ怪我をした子を出すわけにいかないのでどうしたものかと考えていると・・・
「・・・・あの・・お父さん、太陽くんならやれるんじゃないかな?」
と、なのはがポツリと提案した。
「・・・え?・・俺?」
白羽の矢を立てられた太陽は目を丸くする。
「あ・・えっと・・太陽くん運動得意だし・・そのもしかしてと思ったの・・だめかな?」
少し弱気に聞いてくるなのは。
おそらく、チームのみんなが困ってるのを見て咄嗟にいったことなので太陽に迷惑がかかるのが心苦しいのだろう。
太陽は少し考えて
「士郎さん、俺にできるならやらせてください」
「・・・いいのかい?無理しなくてもいいんだよ?」
「大丈夫です、それにせっかく応援に来たんだしやれることはやりたいですから」
そう言って笑う太陽。
それを見た士郎はバックに入っていた予備のユニフォームを手渡し
「なら頼む、力を貸してくれ」
「はい!」
それを受け取り力強く太陽は返事をした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
相手チームに事情を説明し参加を認めてもらう交渉を士郎がしているうちに太陽は着替えて柔軟を始めていた。
「大丈夫なの?」
「ん~・・どうだろ?正直サッカーやったことないから『足だけ使ってボールを蹴ってゴールに入れる』くらいしかルールよくわかってないんだけどね」
アリサの問いにそう答える太陽。
「・・・・ごめんね、変なこと頼んじゃって・・」
そう言ってショボンとするなのはに
「あはは、嫌々やってるわけじゃないよ。初めてだからワクワクするし・・・それに・・」
「「「それに?」」」
「せっかく応援してたんだから勝った方が応援した甲斐があるじゃん!」
太陽はそう言って笑う。
「「「・・・・・」」」
それを聞いた3人は、
「なんか恥ずかしいこと平然と言うわね」
「なのはちゃんがスゴイスゴイ言ってた気持ちがわかるかも」
「ふえぇぇぇ!?」
太陽に聞こえないように呟いていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そして、太陽参加で試合は再開した。
両チームが懸命にボールを奪い合いめまぐるしく攻守が入れ替わる・・そして、
<くっそー、時間切れですか・・・あと少しだったのに・・>
<何が『あと少し』ですか?・・時間に救われましたね>
アルとレイジングハートが仮想空間から戻ってきた。
<・・・って、あれ?なんでなのはさんが私を・・・って!?マスターが試合に出てる!?なんで?>
「あ、えっとねアルちゃん。・・実は・・」
戻った2機に事情を説明する。
<へー・・ちょっと離れた隙にそんな面白いことに・・・って、あ!>
「あ!太陽君の方に!?」
ボールを持った相手が太陽の方に向かって進撃していく。
それを正面から迎え撃つが、簡単なフェイントであっさりと躱された。
「あ!抜かれちゃった・・」
「やっぱ初心者だし・・・」
「太陽くん頑張れー・・・って・・」
そこまで言って言葉を止める。
なぜなら・・・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
桜台JFCのエースポジションの少年は急遽入った太陽を見て数合わせの要員だと判断した。
理由は、リタイヤが出て控え選手のいないチームが急場で参戦させたことと、動きがどう見ても初心者のそれだからである。
なにせ、とりあえずボールのあるところへ走っているだけで陣形もなにもあったもんじゃないからである。
すでに時間はロスタイムに突入しており太陽を抜けば一気にゴールまで攻められる位置・・・
(こいつを抜いて一気に逆転だ!)
そう思い少年は突撃し、フェイントで鮮やかに躱し一気に走りだそうとしたところにフッと正面に人影が現れる。
(!?・・他の選手がもう周りこんで・・・・って、えぇぇぇぇぇ!??)
少年は驚く。
それはそうだろう何故なら彼の正面にいたのは・・
「ふう、あっぶねー」
そう言って息を吐く自分が今抜いたはずの太陽だったからだ。
(いや、まておかしいだろ!?・・抜いた瞬間にもう前にいるとかありえないだろ!?)
そう思いながらも走るのを止めるわけにもいかないので再びフェイントとステップで太陽を抜き去り・・・・
「あー・・またやられた・・」
(だからなんでだーーーー(゚д゚lll)!?!?)
再び太陽と向かい合うことになって固まる。
その隙に、
「よ!もーらい!」
「へ?」
太陽はボールを掠め取りドリブルを始めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
どんなに速い動きでもある程度距離を置いてみるとよく見えたりすることがないだろうか?
