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スーパーヒーロー戦記

作者:sibugaki
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第72話 夕日の決戦

 海鳴市で起こったマジンガーZ対戦闘獣軍団の戦闘は直ちにニュースで速報されていた。報道されていたニュースで映されていた光景は、見ていた者達一同を驚かす光景が映っていた。
 かつて、手も足も出なかった戦闘獣軍団を相手にあのマジンガーZが見事にリベンジを果たしたのだ。
 圧倒的勝利を飾ったZ。そしてその周囲に散らばるは戦闘獣軍団の無残な骸の山であった。
 そして、その勝利は速報を見ていた殆どの者達に希望を与える光景となったのだ。
 大人から子供に至るまで、侵略同盟により苦しめられていた人々の胸に希望の光を灯したのだ。
 だが、此処でその速報を誇らしげに見ている者が居た。
「へっへぇん、どうでぃ! 俺の大活躍は」
 胸を張って自信満々に言い張る。勿論それは当の本人である兜甲児であった。あの後甲児は即座に此処喫茶店アミーゴへと訪れていた。無論マジンガーは付近のガレージにて隠してある。マジンガーをおおっぴらに出していては目立つからだ。
 そして、甲児はアミーゴ店内にてなのは達と無事に合流を果たせたのである。
「それにしても凄いですね。あの戦闘獣を蹴散らしちゃうなんて!」
 速報を見ていたフェイトが驚いていた。実際に戦っていたからこそ、それを叩きのめしたマジンガーZの圧倒的パワーアップ振りには驚かされているのだ。その速報には今まで圧倒的な強さを誇り人々の恐怖の象徴であった戦闘獣軍団を叩きのめしていくマジンガーZの姿が映し出されていた。
 その速報を見ていた多くの人達がきっと絶望で凍りつかされていた心を溶かされたであろう。
「それだけじゃないぜ。あの戦闘獣を指揮していたミケーネ七大将軍の内三体も俺が倒したんだからよぉ」
「へぇ~、将軍様まで居るんかぁ。何か戦国時代の武将さんみたいな奴等やねぇ」
 はやての言葉が今一ずれた感じがするが、とにかく甲児がミケーネの七つの軍団を統べる三人の将軍を打ち倒したのは事実である。そして、甲児のマジンガーZのパワーは以前のそれより遥かに増している。半年前のそれとはまるで別物の強さだった。
「流石は甲児兄ちゃんやなぁ。正に江戸っ子やねぇ」
「そんなに褒めるなよぉ、当然の事だけどちょっぴり照れるじゃねぇか」
 皆の前で頭を搔きながら嬉しそうに微笑む甲児。元々調子に乗り易い性質を持つ甲児故の反応と言える。
 そして、そんな反応をはやてはとても楽しそうに眺めていた。
「今回甲児兄ちゃんは大活躍したみたいやし、そんな甲児兄ちゃんに私からのご褒美やでぇ」
「お、何だはやて?」
 ご褒美と言う言葉に目が輝く甲児。現金な性格である。期待に胸が膨らむ甲児に手渡されたのは数枚の写真であった。一体これの何処がご褒美だと言うのだろうか?
 疑問に思う一同を他所に、それを受け取り眺めた甲児の目線が突如大きく見開かれたかと思うと、その直後に甲児の鼻の下が伸び出した。
 甲児の素性を知らない者達はその甲児の顔の変化に気づかないのだが、甲児の素性を知っている者達はその顔が何を意味しているのか分かっていた。
「ははは、はやてしゃぁん? ここここれを僕に、嫌私に頂いてもよよよ宜しいのでしょうかぁ?」
「あぁ、かまわへんでぇ! 今回のMVPは甲児兄ちゃんやからそれは当然の褒美やでぇ」
 甲児の言葉遣いや顔色などから明らかに普通じゃない事が分かる。そして、そんな甲児を見てはやてがとても面白そうな顔をしていた。
「は、はやてちゃん。一体何を渡したの?」
「ふふん、知りたいぃ? それやったら見た方が早いでぇ」
 相変わらずにやけた顔で勿体ぶるように言うはやて。そんなはやての言葉に半ば不安を感じつつも甲児がにやけながら見ている写真を覗き込んだ。
 其処に映っていたのはピンク色のポニーテールの女性が際どい服装をしてはにかんだ顔をしながら映っている写真であった。
 かなり際どい服装な為かその女性のスタイルは出まくりなのだ。その女性の写真を見て甲児が鼻の下を伸ばしてしまっているのだ。
 その写真を見ていたフェイトは目を細めて甲児を見ており、なのはに至っては呆れ果てるだけであった。
「どうしたのだ、お前達? そんな変な顔をして」
 そんな時にであった。丁度アミーゴの仕込みを終えて戻って来たシグナムが変な顔をしているなのはとフェイト。そして鼻の下を伸ばして写真を眺める甲児の姿を見る。
「あ、シグナムさん……」
「べ、別に何でも……」
 二人の対応が明らかに不自然だ。それを見たシグナムは真相を確かめる為に甲児の後ろに回りこむ。そうでなければ甲児の持っている写真を見る事が出来ないからだ。
 だが、その写真を見た時、シグナムの顔色もまた変わってしまった。
「こ、これは……」
 其処に映っていたのは以前自分が主であるはやてに無理やり着せられたバニースーツや際どいメイド服を着てはにかんだ顔をしたシグナムが其処に映っていた。
「あ、あああ主! これは一体?」
「見て分からんか? 以前シグナムが着せた姿を隠し撮りして現像したんやでぇ」
「い、一体何故、この様な真似を?」
 シグナムには全く理解出来なかった。はやてがシグナムにこの様な格好をさせた理由は分かっている。騎士としてのけじめであると同時に、主であるはやてに対し刃を向けた事に対する罰だった。それにはシグナム自身も了承した上での事だった。だが、この写真ははっきり言って聞いていない。一体どう言う事なのだろうか?
