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万華鏡

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第二十三話 大阪難波その六

「乃木大将は普段は稗入れた御飯だったから」
「稗入れてたの」
「そう、稗ね」
 まさにそれをだというのだ。
「だから稗にしても粟にしてもいいのよ」
「食べてもいいのね」
「そう、だから食べてね」
「わかったわ、私麦とか入れたのも好きだし」
 母は前にも何度かそうした御飯を炊いている、彩夏はそれを食べてそのうえで気に入っていたのだ。それでこう言ったのである。
「それじゃあね」
「いい心がけよ。麦飯とかを食べるとね」
「いいのよね」
「玄米もいいけれど」
 これも話に出る。
「お父さんがあまり好きじゃないのね、あれは」
「固いからね」
「けれど麦飯とかは好きだから」
 それでだというのだ。
「そういうのにしてるの」
「十六穀とか」
「そう、そういうのにね」
「身体にいいし美味しいしね」
「時々そういうの食べないとね」
 身体によくない、それに夏バテだった。
 その夏バテに気をつける為だった、今日も。
「鴨とスープも食べてね。後枝豆も用意してるから」
「ビール用ね」
「けれどビールは飲まないでね」
「身体を冷やすから?」
「そう、だから焼酎とかワインにしなさい」
「じゃあ白ね」
 枝豆と一緒に飲むワインはそれになるのだった。
「そっちよね」
「そう、飲むのならね」
「ビールよりもなの」
「時々はいいけれど」
 ビールもだというのだ。
「けれどいつもになるとよくないから」
「それでよね」
「ワインか焼酎にしてね」
「お父さんとお兄ちゃんにもそう言ってるわよね」
「健康の為にね」
 全てがそれが為だった。
「気をつけてね」
「お酒を飲むのもいいけれど」
「お酒は百薬の長だけれどね」
 この言葉は事実だ、だがそれと共にだというのだ。
「百毒の長でもあるのよ」
「飲み過ぎはなのね」
「彩夏ちゃんは飲むから」
 八条町の人減らしくだ。この町では飲酒に関して年齢制限がかなり緩く誰もが飲んでいてそのせいでそうなっているのだ。
「だからね」
「気をつけないとね、自分でも」
「飲むお酒も考えてね」
「ビールよりもワイン」
「そう、そういうことよ」
「あと濁酒ってあるけれど」
 昔ながらの酒である。
「あれはどうかしら」
「濁酒ね。あれはね」
「甘いから飲み過ぎたら」
「糖尿になりやすいわよ、わかるでしょ」
「ええ」
「それに色々混ざってるから悪酔いしやすいから」
 飲み過ぎた次の日が清酒より辛いというのだ。二日酔いもその前の日に飲んだ酒によって随分と違うのだ。
「だから飲み過ぎないでね」
「飲んでも」
「そういうこと、わかったわね」
「うん、じゃあお酒は」
「程々か休肝日を決めて飲んでね」
「そうするね」
「じゃあ御飯出来たら呼ぶから」
 母は笑って娘に話す。
「それまではね」
「うん、自分の部屋にいるね」
 彩夏は母とそうした話をしてから自分の部屋に戻った。夏休みの彼女もそれまでと明るく陽気に日々を過ごしていた。


第二十三話   完


                 2013・2・7 
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