| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ハイスクールG×D 黄金に導かれし龍

作者:ユキアン
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第12話


試合当日、私はレーティングゲーム開始10分前に部室に顔を見せに行った。そこにはいつも通り制服に身を包んだオカルト研究会のメンバーが揃っている。

「双葉!?貴方、一体今まで何をしていたの!!」

私に気付いた部長が開口一番にそう怒鳴ってくる。

「私は私でやらなければならない事がありましてね。それよりもイッセー、何故解毒剤を飲まないのだ?」

「飲んだ初日に暴れて零しちまったんだよ」

なるほど、その現場を想像するのは容易いな。

「ほら、解毒剤だ」

イッセーに向かって解毒剤を投げ渡すと、それを普通にキャッチして口に流し込む。

「うっ、眩しい」

「十日ぶりになるからな。少しずつ慣らしていけば大丈夫だ。それにしても私の予想以上に逞しくなったのだな、イッセー」

解毒剤を飲むと同時に五感に使っていた小宇宙が少しだけ外に漏れ、イッセーの背後に銀河を幻想させる。それに、この感じは

「セブンセンシズどころかエイトセンシズまでも目覚めたか」

「エイトセンシズ?何だそれは」

「何、エイトセンシズに目覚める事で特殊な場所に行ける様になっただけだ」

「あら?確かエイトセンシズって確か冥界に行ける様になる物よね」

「そうです。悪魔領である冥界ではなく、真の死の世界である冥界の事です。まあ、今は関係ないです。目覚めたからと言って小宇宙が上がる訳でもないので」

冥王ハーデスを倒しに行く事を決意しない限りは無駄な能力でもある。

「さて、そろそろ私が此所に来た本題に入るとしましょうか。イッセー、貴方にはもう教える事はありません。これからは自分の思いでその力を使っていきなさい。そして弟子を卒業する証としてこれを授けます」

異空間から取り出すのはこの10日間で完成した鋼鉄聖衣とそれを収納するパンドラボックス。

「これは、聖衣。まさか誰かから奪ったのか」

「いいや、開けてみれば分かる」

私の言葉にイッセーがパンドラボックスを勢い良く開ける。中に納められている聖衣の色は鋼色を主体に金色で飾り付けられた左腕だけが存在していない。

「鋼鉄聖衣。過去に聖闘士を補佐する者に与えられていた聖衣の模倣品だ。模倣品とは言え、聖衣の様に小宇宙増幅の機能もあれば小宇宙による強化も可能な代物だ」

「左腕だけ無いのは何でなんだ?」

「お前にはいらないだろう。幻朧魔皇拳!!」

イッセーに施しておいた記憶の封印を解き放つ。

「っつ、ドライグ!?無事か」

「あの修行にドライグは邪魔になるのでな、お前の無意識を操らせてもらっていた。それを今解除した」

「じゃあ、この左腕が無いのは赤龍帝の篭手を装備する事を考えてなのか」

「当たり前だ。その為に聖衣のデザインも調整してあるのだぞ。聖衣は天から見守る星座を元に設計された物。星座を元に作られていないそれは聖衣とは呼べん。お前が名付けろ」

イッセーは何も言わずに鋼鉄聖衣を身に纏い、赤龍帝の篭手を装備する。

「部長、このレーティングゲーム、オレに全部任せてもらえますか」

「イッセー?」

「今のオレがどこまで力を抑えなければならないのか。それを確かめなくてはならないんです。相手はフェニックス、殺しても殺せない相手。試すにはちょうど良いんです」

そう言ってイッセーが頭を下げる。部長はしばらく悩んでから口を開く。

「ライザーの相手はイッセーに任せるわ。私達は下僕の方を当るわ。双葉はいざという時の為にイッセーに付いておいて」

いざとは、イッセーがやりすぎてライザーとかいう奴を殺しそうになった時か。まあ、それぐらいなら問題無いだろう。

「部長、ありがとうございます」

再び頭を下げるイッセーを見ながら私も了承する。

「イッセー、やるからには絶対に勝ちなさい」

「はい」

試合開始5分前に部室に魔法陣が現れ、グレイフィアが現れる。

「皆さんお揃いのようですね。準備はよろしいですか?」

「いつでも構わないわ」

「では、最後になりますが簡単な説明をさせていただきます。開始と共にこちらの魔法陣から皆様は戦闘用に用意されたフィールドへ転送されます。使い魔は主からの呼び出しがかかるまでここで待機をお願いします。転送先は異空間に作られた世界ですのでどれだけ壊されても構いません。思う存分、ご自由にどうぞ」

