とある英雄の逆行世界
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幼年期編
第5章
帰省しよう~Part.1~
前書き
久々の更新になります。GW中ではありますがこの話は夏休みの話という……季節はずれも甚だしいですねはい。
では楽しんで頂けると幸いです。
美琴達が学園都市に来てもう4ヶ月がすぎさろうとしていた。時期としては海開きも済み夏本番、学園都市の学生たちも夏休みということで帰省する者、学園都市に残り能力開発や実験に精を出す者などそれぞれが思い思いの夏休みを過ごしていた。
夏休みに入ってから1週間ほどたったその日、ある電車の中にお互いの肩に寄りかかるようにして眠っている小学生2人の姿があった。
「――んっ、寝ちゃってたみたいね」
電車の振動に反応したのか少女――御坂美琴はゆっくりとその瞼を開ける。隣に目を向けると幸せそうに眠る少年――上条当麻の横顔が至近距離にあり、美琴は頬を少し桜色に染め、見る者を魅了するような幸せそうな微笑みを浮かべる。美琴としては永遠にこうしていたい、そんな気持ちさえ浮かんでくるような状況ではあるが電車に乗っている以上そう言うわけにもいかないわけで…
――次は~~です。降り口は~~――
…車内に流れるアナウンスが目的地への到着を告げていた。
美琴としては名残惜しいのだが電車を乗り過ごすわけにもいかず、しぶしぶ当麻を起こすことにする。
「ほら当麻…起きて、もう着くわよ」
「ぅん…ふゎ、みこと?」
「おはよ当麻。良く寝てたわね」
「おはよう…あ、もう着くのか」
当麻は美琴に軽く笑いかけ、その後に外の景色を確認する。窓の外には当麻も美琴も見慣れた景色が広がっていた。
「うん、だから早く下りる準備しよ?乗り過ごしたら大変だしね」
「了解です。みことセンセー」
目的地はそれぞれの家、そう2人は初めての里帰りをしていた。
「みこと、迎えには母さんがきてくれるんだったよな?」
「うん、そうよ。ということで詩菜さんをさがしましょ」
電車を降りると二人は手を繋いで歩いていた。荷物は背中に背負った小さめのバックがそれぞれ1つずつだけ、後の荷物は美琴の提案で先に実家のほうへ送ってしまっている。
詩菜は駅の改札を出てすぐの所で待っている、とのことだったので改札付近で2人できょろきょろとしていると声をかけられた。
「当麻さん、美琴さんこっちですよ」
声のしたほうに目を向けると詩菜が見る者を安心させる微笑みを浮かべながらこちらに向かって手を振ってくれていた。
「当麻、こっち!」
「おう、っておわっ!?」
2人が詩菜に向けて歩き出しと、すぐ近くを歩いていた人の足に当たった空き缶が当麻の足元に来る。もちろん不幸体質の当麻がそれを避けれるわけもなく空き缶を踏んで転ぶはずだった。…2人の手が繋がれていなければの話だが。
「っと大丈夫、当麻?」
「おかげさまで。ありがとなみこと」
バランスを崩しそうになった当麻を美琴が支えることで、当麻は転倒を免れていた。
外を歩くときは手を繋ぐ、これは当麻と美琴の中で自然にできた約束事だった。別に2人が手を繋ぎたいから繋いでいるわけではない(半分くらいはその理由もあるが)、要は当麻の不幸が起きた後に対処しやすくするのが目的だ。当麻にとって不幸だと感じる機会が少なくなるし、美琴と手をつなげる、美琴にとっては当麻と誰の目をはばかることなく手をつなげるまさにWIN-WINの関係というやつだ。
当麻が躓いたのに気が付いた詩菜が駆け寄ろうとしたのだが2人の様子を見てゆっくりと近づいていく。その表情は心なしか安心しているようにも見えた。
「当麻さん、美琴さん“おかえりなさい”」
「ただいま、母さん」
「ただいまです、詩菜さん」
2人の“ただいま”を聞いた詩菜は優しく2人を抱きしめて笑みを浮かべる。ついでに美琴のほうを向いて爆弾を投下するのも忘れなかった。
「美琴ちゃん、私のことは“お義母さん”てよんでくれてもいいのよ」
「い、いやそれはまだ早いというかなんというか当麻とは“まだ”そんな関係ではないわけでして確かに“呼びたい”ですけど心の準備とかいろいろできてないですから呼ぶのはためらわれるといいますか――
「私がお義母さんじゃいやかしら…」
――…嫌じゃないです。むしろ嬉しい…です」