「主! 以前の恥ずかしき姿は甘んじて受けました! ですが、この写真は一体何ですか?」
「何言うとるんや。これも立派な罰やでぇ!」
「し、しかし! それは以前の恥ずかしい格好で清算した筈では?」
 確かにそう思っていた。だが、それははやてにして見ればまだ完済していなかったのだ。
「それは私に刃を向けた罰や。シグナム~~。まだあんたはとんでもない罪を犯した事を忘れてるでぇ~」
「と、とんでもない罰?」
「忘れたとは言わせへんでぇ! シグナム達は私の友達のなのはちゃんを傷つけたやろうが! あの罰はまだ全然完済出来てへんのや! それを今此処で完済するんや」
 そう、はやては今でも根に持っていたのだ。幾らシャドームーンに操られていたとは言え、大事な友達であるなのはを傷つけた守護騎士達。主としてそれを許す訳にはいかない。故にこの処置なのだ。
「で、では……これで私の罰は完済できたのですか?」
「さぁ? それは甲児兄ちゃんに聞いてくれへんとなぁ?」
 明らかに悪意のある目で甲児を見る。その視線を受けた甲児もまた悪意の目線ではやてを見た。互いに頷きあう。無言の了解であった。
 其処までこの二人は意志の疎通が出来ると言うのに正直場の皆は驚かされる。
「さぁて、これからやでぇシグナム」
「あ、あの……これから一体何をするおつもりで?」
「決まってるやろう。これから甲児兄ちゃんのリクエストに応じたコスプレをして貰うんや。これでシグナムの罰は帳消しにしたるでぇ」
 よりにもよってであった。兜甲児と言えば主であるはやてに並ぶ程のスケベである。嫌、正直主であるはやては同じ女性。彼女のセクシュアルハラスメントになら幾らか耐える事は出来た。
 だが、この兜甲児は男だ。異性のセクシュアル(以下略)には騎士として、また女として耐える事は困難だ。
 っと言うか嫌だ。騎士として長い間戦ってきた為かそう言った類の事はかなり奥手なシグナムにはかなり難関な罰でもあった。
「あ、主! どうかその罰だけは考え直して下さりませんか?」
「おんやぁ? 騎士には二言はないんやなかったんかぁ?」
「うぐっ!」
 今更ながら自分の発した言葉に舌打ちを打つ羽目となった。まさかあの時言った言葉が此処で自分に帰って来るとは思いもしなかったのだ。
 そんなシグナムの前に両手をいやらしく動かしながらはやてと甲児が迫ってくる。
「さ~て、どんなコスプレになるんやろうなぁ? 甲児兄ちゃんの発想は私以上やから楽しみやぁ」
「任せとけはやて。お前が大満足するようなすんごく際どいコスプレを考えてやるぜぇ。ついでに俺も大満足出来るしな」
「や、止めろ! 来るな! 私に近づくなぁ!」
 即座に逃げようとするシグナム。こうなっては騎士の誇りなどどうでも良い事だ。騎士の誇り以前に女として汚される危険性が高い。それは女として作られた以上絶対に嫌だ。彼女も一応感情の類はあるのだ。故に拒否しようとした。
 だが、そんなシグナムの努力も徒労に終わってしまった。魔法に関して幾らか上達したはやてがシグナムの体をバインドでグルグル巻きにしてしまったのだ。
 胴体と手は勿論両足も縛られてチャーシューの様な状態になってしまったシグナム。
 動けず芋虫の様にしか動けない彼女を甲児は肩に担ぎ上げる。
「離せ! 私に触るなこのケダモノがぁ!」
「さぁて、こっから先はR指定だからお子ちゃまの居ないところでゆっくり楽しむとすっかぁ」
「うひゃぁ~! 夢にまで見たR指定が生で見られるんかぁ。楽しみやなぁ~」
 そう言いながらなのはとフェイトを残しその場から消えるように去っていく三人。
「た、助けなくて良かったの? なのは」
「良いんじゃない。はやてちゃんだって考えての事だろうし。それに甲児さんは言って聞くような人じゃないから」
 なのはは半ば諦めていたようだ。甲児は言って聞くような球じゃないと言う事に。そして三人が消えた事に何も感心を持たないかの様に席に座りコーヒーを飲むなのは。
 そんななのはを見る辺り図太いと言うか何と言うか。
 そんな感じに思えるフェイトであった。
 その後で、部屋の奥から甲児とはやてに嫌らしい笑い声と共に聞こえて来るシグナムの悲鳴があったのだが、それは聞こえない事にしておいた。




     ***




 甲児達がお楽しみをしているそんな中、南光太郎は立花籐兵衛と共に居た。二人が居るのはかつてダブルライダーを鍛え上げた訓練場であった。
「しかし、RXにパワーアップした状態のお前さんに今更更なるパワーアップなんか必要あるのか?」