目の前を車が通過するときはその速度を速く感じるのに、遠くを同じ速度で走る車はそれほどに感じない・・・体感速度は距離が離れていればいるほど遅く感じるものである。
今のなのは達はそれを体感していた。
おそらく目の前でされたらみえなかったであろう太陽の動き。
躱され抜かれた瞬間に反転一気にダッシュして相手の前に回り込む。
ただそれだけなのだが・・早さが尋常ではないのだ。
対比対象がすぐ近くの相手選手でほぼ倍速近い速度で動いているのだから驚くしかない。
前述の体感速度の例のごとく離れて見るなのは達にはそれこそ太陽の周りが全てスローモーションがかかったように見えるのだ。
「「「・・・・・」」」
未だボーゼンとする少女たち。
<あ~・・・まあ当然といえば当然ですね~>
とアルの言葉で正気を戻す3人。
「いや、おかしいでしょ(゚Д゚)ノ!?今の動き!」
「ほんとに早送りされてたみたいだったよね・・?」
驚きから立ち直れてないアリサとすずか。
「わあ~、やっぱり太陽くんはすごいの(((o(*゚▽゚*)o)))!!」
何やら尊敬の眼差しを向けるなのは。
「今のを『スゴイ』で片付けるな!」
「・・・あんな動き恭也さんくらいしかできないんじゃ・・・」
二人がそこまで言った所で、
<うちのマスター、その恭也さんとガチれますよ?>
「「(°д°)」」
<それが普通の反応ですよね~>
「・・・・ていうか・・・ホントに人間?」
<どうでしょう?・・・・っていうかなにげに恭也さんも人外のカテゴリーなんですね>
_________________
そんな外野の驚きをよそに試合は進む。
とりあえずボールを確保した太陽だったがすぐに窮地に立たされる結果となった。
理由は単純でただ走るだけならば太陽に追いつける選手はいないがボールを蹴りながら走り回る経験が全く無かったため、球を蹴るたびに減速しなければならず身体能力でカバーしても徐々に相手選手たちに囲まれだしていた。
ならばパスをと周りを見ても近くの味方はキッチリとマークされており、ロングパスしようにもそれをうまく通せるだけの技術がない。
(くそ、このままじゃ・・・どうすれば)
そう思っていくうちにも時間が過ぎ未だハーフラインを切れないまま残り時間は・・・
___________________
「あと15秒!」
計時係の声が聞こえなのは達は声を大きくして応援する。
「もう時間がないわよ!」
「がんばってー!!」
「太陽くん!!」
そんな応援を聞きながら
<・・・・マスターならあそこからでもゴール狙えるんじゃないですかね?>
ポツリとアルが呟き、それを聞いた瞬間
「「「太陽(くん)!!シュートォォォォー!!」」」
咄嗟に叫んだなのは達3人。
それを聞いたからか太陽は立ち止まり右足を後ろに振り上げシュート体制を取り・・・
「「「いけぇぇぇぇーー!!」」」
興奮して大声で叫ぶ、それに応えるように太陽はシュートし・・・・・
ドゴォォォォォォォォォォォォーーーン!!!!
グラウンド周辺におおよそスポーツで出るはずのない音が響き渡り、少しの間のあとに
ピィィィィィィィィィーー!!
笛の音が鳴り響いた。
_____________________
時間と場所を移しここは翠屋。
現在店ではチームの祝勝会が行われていた。
中では選手たちがそれぞれ食事や会談で賑わっている。
そんな店の外に設置されているオープンカフェではなのは達が穏やかなティータイムを楽しんでいた。
「・・・・・はぁぁぁ~~・・・」
・・・・訂正、一名を除いて楽しんでいた。
「もう、そろそろ立ち直りなさいよ、うっとーしい」
「ア・アリサちゃんそれはちょっと・・」
<いやいや、アリサさんの言うとおりですよ。終わったことでグジグジと女々しいですよマスター>
「あら?あんた結構言うわね、気に入ったわ」
<アリサさんこそ中々ですよ、仲良く出来そうで何よりですよー>
言いたいことをズバズバ言うあたりで意気投合し楽しそうなアルとアリサ。
そんな二人を他所になのはとすずかは太陽のフォローにまわっていた。
「しっかしどういう蹴り方すればゴールポストなぎ倒して地面に穴あけられるのよ?」
アリサのその言葉に「うっ・・」と声を漏らす太陽。
<マスター馬鹿力ですからねー・・・今後は加減も覚えないとちと危ないですねー>
そう、試合の最後太陽の放ったシュートは結果追加点になり翠屋JFCの勝利で幕を閉じた。
そのゴールまでの過程が常識はずれだったのだが・・・・。
なにせ放ったシュートは空気を撃ち抜くような爆音と共に猛スピードで上部ゴールポストに突き刺さり、
この瞬間誰もが外したと思っていたのだがどうやらとんでもない速度に回転まで加わっておりそのまま撃
ち出されるような速度で真下に弾かれゴールラインの内側に着弾そのままボールの約6割を地