なるほど、確かにそれなら存分に力を発揮出来るな。

「なお、この試合はご両家のみならず四大魔王の方々も中継にてご覧になられておられます」

おそらく四大魔王の注目を集めているのは私とイッセーの二人、正確には聖闘士の力だろうな。あとは、イッセーの赤龍帝の篭手か。

「お兄様だけじゃないの!?」

「はい。特にベルゼブブ様が強い関心を示しておられます」

確か悪魔の駒を作り出した天才だったな。聖衣も観察対象か。

「それでは皆様、そろそろ時間でございます。眷属の方々は魔法陣の上に移動をお願いします」

グレイフィアの指示に従い、私以外が魔法陣の上に移動する。

「イッセー、状況が動いたら呼べ。最初の罠を仕掛けたりする時間は呼ぶな」

「分かった。それじゃあ、頑張ってくるぜ」

「それではこれより転移します。なお、一度フィールド内に転移しましたら魔法陣による転移は反則行為となりますのでご注意ください。それではお嬢様、ご武運を」

その言葉と同時に部室には私とグレイフィアだけが残される。

「では、私も案内してもらおうか。招待されているのだろう。四大魔王から」

黄金聖衣と教皇が纏うマントを身に着けてソファーから立ち上がる。

「場所が場所ですので魔法陣からの転移となります。よろしいでしょうか」

「問題無い」

「では」

魔法陣の上に立つと同時に光に包まれ転移する。転移した先には4人の王とその眷属が私を待っていた。

「はじめまして、私は神代双葉。聖闘士をまとめる教皇だ」

「はじめまして、私はサーゼクス・ルシファーだ。いつも妹が世話になっているね」

「気にする事は無い。あれは私個人が契約に従っているだけに過ぎない」

聖闘士が力を貸しているのではなく、神代双葉という人間が力を貸しているのだと主張する。向こう側もただ言ってみただけだったらしく一度首を縦に振って流してくれる。

「さて、あまり時間も無い事だし率直に聞く事にするけど、本当にあの聖闘士なのかい」

「あの、とはどれを指す言葉なのかは分からないが、確かに私は聖闘士だ」

「つまりはこの宇宙が再誕する前から存在し、遺跡の壁画などからその記述が確認される聖闘士で間違いないと」

「ああ、前世の宇宙でも、さらにその前世の宇宙でも神々を相手に戦い続けてきた、ただの人間。今世では数は少ないが、確かに存在する神殺しの集団だ」

「数が少ないとはどのくらいなんだい」

「元から全員が揃った所で88人。しかしながら一人一人が精兵。数を揃えた所で負ける事は無い。それは私の弟子が証明してくれる」

「赤龍帝に魅入られた少年か。強いのかい?」

「赤龍帝の力がなくともフェニックスごときには負ける様な鍛え方はしていない」

「そこまでかい」

「2ヶ月足らずしか鍛える時間は無かったが、弟子の才能も有って十分。悪魔に転生したおかげで多少は楽に強くなっているがな」

「それは将来が楽しみだね」

「ああ、既に私の元から離れても問題無いだろう」

「……回りくどい事は止めよう。君たち聖闘士が我々悪魔に力を貸してくれる事はあるかい?」

「組織として力を貸す事はない。しかし、個人が力を貸す事にまでは特に制約はない。そして我々は平和を乱す存在を滅ぼすまで。今の所悪魔はその対象外だ。今のまま契約の元に動くのなら、私達が動く事は無いだろう。それは天使でも堕天使でも変わらない」

「第4勢力として名乗り出るのかい」

「さて、どうだろう?何分数を増やすのは大変であるし、何より人間である以上、簡単に死に寿命も短い、そして誘惑もされ易い。組織としてはともかく勢力として名乗り出れるとお思いで?」

「まあそうだね。だけどそれも今のままだったらと言う事だろうけど」

「つまりは小宇宙を教えてくれるのなら人材を渡しても良いと考えても」

「そう考えてもらっても構わない」

「今は遠慮しておこう。現状のままなら私一人で十分対処出来る状況。ただ、何か大きな事が起これば」

「そうか。今日はその言葉を聞けただけで良しとする事にしよう。ここからは私事になるのだが構わないかい?」

「まあ、時間が許す限りなら」

「ありがとう。話なんだけど、以前リアスに対価として渡したワイン。アレを分けて貰いたいのだよ。もちろん対価は充分に用意している」

「先に対価の方を聞いても?」

「こちらは37年産のガープ領のワインと42年産のダンタリオン領のワイン、そして近年で最も高い評価を受けている44年産のパイモン領のワイン。この三本で一本を譲ってもらいたい」

悪魔が作ったワインか。もの凄く気になる。しかも周りがかなり驚いて自分にも飲ませろと言っている。かなり貴重な物らしいな。悪魔は契約には誠実だ。騙している訳では無いようだ。

「良いでしょう。私もそちらの三本が気になるので。今、手元にありますか」

「ああ、もちろんさ。グレイフィア」

「こちらになります」

此所に転移してきてからサーゼクスの後ろに控えていたグレイフィアが木箱のケースを三つ差し出してくる。私もアナザー・ディメンションの異次元空間からワイン二本取り出して一本を差し出し、グラスを幾つか用意してもう一本をそれに注ぐ。

「サーゼクス殿以外の方も気になっているようですので、この一本は試飲として差し上げますよ。あまり数はありませんし、新しく作るとしても5年近くは作れないので早めに交渉して下さい」

私も私で気になっているパイモン領のワインを開けてみる。コルクを抜いた途端、独特の香りがするということは貴腐ワインか。グラスに注いで口に含む。甘みの中に独特な風味も感じる。貴腐ワインの上に麦わらワインでもあるのか。おそらく魔法を使っているのだろうが、ワイン本来の味には何も触れていないのだろう。中々に分かっている悪魔のようだ。コルクを閉め直し、今度はダンタリオン領のワインを口にする。こちらは正統派の赤ワインでキツい辛みの中に葡萄本来の味わいがしっかりと残っている。最後にガープ領のワインを開けようとした所でイッセーから呼び出しがかかる。仕方ない、これはレーティングゲーム後のお楽しみにしておこう。

「では、呼び出しがかかったのでこれで」

イッセーの召還に答えると同時に聖衣を解除しておく。試合の方は全く見ていないがどうなったことやら。

 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