「必要なんです。確かに僕はRXにパワーアップ出来た。だけど、僕が優先的に戦えるのは怪人や同程度の大きさの敵位なもんです。怪獣や大型ロストロギア。それに戦闘獣などが相手では分が悪くなってしまうんです。なのはちゃんやはやてちゃん達みたいにどの敵とも対等に戦えるようにならなければパワーアップした意味がないんです」
 光太郎の言葉を聞いた立花は腕を組み難しい顔をしていた。本来仮面ライダーは常人離れした力を有しているとは言えその大きさは人間と大差ない。その状態で20m以上の戦闘獣や50m以上の怪獣や超獣が相手では分が悪すぎる。だが、これから戦いは更に激化していく。そうなった時に大きさが違うからと言って戦えないとは言っていられない。
 それではブラックからブラックRXにパワーアップした意味がない。せめてサポートが出来る位にはならなければいけないのだ。
 その為にはRXにパワーアップしただけでなく更なるパワーアップが必要なのだ。
 だが、言う程簡単な事ではない。蟻が象に勝てる筈がないのだ。
「気持ちは分かるが、はっきり言う。改造人間で怪獣や巨大ロボットを倒すのは無理だ」
「くっ……」
 分かってはいたがそれは辛い答えであった。だが、何かしら方法が欲しかった。攻めて勝てないまでも彼等の力になりたい。その思いが光太郎にはあったのだ。
 その思いを立花は感じ取っていた。
「だが、お前さんなら……仮面ライダーブラックRXならばあるいは出来るかもしれん」
「それは一体?」
「仮面ライダーの最大の技。それはキックだ。そして、RXのキックは恐らくブラックのライダーキックより約6倍の威力がある。だが、それでは足りないんだ。大型の敵を倒すにはもっと強力にしなければならない。分かってはいるが。生半可な特訓じゃ出来ない事だぞ」
「覚悟は出来ています。立花さん、お願いします!」
「分かった。俺もそうまで言われたら引き下がれねぇ。やるぞ!」
 こうして、光太郎と立花は厳しい特訓に入った。来るべき決戦に向けて、更なる強さを手に入れる為に―――




     ***




 店の仕事を終え、戻って来たレオ兄弟の目の前では、満ち足りた顔をしている甲児とはやて。
 そして、呆れた顔をしているなのはとフェイト。更に何故か顔に手を当てて乙女っぽく泣いているシグナムの姿が其処にあった。
 一体自分達の居ない間に何があったのだろうか?
「ど、どうしたんですか? シグナムさん」
「あんたがそんな風に泣くなんて珍しいなぁ」
 ジンはあくまで傷つけないように尋ねるのに対し、兄のゲンは思った事を口にする。これだけで兄弟の差が出てしまう気がするのだが。
 それは良いとしておいて。ジンの問いにシグナムは泣きながら「私は、騎士の誇りを汚された。もう表立って歩く事など出来ない!」等と言っていた。
 何の事なのかさっぱりなのであった。事情を聞こうと思ったのだが現在泣いているのはシグナムだけだし別に大した事じゃないのだろう。
 そう勝手に結論づける事にした二人。
 だが、何時までもこの調子では流石に気まずい。何時までも甲児とはやてはにやけて顔で写真を眺めているし、なのはとフェイトは呆れた顔をしているし、シグナムは泣きっぱなしだし。
 しかも何故か光太郎と立花の二人が居ない。このままだとかなりカオスな世界になってしまう。何とかしなければならない。
「と、とりあえずテレビでも見ますか?」
 流石は空気を読む事に定評のあるジン。このまま気まずい空気ではいけないとばかりにリモコンを片手にテレビの電源を入れる。電源の入る音と共にテレビ番組が報道される。
 しかも、丁度ニュース番組がやっていた。
《番組の途中ですが、此処で緊急速報をお伝えします。突如、東京湾付近で異常な高さの波が確認されました。専門家の話によるとこの高さの波は自然では出来ないと推測され、一説によると怪獣が起こしたと推測されまして……》
 ニュースで報道されていたのは異常な高さの津波報告だった。
 正確な高さは分からないのだが、画面から見る限り東京都市を軽々と飲み込んでしまえる程の高さの波が確認できた。
 このまま波が直撃すれば、東京は水浸しとなってしまうだろう。
「に、兄さん! これは、まさか―――」
「あぁ、間違いない! 奴が今度は地球を狙って来たんだ!」
 そんな中、ジンとゲンの兄弟が戦慄した顔をした。
 二人の顔色が明らかに何時もとは違う強張った顔をしていた。
「お、おいどうしたんだよ二人共?」