面に埋め込み、さらに弾いたゴールポストが勢いよく後ろにひっくり返る事態になったのだ。
幸い、選手・ゴールキーパー共に怪我人はおらず問題なしと判断され1点追加となり試合終了・決着となっ
たが、そこで大慌てしたのが当の太陽。
猛ダッシュでキーパーの下に走り無事を確認。
その後、倒れたゴールポストを一人で簡単に元に戻し後はひたすら謝っていた。
そんなこんなで今に至り未だ太陽は落ち込んでいるのだ。
そんな太陽を少し置いておきアル、なのは、レイジングハートは、念話でこのことを話していた。
_____________________________________
【はあ・・・まさか、こんな問題が出てくるとは・・・】
【アルちゃん、なんとかできない?】
【なんとかって言っても無意識でやってることじゃ対処にも限界があるんですが・・】
【一々言い訳する暇があるならせめて善処くらいしたらどうです、アル】
【(カッチィィィーン)・・・そこまで言うなら優秀なレイハさんには秘策があると?】
【それは・・・・って、待ってくださいなんですか今のは?】
【は?】
【さっきの『レイハ』というのは・・】
【んのもんあなたの呼び名に決まってるでしょー。・・ぶっちゃけ長いんですよ名前!】
【・・・ホントにぶっちゃけましたね・・あのですn【はい、そこまで!】・・ん?・・】
【本題がズレてるよ二人共・・・今は太陽のことでしょ!喧嘩してる場合じゃないよ!】
【・・・あ】
【・・ユーノさん・・】
【フゥ、二人ともわかって・・】
【【いたんですか?】】
【・・・・・・】
【いや、素で気づかなかったんですけど・・・】
【ええ、というか存在を完全に忘れていました】
【・・・・・・・・・・・・・・】
____________________________
「あれ、なのは。なんかユーノの様子がおかしいんだけど?」
「・・・ホントだ・・・なんか泣いてるみたいなんだけど?」
「え!?・・・・気のせいだよきっと・・・うん・・・たぶん・・」
なのはは慌ててそう言いながらユーノの頭を撫でる。
____________________________
-念話再開-
【しかし、ちょっと問題ですよねー・・・】
【・・・ヒック・・・・何が?】
【・・・いや悪かったですって・・・・今回の件はマスターの『無意識』の行動というトコロがまずいって言ってるんです】
【え?意識してたんじゃなくて?】
【はい、今回マスターは試合中に勝ちたい気持ちから無意識に『炎』を使ってしまったんだと思います】
【確か太陽様の世界の人間特有の力でしたね】
【ええ。ふだん、マスターは日常でもこの力を使ってるんですよ・・力仕事とか・・ただ、今のマスター
の炎は魔力と結びついて不安定なんですよ・・・だからあんな結果になったんだと思います】
【・・・・・暴走・・・ですか?】
【そこまでじゃなくて・・・・ん~・・スピードメーターなしでアクセル踏んでる感じですかね~・・だ
からどれだけ踏むとどれくらい出るのかわからない】
【なるほど、なら必要なのは・・・】
【ええ、『経験』です】
【・・・・・なんか、私たち蚊帳の外なの・・・】
【それくらいいいじゃない・・・僕、存在すら認識されてなかったよ((´;ω;`)】
【とにかく太陽くんを立ち直らせないと!】
____________________________
なのはは、アルとレイジングハートが難しい話を始め入れなくなったので太陽を励ますことを実行に移す。
「太陽くん、元気出そうよ!少し失敗したくらいでクヨクヨしちゃダメなの!」
そう言って太陽を見るなのは。
太陽はその言葉に顔を上げなのはを見る。
「・・・でもさ・・」
「・・・じゃあ、太陽くんはここで諦めちゃう?」
「え?」
なのはの問いを理解できず聞き返す。
「失敗したからもうそこで終わりにしちゃう?」
「・・・あ・・」
なのはの言いたいことが少しずつ分かり始め、
「失敗したから『終わり』じゃないよ。大切なのはその後『どうするか』だよ!」
「!?」
その言葉を聞いたとき太陽は強い衝撃を受けた気がした。
-いいか?太陽。大切なのは『諦めない』こと。
たとえ何度失敗した倒れたとしてもそこから何かを学べ!そこからどう立ち上がるかを考えろ!『強い心』を持つこと・・・簡単なようで難しい事だ。・・できるか?-
太陽が最も尊敬する父からの言葉を思い出したからだ。
(あの時の俺はどう答えた?・・・・きっと、『うん!』とか『まかせて!』とか深く意味を考えずに答
えてた・・・・ほんっっと・・・馬鹿だ俺・・・・)
そこまで思って周りを見る。
アリサ 言葉はきついが彼女なりに励ましていた。
すずか 言葉には出さないが気を使ってくれているのがわかる。
ユーノ そもそも彼がいなければ短期間で体調は戻らなかった・・・というか何で泣いてるんだろう?
