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ハイスクールG×D 黄金に導かれし龍

作者:ユキアン
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第10話




「合宿?」

「そうよ」

朝早くからオカルト研究会のメンバーが私の自宅を占領していた。

「イッセー、簡潔に説明してくれ」

「特例で九日後にレーティングゲームをやることになった。負けたら部長は焼き鳥とすぐに結婚」

「焼き鳥?」

「フェニックス家の三男で、ナンパやろう。下僕は全部女の子で愛人。リアス部長を物の様に見ている」

「そこに愛は」

「あるはず無いでしょ!!」

「ふむ、話は分かった。だが、私がレーティングゲームに出ればそれで終わりだろう。そうでなくてもイッセーが出ればそこそこの相手に負ける事も無いはずだが」

「それじゃあ、私が納得出来ないのよ。私の評価にも関わってくるわ。下僕が居なければ何も出来ない。そんな評価がされればグレモリー家の名を落とす事になるわ」

「なるほど。では、私は不参加ですか。なら、なぜ私の自宅に来ているんですか」

「いや、オレの修行は双葉じゃないと出来ないから。それに実戦経験は双葉が一番多いだろうから指示を仰ぎに」

ふむ、オカルト研究会メンバーの修行か。間違ってはいないな。部長もそれ位なら納得出来るのか何も言わない。
さて、イッセーに関しては予定より早くなったが、あの修行を行なって黄金クラスに成長させるか?九日もあれば時間は十分だ。
他のメンバーはそうだな。とりあえずは基礎固めだろう。部長は少しだけ違うが。

「とりあえずは、木場と朱乃さんと小猫さんは基礎固めと、駒の特性を伸ばす方向で鍛えて下さい。木場は早さと魔剣創造で作れる剣の強化、朱乃さんは魔力量の増大と魔術の効率化、小猫さんは打たれ強さと一撃の威力を鍛えて下さい。部長は鍛えるよりも過去のレーティングゲームの映像を見続けて下さい。それで使える戦術や王として必要な事を確認して下さい。レイナーレは聖母の微笑での治療の強化、出来る限り回復速度を上げて、その次に遠隔でも治療が出来る様に訓練するように。こちらはこのレーティングゲームが終わってからも続けること。最後にイッセー、お前は予定を繰り上げて黄金クラスに到達する為の修行を受けてもらいます。かなり過酷な物になる。嫌なら、拒否してもらっても構わない。イッセーは普通に鍛えるだけでもいずれ黄金クラスになれる。そこだけは理解する様に」

「……双葉、九日で黄金クラスまで行けるのか?」

「ああ、確実に。お前は最強の一角に名を連ねる事が出来る」

「受けさせてくれ」

「分かった。では、その前に幻朧魔皇拳!!」

この修行を行なう為にはドライグが邪魔になるので限定的にドライグの事を忘れさせる。

「双葉、今何をしたんだ」

「ただの準備だ。修行の内容だが、楽ではあるが過酷だ。この薬を飲むだけで良い。死ぬ様な毒ではないが、特殊な毒だ。解毒剤はレイナーレに渡しておく。だが、イッセーが望まない限り絶対に飲ますな。それだけだ」

用意しておいた薬の入った小ビンをイッセーとレイナーレに渡す。

「飲むだけで良いんだな」

「飲んで耐えれば良いだけだ。瞑想しておくのが一番良いがな」

「分かった。朝早くからすまなかった」

「そうそう、双葉には言い忘れてたけど学校の方は気にしなくても良いから。ちゃんと公欠になるように手配しておいたから。それじゃあね」

部長はそう言って何処かに転移していった。
さて、とっととイッセーの鋼鉄聖衣を完成させなくてはな。今回の修行でイッセーは黄金クラスにまで至れるのか、それとも挫折するのか、それとも一足飛びに駆け上がるのか。どうなるか楽しみにしていよう。







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今回の修行の場は部長の家が管理している別荘の一つで行なわれる事になった。皆は双葉の指示通りの修行をするようなのでオレも双葉に渡された薬を飲んで瞑想をする事にした。

「飲むだけで黄金クラスになれるか。やっぱり激痛が走ったりするんだろうか?」

「悩んでてもしょうがないでしょう。解毒剤も貰ってるんだし、試すしか無いでしょう」

傍にはレイナーレが居る。解毒剤を持たされている以上、危険があるかも知れないし、レイナーレの修行はどんな場所でも出来るからな。何かあった時の為に傍に居てもらっている。