「二人共凄い顔怖いよ? 一体どうしたんですか?」
 甲児となのはの二人がゲンとジンの兄弟の顔を察知し尋ねてきた。
 普段の二人とは違うとても殺気づいた顔つきだった。
「すみません、皆さん。此処へは僕達が行って来ます」
 質問に答える事すらなく、ジンの一方的な言い分にその場に居た一同は驚かされた。控えめなジンとは思えない言葉だったからだ。
「おいおい、お前等だけで行く気かよ? 俺達も一緒に行くぜ」
「いや、此処は俺達に行かせてくれ甲児。この津波はかつて俺達の星を滅ぼしたのと同じ現象なんだ」
「同じ現象? それってつまり―――」
「そうだ、俺達の星を滅ぼしたあの悪魔がこの星にまで来たんだ。絶対に奴等の好きにはやらせない」
 ゲンの怒りがハッキリと見て取れる程だ。二人は他のウルトラマンとはまた別の星出身と聞いていた。
 だが、その故郷の星は凶悪な侵略者の手により滅ぼされ、二人は僅かに生き残った者達らしい。
 そして、互いに離れ離れとなりながらも、こうして地球で再会する事が出来たのだ。
「どないしよう? 甲児兄ちゃん」
「どないしよう……っつったってなぁ」
 二人の言い分に甲児達はすっかり困り果ててしまった。一体どうしたら良いのか?
 こう言う時には人生の先輩などが居ればその人に聞くのが一番なのだが、生憎光太郎と立花のおやっさんの二人は席を外している現状。
 答えは自分達で見つけるしかない。
「分かったよ。けど、やばくなったら俺達を呼べよ。すぐに駆けつけてやるからな」
「有り難う。俺達のわがままを聞いてくれて」
 甲児の言葉に感謝を述べつつ、ゲンとジンは即座にアミーゴを出て行った。
 しかし、此処からどうやって東京湾へ行くつもりなのだろうか?
 二人はウルトラマンになれるとは言え、レオもアストラも地球では僅か2分40秒程度でしか居られない。
 それに、あの二人は確か運転免許を持っていなかった筈。
 まさか、徒歩で向ったのか?
 どうでも良い事に疑問を感じる一同。
 そんな時、先ほどまでニュースを映していた画像が突如荒れ出し、ついには完全に砂嵐状態となってしまった。
 部屋中に砂嵐の荒れ狂う音が響き渡る。
「なんだなんだ、故障かぁ?」
 疑問を感じながらも甲児はテレビの側面に向かい平手を放ちだす。古来より機械はこうする事で直ると言われているが、実際にはそれは迷信に過ぎない。
 壊れた機械は正直に修理に出しなさい。
「あの、甲児さん……そんな事したら壊れちゃいますよ」
「大丈夫大丈夫。機械ってのはこうすりゃ直るってもんだよ」
 心配するフェイトを他所に甲児は仕切りにたたき続ける。アミーゴのテレビはいまや懐かしき大型のブラウン管のテレビだ。
 地上デジタルのこの時代にブラウン管のテレビで映るのか!?
 とお思いの人も多いが其処はツッコミしないで頂きたい。
「あらら~、甲児兄ちゃんはテレビ叩き幕ってまうし、ゲン兄ちゃんもジン兄ちゃんもどっか行ってしもうたし、シグナムは未だに立ち直れてないし。ええ加減機嫌治しぃやシグナム~」
「うぅ……あ、主がそう仰るのでしたら……」
 主の命令は絶対。それが守護騎士の宿命だ。
 そう自分自身に言い聞かせ、無理やりにもシグナムは機嫌を立ち直らせた。
 が、余り立ち直れて居ないらしく目元に隈が出来ているし、涙を流した箇所が乾いてゴワゴワになっている。
 相当泣きじゃくったのだろう。
「お、映ったぞ!」
 そうしていると、甲児が突然声を張り上げた。見ると先ほどまで砂嵐しか映っていなかった筈のテレビ画面に徐々に映像が映り始めていたのだ。
 まさか本当にあんなので直ったとは驚きだ。
 そう思いながらテレビの画面に注目する一同。だが、映ってきたのは全く別の映像であった。
【あ~、あ~、マイテス、マイテス……音声に問題はないようだな。映像もちゃんと映ってるな?】
 其処に映し出されたのは見たことのない宇宙人であった。まるでコントでもするかの様にマイクテストなんかしているのが妙に笑える。
 そう思いながらその映像に映し出されている宇宙人を見ていた。
「何だろう、これ?」
「おいおい、ニュースの後はコント番組とかかぁ?」
 意外とコミカルな宇宙人だ。
 そう思いながらも皆はテレビに映し出されている宇宙人に見入っていた。
 だが、まるでコント番組と思われていたその宇宙人は、思いも寄らない発言をしてきたのだ。
【ウルトラマンに告ぐ。今すぐに我々ナックル星人の前に現れて我々と戦うが良い! さもなくば更に多くの人が死ぬ事になるぞ!】
「な、何だって!?」
