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魔弾の射手

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第三幕その五


第三幕その五

「神なぞ滅んでしまえ!貴様のせいで俺は地獄に落ちなければならないのだ!」
 それが最後の言葉であった。カスパールは最後に叫ぶと恐ろしい顔を凍りつかせたまま息絶えた。ザミエルはそれを見届けると姿を消した。その後には無気味な瘴気が漂っていた。
「今のが魔王ザミエル」
「それに連れて行かれたということは」
 彼は悪魔に魂を売っていたのだ。
「あれが死の際の言葉だというのか」
「神を呪うとは」
「元々そういった男だったということだ」
 クーノがここでこう言った。
「そして今天罰が下ったのだ」
「天罰が」
「そうだ。悪魔に魂を売ったからだ。だからこそ神さえも呪った」
「はい」
「呪われた男だ。まさかこの村にこの様な男がいたとは」
 オットカールは嫌悪を露にしていた。
「その男の死体を運び去れ。そして狼谷に捨てるのだ」
「はい」
 すぐに数人の男が動いた。
「悪魔に魂を売ったのだ。そうした輩にはあの谷こそが相応しい」
「わかりました」
 こうしてカスパールの死体は運び去られた。だが問題はこれで終わりではなかった。
「マックスよ」
 オットカールは険しい顔で彼に声をかけた。
「はい」
 マックスは青い顔をしてそれに応える。
「話はまだ終わってはいない」
「はい」
「謎は解かれてはいないのだ。それはそなたの口からわかることだ」
「はい」
「ありのままを話すがよい。わかったな」
「わかりました」
 彼はわかっていた。全てを諦め観念していた。
「それではお話します」
「うむ」
「先程私が撃ったあの弾はカスパールより貰ったものです」
「何と・・・・・・」
 それを聞いて皆絶句した。
「あのマックスが」
 そして誰もが驚いていた。
「続けよ」
 オットカールは彼に話を続けさせた。
「誘惑に負け彼と共にあの魔王の力を借りました」
「狼谷でか」
「はい」
「あの谷に何がいるのかわかっていたうえであろうな」
「はい。そして今日撃った四つの弾丸を手に入れたのです」
「その言葉、偽りではないな」
「はい」
 マックスは自分の言葉に嘘がないことを述べた。
「全て真実でございます」
「そうか、わかった」
 カスパールは全てを聞き終えた後であたらめて頷いた。
「マックスよ、そなたを追放とする。よいな」
「えっ・・・・・・!」
 それを聞いたアガーテとクーノが声をあげた。
「再び私の治めるこの国に入ってはならん。よいな」
「はい」
 マックスは口ごたえすることなくその言葉に頭を垂れた。
「わかっております」
「お待ち下さい」
 だがここでアガーテとクーノが間に入って来た。
「これは何かの間違いです」
「そうです、魔がさしたのです」
 二人はそう言ってマックスを庇う。
「どうかお慈悲を。彼を許して下さい」
「駄目だ」
 だがオットカールの態度は頑なであった。
「魔王の力を借りた男を許すわけにはいかん」
「そこを何とか」
「お願いします」
 二人は必死に懇願する。周りの者もそれに心を動かされた。
「侯爵様」
 彼等もオットカールに声をかけてきた。
「お願いです、ここはお怒りをお収め下さい」
「そうです、お慈悲を」
「法を曲げるわけにはいかないのだ」
 だがオットカールは人としてよりも君主としてのあり方をとった。
「魔王の力を許せばどうなる?この国は悪魔が支配することになるのだぞ。それでもよいのか?」
「それは・・・・・・」
 これには反論できなかった。彼等も沈黙するしかなかった。だがここで質素なローブに実を纏った老人が出て来た。見れば白く長い髭を生やしている。
 
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