「それじゃあオレがギブアップって言うまで絶対に解毒剤は飲ませないでくれよ」

「喋れない位に死にそうだったら飲ませるわよ。私はリアスよりもイッセーの方が大事だから。あんな男の婚約者だなんて同情はするけど、天秤で比べるまでもないわ」

「オレだってそうだ。だけど、出来る限りの事はする。これからもレイナーレと暮らしていく為に。だから力が要る」

今は、双葉がオレを守ってくれている。だけど双葉は悪魔になる気は無い。いずれは寿命で死んでしまう。聖闘士と言っても人間だ。悪魔に転生してから分かるようになったけど、人間はあまりにも脆い。そう長くないうちに双葉は戦えなくなる可能性がある。ドライグが言うには赤龍帝の篭手の過去の持ち主は常に闘争の中に身を投じる事になっている。その闘争にレイナーレも巻き込まれる。レイナーレを守る為には力が要る。双葉の様な何者にも屈しない力が。
オレは一気に薬を飲む。

「……不味い」

何とも言いがたい味に顔をしかめるけど、特に身体に異常は見られない。
あとは瞑想をしていろって言っていたから、とりあえず瞑想を行なう。自然体の状態で小宇宙を高めて維持する。これも特に異常が無い。あの薬は一体なんだったんだ?それに準備だとか言っていたのもなんだったんだ?
その薬の効果に気がついたのはそれからしばらく立ってからだ。遠くで聞こえていたはずの音が聞こえなくなっていき、組んでいる足の感覚が無くなり始めてからだ。異変に気付いて目を開ければ、すでに見えなくなっていた。おそらくは嗅覚と味覚も無くなっているか、無くなり始めているはずだ。くそ、レイナーレはトイレに行っていて今は居ない。今のオレの状況を伝える事が出来ない。まだ少しでも感覚が残っているうちに伝えなければ。そう思い、立ち上がろうとして転ぶ。たぶん転んだんだと思う。そう思ってしまう位に感覚が無くなっていた。床に手を着いているはずなのに、感触が全く感じない。身体は動いているはずなのに、動いている感覚がない。だから瞑想してろと言ったのかよ。とにかく、今はレイナーレにこの状況を伝えなくてはならない。その為には待つしかないな。再び、座り直して瞑想を再開する。
だけど、全然集中出来ない。オレは恐れているのか?震えが止まらない。何だよ、これ。5分も経っていないのに、さっきまで何とも無かったのに。感覚が無くなったことを理解するだけで、なんでこんなにも苦しいんだ。オレは今ちゃんと呼吸が出来ているのか?オレはちゃんと生きているのか?分からない、何も分からない。小宇宙が燃やせない。何もかもがオレから無くなっていく。

「あ、あああ、ああああああああああああああ!!」






~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


薬を飲んで瞑想を始めたイッセーの傍から少しだけ離れていると、イッセーが急に大声で叫びだした。

「イッセー、どうしたの!?」

慌てて部屋に戻ると、イッセーが暴れていた。だけど、私を助けてくれた時の様な力強さは無く、まるで迷子になった子供が泣きわめいている様な弱さが伝わってくる。というか床で暴れ回っている。立てないのだろうか?

「イッセー、イッセー!?」

ただ事ではないと感じて抱きしめる様に拘束する。私の腕の中でイッセーが暴れ続ける。こうなったのはおそらくあの薬が原因だろう。なら、解毒剤を飲ませれば。

「イッセー、少しだけがまっきゃぁ!!」

薬を飲まそうとした所でイッセーの手がぶつかり、解毒剤の入った瓶が割れる。

「しまった!!」

中に入っていた液体は全て流れ出てしまい、回収する事も不可能になった。

「くっ、イッセー!!しっかりして!!イッセー!!」

懸命に呼びかけてもイッセーは反応してくれない。

「どうしたのレイナーレ!!」

異変に気付いたグレモリーと姫島が部屋に現れる。

「急にイッセーが暴れだして、解毒剤も割れて零れてしまったの」

「ひとまず気を失わせるわ。朱乃」

「はい」

姫島がイッセーの首筋に軽く電撃を流して意識を奪う。これでとりあえずはイッセーが苦しむ事も無くなった。

「双葉に連絡を取るわ。薬の詳細と新しい解毒剤を貰わないと」

グレモリーと姫島が部屋から出ていくのを見送りながら私はイッセーを抱きしめる。聖母の微笑では解毒を行なう事は出来ない。折角、悪魔も堕天使も癒せる力を手に入れたと言うのに肝心な時に役に立たない。なんでなの、なんで私はこんなにも無力なの。

 
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