 ナックル星人と名乗る宇宙人が放った言葉は衝撃であった。
 ウルトラマン。人が死ぬ。
 これは明らかな侵略者の言葉だった。
 そう、これはウルトラマンに対する挑戦状だったのだ。
「くそっ、こんな時にゲンもジンもどっか行っちまったし!」
「私達が行こうよ。このままじゃ多くの人が死んじゃうなんて嫌だよ!」
「当たり前だ! そんなこたぁ俺達がさせねぇ! 名指しで喧嘩を売ってきたんだ。利子つきで買ってお土産つきで追い返してやらぁ!」
 何時に無くいきり立つ甲児。如何に勤勉になろうとも、如何に頭が良くなろうとも、本来の性質は変わらないらしい。
 其処がまた甲児らしいと言えばらしいのだが。
「盛り上がるところ悪いが、その宇宙人が何処に居るのか、検討はついてるのか?」
 盛り上がる甲児達を横からシグナムが尋ねる。それに対し、甲児を筆頭にして、なのは、フェイト、はやての一同は声を揃えた。
「あ」と……。




     ***




 場所は案外すぐに見つかった。一通り映像を見終わった後、ナックル星人の口からご丁寧に場所を告げられたのだ。
 散々悩みまくったのがまるで馬鹿みたいであった。
「畜生、あの野郎何処まで俺達の事おちょくりゃ気が済むんだ!」
 当然甲児にとっては良い気分じゃないのは火を見るより明らかであったりする。マジンガーZを操縦しながらも未だにその怒りは収まる様子を知らないでいた。
「甲児さん、いい加減機嫌直したら?」
「バーロィ! 天下の兜甲児様があそこまでおちょくられて黙ってられるかってんだ! あのお気楽宇宙人め。今度出くわしたら顔面に鉄拳を叩き込んで梅干にしてやらぁ!」
 腕をボキボキと鳴らしながら頬に青筋を浮かべて呟いている。
 その顔を見るに明らかに怒り心頭中だってのが分かる。
 が、皆分かっての通り現在甲児はマジンガーZを操縦中である。
 従って、操縦桿を手放してしまったが為にマジンガーZのバランスは大きく崩れてしまい半回転してしまいだしたのだ。
 当然その中に乗っている者達は溜まったものじゃない。
 生身でシェイクをされている気分だ。グルグル回りだしその中でキャノピーや壁などに叩きつけられる。
「な、何やってんですか甲児さああああん!」
「甲児兄ちゃんのアホ! 何操縦桿手放しとんねん!」
「わ、悪ぃ悪ぃ……ところでシグナムさん。胸退けてくれない? 流石に良い気持ちなんだけど目の前が見えないしさぁ」
 見れば、甲児の顔面にシグナムの胸が押し当てられてる状態になっていた。
 甲児としてはラッキーな状態だが、当のシグナムにしてみれば冗談じゃない。
「なっ、ききき、貴様ああああ! 一度ならず二度までも私を辱めるつもりかあああああああ!」
 顔を真っ赤にして怒鳴り散らすシグナム。狭いパイルダー内な為に甲児だけではなく、一緒に乗っているはやて達もその轟音に耳を塞ぐ始末だったりする。
「シグナム~~、怒鳴るのは勝手やけんども場所を考えてから怒鳴ってや~」
「も、申し訳ありませんでした」
 烈火の騎士が小学生に叱られて凹む。
 かなりシュールな光景だった。
 そうこうしている内にマジンガーZが大地へと降り立つ感覚を感じた。
 それに呼応して誰もがパイルダー越しに映る町の光景を目の当たりにする。
 其処は見るも無残な姿だった。
 まともに建っている建築物など一つも残っていない。見える物全てが瓦礫の山となっており、目も当てられない光景となっていた。
「酷い……町が滅茶苦茶」
「許せねぇ……今度と言う今度は心底はらわたが煮えくり返ってきたぜ!」
「甲児の言い分も分かる。この光景は私も怒りが込み上げてきた程だ」
 誰もがその光景を前にして怒りを露にしていた。
 誰もが挑戦状を叩きつけて来たナックル星人に対し怒りの思いを募らせていく。
 あの瓦礫もかつては町があり、人が住み、家族が出来、幸せを分かち合っていたのだろう。
 その幸せを無情にも侵略者達は奪い去った。それが許せなかった。
「行きましょう甲児さん! そのタックル星人を見つけ出して皆で倒しましょう!」
「フェイトちゃん、それを言うならナックル星人だよ」
「どっちでも良いさ。ナックルだろうがタックルだろうが纏めてぶちのめしてやる……ん?」
 ふと、甲児は何かを見つけた。瓦礫の山と化し、本来其処には人一人居ない筈の町。
 その町に、ポツンと映る人影があった。
 オレンジ色の制服を着た青年だ。ひび割れた道路のど真ん中に倒れているのが見える。
 もしや怪獣にやられて負傷したのでは?