アル・レイジングハート 念話で聞くと太陽の特訓プランを考案してくれていた。
なのは 大切なことを気づかせてくれた。
パァァァァァーン
「「「「<<!?>>」」」」
全員が驚いて太陽を見る。
太陽は自分の頬を強く叩いていた。
「痛っっっっ・・・!」
「ちょ・・」
「「太陽くん!?」」
「キュッ!?」
<これは・・>
<古典的ですが・・・・ふむ、もう心配いらなそうですねー>
叩いた手を顔から話す、そして顔を上げて
「ゴメン!心配かけたもう大丈夫だ!」
そう強く宣言した。
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そんなこんなでティータイムを仕切り直し、雑談に花を咲かせる太陽たち。
そうして時間が過ぎ解散の時間となった。
そこへ、
「お?みんなも解散か?」
「あ、お父さん」
「士郎さん・・・あの今日は・・」
そこまで言ったところでそれを遮るように
「太陽くん、今日はありがとう。・・・もし君が良ければまたどうだい?」
そう切り出す士郎。
「機会があれば・・・ただちょっと特訓してからで!」
「はは、こちらはいつでも歓迎するよ」
そう言って笑う士郎と太陽。
「そうそう、すずかちゃんもアリサちゃんもありがとうな応援してくれて・・・あ、帰るんなら送ってい
こうか?」
「いえ、迎えに来てもらうので」
「同じくですぅ!」
「そっか、なのはと太陽くんはどうするんだ?」
「ん~、おうちに帰ってのんびりする」
「俺は祝勝会の片付けだけ手伝ってから帰ります」
「え?桃子にもう上がっていいって言われたんだろ?」
「はい、でもなんとなく手伝いたい気分なんで・・片付けだけならそんなに時間かからないですし」
「そうか・・・じゃあ、なのは。父さんも家に戻ってひとっ風呂浴びてお仕事再開だから、一緒に帰るか
?」
「ん~」
「ん?なのは、俺なら気にしなくていいよ」
「わかった!じゃあ帰ろお父さん!」
そうして笑う親子。
そんな二人を見て、
(・・・そういえばみんなどうしてるかな・・・)
今は会えない家族を思った。
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「じゃあ、おつかれさまでーす!」
<しつれいしまーす!>
片付けがひと段落して太陽とアルは家路につく。
「ふう、今日はいろいろあったなー」
<ですねー。まあ結果的に今後の方針にもいくつか修正できましたし有意義な休息だったんじゃないです
か?>
「・・・そうだな。さて、早く帰って俺もシャワー浴びて・・・」
太陽がそこまで言ったとき、
ズズズズゥゥゥゥゥゥゥン!!
いきなり大きな揺れが起こった!
「なんだ!?」
<・・・これは!?・・・・マスター!緊急事態です!>
「緊急・・・まさか!?」
<・・・ええ・・・>
こうしているうちにも周囲の異常は拡大しあっという間に街に巨大な樹木が出現し周囲の建物を壊してい
く。
唐突で、非常識な自体・・・・そんなことが起こせるのは・・・・
<ジュエルシードが発動しています!>
こうして、平穏は唐突に終わりを告げた・・・・・。
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街に起きた非常事態を驚くでもなく悲しむでもなく愉快そうに眺める人物がいた。
「イヤー、これはなかなか派手ですネー!!イィィィッツ・ファンタスティィィィーック!!」
それは、小さく丸いボールのついたドタ靴を履き、赤い模様のついた黒の衣装で身を包み、奇妙な形の帽
子をかぶり、笑顔と化粧を貼り付けた仮面を被った・・・・
道化師
ただこのピエロ、サーカスなどのソレとは違う決定的なものがあった・・・
「ですが足りない・・足りない・・・足リナァァァァァイ!!!・・そう!・・」
それは・・・
「『悲劇』が足りない!!!」
『狂気』
「ええ、ええ・・・ええ・ええ・ええ・ええ・・・足りないのなら足しましょう・・・私が満たしてみせ
ましょう!!・・・・・・そう!」
そういった道化師はある一点を見つめる。
彼の立つ場所は地上200m上空。
空の高みから見つめる先にあるのは一つの光・・・・・
淡い桜色の光を放つ小さな少女・・・・『高町 なのは』
道化は嗤う・・・・ケタケタと・・・ケタケタと・・・・
そして人差し指を掲げ、
「では、イィィィィィツ・ショウタァァァァァァイム!!!」
指を振り下ろす。
その指先にあるのは
黒く
深く
昏い・・・昏い・・・・
『黒い炎』
後書き
次回はバトルパート&ようやくの主人公覚醒です。
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