「お前等、悪いが下に居る人の元に向ってくれ」
「誰か倒れてたんですか?」
「人が倒れてる。此処からじゃ分からないが下手するとヤバイかも知れない。生憎俺はこの状態だからお前等なら頼めるだろ?」
「任せて!」
 キャノピーが開き、其処からなのは達は飛び出した。と、言ってもデバイスのないなのははフェイトに抱えられて地面に降りたのだが。
 デバイスを無くし、変身能力を失った今のなのはは常人の能力しかない。
 だが、それでも誰かの役に立ちたい。その強い思いがなのはを突き動かしているのだ。
「しっかりして下さい! 大丈夫ですか?」
「う、うぅ……」
 倒れていた青年に近づきそっと尋ねる。遠目からでは見えなかったが、かなり負傷しているようだ。体中に浮き彫りになる傷が何とも痛々しさを物語っていた。
「くそっ、こんな時にシャマルが居れば治療出来たと言うのに」
「ない物ねだりしとらんで早く手当てするで」
 制服を脱がそうと青年を仰向けに転がす。その際に青年の顔を見る事が出来た。
 其処に倒れていたのは、郷秀樹だった。
 もう一人のウルトラマンこと、郷秀樹だったのだ。
「ご、郷さん!」
「知り合いなの? フェイトちゃん」
「う、うん! でも、何でこんな酷い怪我を?」
 郷秀樹は数日前に起こった第二次日本攻略作戦の折、進撃してくる怪獣軍団に対しグレート、ゲッターと共に迎撃に当った。
 だが、それを最後に連絡が取れず仕舞いになっていたのだ。
 その郷が何故こんなにボロボロの状態で倒れているのか?
 疑問は尽きなかった。
【出て来いウルトラマン! 出てきて我々と戦うが良い!】
 突如、声が響いてきた。先ほどテレビで聞いたのと同じ声だった。
 声がしたのは遥か頭上だった。今居る位置からかなり離れた位置の遥か上空にそれは居た。
 白い体毛に覆われた体に黒い顔と赤い宝玉を取り付けたような顔をしたナックル星人が上空に浮かんでいた。
 そして、そのナックル星人の手には何かが持たれていた。
 それは人、それも子供だった。
【どうしたウルトラマン? 出てこないのならば、ガキ共を一人ずつ殺すぞ。それが嫌なら出て来て我々と戦え】
 手に持っている子供の泣き声がこちらまで聞こえて来る。泣き声の様なのが聞こえてきた。
 声色からしてまだ年端もいかない子供であった。その子供を無情にも殺そうと言うのだから。
「フェイトちゃん、すぐに助けられないの?」
「駄目、あれだけ距離があったら私でも難しいよ! それに宇宙人に掴まれてるんじゃ尚の事難しいし」
 最悪であった。流石のフェイトでもあれだけ距離が離れていては近づくにも時間が掛かる。第一それまで魔力が保たない。
 それに、いざ間に合ったとしてもその前に宇宙人が人質の子供達を握り潰してしまっては元も子もない。
「う……い、行かなければ……僕が、行かなければ……」
 突如、郷が立ち上がりナックル星人の元へと歩き出そうとしだす。
「ちょっと待て、何処へ行く気だ?」
「僕が、僕が行かなければ……僕が行かないといけないんだ!」
「無理をするな! お前一人で何が出来る? 奴はウルトラマンを呼んでるんだぞ!」
「そうだ、僕が……そのウルトラマンなんだ!」
 フェイト以外の誰もが衝撃を受けた。郷秀樹があのウルトラマンだったと言う事に。
 そして、ナックル星人がそのウルトラマンを呼んでいると言う事に。
「待ちやがれこの性悪野郎!」
 だが、其処へ甲児の操るマジンガーZが躍り出た。あそこまでされて黙って居られる訳がない。
 そして、それが甲児ならば尚更だ。
【何だ人間か? 生憎だが私は貴様等下等生物に構っている時間はないのだ。命は助けてやるから何処へでも消えるが良いわ!】
「ざけんじゃねぇ! 散々人に喧嘩売っといてどの口が言いやがる! ウルトラマンの出る幕じゃねぇ! 俺がてめぇを叩きのめしてやらぁ!」
 Zの太く黒い指が上空に居るナックル星人を指差す。それには流石にナックル星人も無視できなくなったようだ。
 やれやれと首を左右に振りながらもZを見下ろす。
【面倒な事だ。仕方ない、相手してやるか! 出て来い、ブラックキング!】
 ナックル星人の命令と共に地面から突如それは姿を現した。
 全身黒い体の巨体に雄雄しき角を供えた怪獣であった。
「何? 怪獣を出しやがった!」
【やれ、ブラックキング! その目障りなロボットを片付けろ!】
 ブラックキングが諸手を挙げて雄叫びをあげる。天を貫くかと思われる程の怒号であった。
 マジンガーZの約二倍はある巨大な怪獣が今、Zの前に現れたのだ。
「へっ、上等だ! 掛かって来やがれ」
【馬鹿め、吠え面をかかせてやれ】
 残骸となった町でマジンガーZとブラックキングが激しくぶつかりあった。
 互いに距離を詰めてレスリングの様な組合を始めた。
 Zの両足が徐々に後方に向けて後退しだす。パワーアップしたマジンガーZがパワー負けしている。
 甲児にとってこれは衝撃的であった。
(何て馬鹿力だ! あのキングジョーですら持ち上げたマジンガーのパワーに対抗出来るなんて!)
 マジンガーZは以前10体のキングジョーを圧倒した経歴があるのだ。
 しかしそんなマジンガーZすらもこのブラックキングは物ともしない程のパワーを持っているようだ。
「くそっ! 負けて溜まるかよぉ!」
 甲児は更にパワーをあげて挑む。だが、それでもこのブラックキングはびくともしなかった。
 恐ろしい怪獣だった。Zの腕が軋む音がしだした。超合金ニューZの腕を握り潰すつもりのようだ。
 そうはさせない。
「これでも食らえ!」
 Zの両目が輝いた。閃光と共に光子力ビームが放たれた。それは丁度怪獣の顔面に命中し怪獣の顔を焦がす。
 その際に両手が離れたので咄嗟に距離を開ける。しかし、それだけであった。
 ブラックキングには掠り傷一つついていない。かなり堅い体をしているようだ。
 そのブラックキングの口から真っ赤な熱線が放射された。
「うわっ!」
 即座にそれを回避する。地面が焼け焦げて溶けるのが見える。恐らくブレストファイヤーとほぼ同等の威力を持っているのだろう。
 もしくはそれ以上か?
【中々やるな人間。だが、こちらには人質が居る事を忘れるなよ!】
「うっ!」
 ナックル星人が掴んでいた人質を目の前に突き翳す。そうされてはマジンガーZは微動だに出来ない。少しでも動けば人質が殺されてしまうからだ。
【我等に挑んだその勇気は認めてやる。だが、勇気と無謀は違うと言う事をブラックキングにたっぷりと教えて貰うが良い!】
 動けないZに向かいブラックキングの鉄拳が飛び込んできた。20tのマジンガーZを悠々と上空へと持ち上げた後、地面へと叩き落す。
 上昇と落下の衝撃が揃って中に居る甲児に襲い掛かってきた。
 内臓に衝撃を受けた為か、口から血を吹き出しむせ返る。並の人間であれば一溜まりもないだろう。
 実際甲児自身もかなり苦しんでいる。
 そんな甲児とマジンガーZに向かいブラックキングが悠々と歩み寄ってきた。力の差は歴然だ。後はこのマジンガーZを鉄くずに変えるだけの問題である。
「このままじゃあのロボットが倒される。此処は僕が行かないと!」
「待って下さい郷さん! それじゃ郷さんが殺されますよ!」
 戦いに挑もうとする郷をフェイトが止めた。マジンガーで勝てないほどの強敵だ。果たして今の郷が、ウルトラマンが勝てる相手なのだろうか?
「退いてくれフェイトちゃん。僕が行かないと彼が、あのロボットが破壊されてしまう」
「でも、郷さんが殺されますよ!」
「それでも僕は行かなくちゃならない。兄さん達が愛し、守ったこの星を侵略者達の手に渡す訳にはいかないんだ!」
 状況は正に絶望的だった。マジンガーでも太刀打ち出来ない怪獣。
 傷ついたウルトラマン。
 そして凶悪な宇宙人の手に囚われた人質。
 不利になる材料が此処まで揃ってしまったのでは、勝ち目など稀有な物だった。
 正にその刹那だった。
 上空から高速で何かが迫るのが見えた。
 それは星の様な輝く光だった。
 その光はやがて形を成していく。
 それは、真っ赤に燃えるような巨大な二人の巨人だった。どちらも見覚えのある光の巨人であったのだ。
「あ、あれは!」
 現れたその巨人を見て、なのはは声を上げた。知っている。私はあの巨人を知っている。
 そして、あの巨人が再び戻って来るのを、誰よりも待っていたと言える。
【ぐおっ!】
 巨人の一人はナックル星人を突き飛ばし、捕まっていた人質をその手に掴み取る。その間でもう一方の巨人はブラックキングに上空から蹴りを叩き込み、押し倒した後でマジンガーZを抱え上げる。
「う、ウルトラマン! ウルトラマンなのか?」
(待たせてしまったね、甲児君。僕達は帰って来たんだ)
 ウルトラマンから声が響いた。テレパシーだ。
 しかし、その声は聞き覚えがあった。
 ハヤタの声だった。ハヤタが、ウルトラマンが今甲児の目の前に居たのだ。
 そして、人質を助けたその巨人こそ、もう一人の赤い巨人、ウルトラセブンだったのだ。
(待たせたなジャック。私達も共に戦うぞ!)
「兄さん! 兄さん達が来てくれたんだ!」
 郷は感動した余り目から涙を浮かべる。しかし、その涙を強引に拭い取り、その目に闘志を燃やす。
 今は涙を流すときではない。怒りの炎を胸に抱き邪悪な侵略者達を叩きのめす時なのだ。
 傷ついた体を湧き上がる闘志で突き動かし、右手を天に掲げる。
 光が郷と包み込み、その光はやがて巨大な光の巨人を生み出した。
 ウルトラマンに酷似した姿を持つもう一人のウルトラマン。
 その名はウルトラマンジャック。
【ば、馬鹿な! 何故ウルトラマンとウルトラセブンがこの場に来たのだ! 貴様等は光の国に帰った筈!】
(そう、そして私達は帰って来た!)
(貴様等侵略者達からこの青い星を守る為に! 仲間達のピンチを救う為に、我等は帰って来たんだ!)
 雄雄しく、力強くそう告げる。
 ウルトラマンが、ウルトラセブンが、今帰って来たのだ。
(に、兄さん……)
(ジャック、私のエネルギーを分け与える。そうすれば戦える筈だ)
 ウルトラマンが自身の中に宿る力を光に変え、ジャックに流し込む。流れ出た光がジャックを包み込み、傷ついた体を癒していく。
 体中に力が漲ってくる。カラータイマーが赤い点滅から青色へと変わる。
(ジャック、これを使え! これを用いればブラックキングとも互角に戦える筈だ)
 セブンがそう言いジャックの左手に装着させたのは金色に輝くブレスレットだった。
(これは?)
(お前の力になってくれる物だ。それを用いて侵略者達と戦うんだ!)
(はい!)
 新たな力、ウルトラブレスレットを受け取り、ジャックは頷く。
 その頃、ナックル星人とブラックキングが揃って起き上がりだす。
【おのれ、多少計画に狂いはあったが、所詮貴様等ウルトラマンが揃おうともこのブラックキングに敵いはしまい!】
(それはどうかな? ナックル星人)
(私達兄弟を甘く見るなよ!)
 夕日の照らす戦場で、ナックル星人とブラックキング対ウルトラ三兄弟の戦いが行われた。
 ブラックキングのパワーは脅威だった。だが、それも三兄弟の連携の前では力だけの存在に変わってしまっていた。
 セブンのウルトラ念力が。ウルトラマンの経験豊富な格闘術が。そして、ジャックのブレスレットがブラックキングを追い詰めていく。
【くっ、おのれぃ! 狙いをジャックだけに絞れ! 奴は瀕死の筈だ! 今なら簡単に殺せる筈だ!】
(僕を舐めるなよ! ナックル星人!)
 ブラックキングが動くよりも前にジャックが動いた。
 怪獣の巨体を軽々と頭上に持ち上げ、そのまま上空へと放り投げた。
 飛行能力を持たないブラックキングはそのまま自由落下の如く地面に向けて真っ逆さまへと落ちていく。
 其処へ上昇してきたジャックの手刀が炸裂した。
 ブラックキングの首が綺麗に切断され、地面に落下する。それと同じくしてブラックキングの体が地面に舞い降り、轟音と共にその巨体は地面に沈んだ。
 残るはナックル星人だけだ。
【ひ、ひぃぃ!】
(逃がさないぞナックル星人! 貴様に殺された罪無き人々の仇! 思い知れ!)
 逃げ腰になるナックル星人を背後から掴み取り、そのまま上空へと飛翔する。遥か上空に差し掛かった所で、ナックル星人を脳天から地面へと放り捨てる。
 ナックル星人もまた無様に地面に叩きつけられる。如何に凶悪な異星人と言えどもこの技に耐えられる筈がなかった。
 瀕死の状態となったナックル星人に向かいジャックが歩み寄る。
【フフッ、これで勝ったつもりのようだな、ウルトラマン……だが、貴様等は既に我等の張った罠に掛かっているのだ】
(何!?)
【いずれ、いずれ星間連合全軍が、ヤプール様がこの星を制服する! 幾ら足掻こうとも貴様等に勝ち目はないのだ! フハハハハハ!】
 高笑いを浮かべるナックル星人。その後、その体は淡い光に包まれ、やがて消え去ってしまった。
 戦いには勝利した。だが、最後に言い残したナックル星人の言葉が妙に気になる。
 一体何を言いたかったのだろうか?
 罠とは一体?
 謎が多く残るが、それ以上に大きな戦果が目の前にあった。
 それは、かつて地球を守り、共に戦い抜いてくれた心強い光の巨人達であった。
 その名をウルトラマン、そしてウルトラセブン。
 今、この二人の巨人が再びヒーロー達の前に現れてくれたのである。
 だが、こうしている間にも侵略同盟の恐ろしい魔の手は刻一刻と迫って来ている。
 人類の自由と平和を守る為に、ヒーロー達の戦いはまだまだ続くのであった。




     つづく 
 

 
後書き
次回予告

東京湾へ向ったレオとアストラ。その二人を待っていたのはマグマ星人と凶悪な双子怪獣であった。
双子怪獣の繰り出す連携攻撃に窮地に立たされる兄弟。
そして、星間連合が放つ罠が、ヒーロー達に迫る。

次回【東京沈没作戦】お楽しみに 
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