詩菜が投下した爆弾に対して必死に処理をする美琴に詩菜は爆弾をさらに投下する。さびしそうな声で詩菜にそんなことを言われたら美琴が(嫌だと思ってもいないのに)Noと言えるわけもなくあっさり陥落した。
ちなみに当麻が隣で真っ赤になって話を聞いていたのだが美琴がそれに気が付くことは残念ながらなかった。
「じゃ、行きましょうか」
「りょうかい、母さん」
「はい、しい「美琴さん?」…お義母さん」
詩菜はとりあえず駅を出ようと思い、当麻と美琴を促して歩き出すことにする。右手は当麻、左手は美琴の手を取って。
(周りから見たらどういうふうに見えてるのかしらね~。親子って思ってもらえてると嬉しいのだけど)
当麻がかわいい息子であるのは当然として、詩菜は少なくとも美琴を娘のように思っている。なので周りからもそう見られていると嬉しいな、と思いながら心の中でそうこぼした。
美琴のほうも詩菜からそんな風に話をふられて困惑しつつも嬉しそうにしてくれていたので(当麻は)脈なしではない…というかいまのところ本命直球ど真ん中といった感じだろうなと詩菜は推測する。
(まぁ結局のところ最後は当麻さん頼みなんですけど、心配はいらなそうですね…)
詩菜は心の中でそうこぼしながらも「刀夜さんの“フラグ体質”が遺伝してないといいですけど…」と小声でいいながら2人の手を引いて歩いていく。ちなみにその声が美琴には聞こえていたようで美琴は「遺伝なんだ…」と呟きつつ少し肩を落としていた。
「ふふ、美琴さん“(フラグ体質のせいで)いろいろと”大変だろうけど当麻をよろしくお願いしますね」
「いえ、好きでしてることですから。どーんと任せちゃってください」
「…いや、普通は俺がみことのことを任されるんじゃないかなーとかおもうんでせうが」
詩菜と美琴がそんな話をしていた時に発せられた当麻の意見は当然のようにスルーされたのだった。
そんな話をしつつ駐車場に5分ほどで到着、ちなみにいまは駐車場をでて車で移動中だ。今回、先に行くことになっている御坂家までは、車で片道20分ほどの距離になる。
「あ、そうだ美琴さん、当麻さん」
「…はい、なんですか?」
「…なんだよ母さん」
あと数分で御坂邸に到着するかというとき詩菜が2人に声をかける。
2人も返す声には元気はない。別にこれと言って大変なことがあったわけではないのだが電車に乗ったことで疲れが出たのだろう。その証拠に美琴も当麻も先ほど小さくあくびをしていたのを詩菜が見ている。
「美鈴さんから伝言です。“今日は重大な発表を2つほどするから心して来るように”だそうですよ。ちなみに私も何を発表するつもりなのかは、“聞いて”いませんからちょっと楽しみにしてるんですよ」
「なんだろ、当麻はなんか聞いてる?」
「いや、みことが知らんのにおれがしるかよ…でも、まぁ悪いことじゃないだろ」
美鈴と友人として仲のいい詩菜も知らないこと、となると聞いている可能性があるのは美琴の父である旅掛くらいのものだろう。それから推測すると美鈴は一番(もしくは二番)に美琴に知らせたかったということになる。
(もっとも詩菜さんは“聞いて”ないだけで気付いてはいるっぽいけどね。いったい、なんなんだろ?ま、当麻の言うとおり悪いことじゃないだろうし…)
それに美琴は自分の母である美鈴を信頼している、それに学園都市にいるときと違っていまは家も目と鼻の先なのだ。それならば――
「美琴さん、当麻さん着きましたよ」
「はい」
「はーい」
(ママに直接聞けばいいわよね?)
――美琴がそう思うのも自明の理であろう。
「おかえりなさい、美琴ちゃん、当麻くん」
「?ただいま、ママ」
「ただいまです、美鈴さん」
美琴は数ヶ月ぶりにみる美鈴に少し違和感を覚えた、なんだか前会った時と比べるとなんだか少しだけ違うような気がするのだ。ちなみに目の前では自分が先ほど駅で詩菜にやられたことと同じような場面が、美琴と当麻、詩菜と美鈴を入れ替えて行われていたのだが、違和感で思考に少し沈んでいたため美琴は聞き逃していた。
ちなみにそんな美琴を見て何の反応もないのに肩を落とす当麻、そんな当麻をみてニヤニヤと美鈴と詩菜が見守るということが起こっていたのだが美琴はもちろん気が付いていなかったりする。
(なーんか違うんだけど、なんだろう?…………あっ、少し太ったんだ!)
とりあえず違和感の正体に気が付いてすっきりした美琴が周りを見る。すると自分が出ていってからもほとんど変わらない我が家の風景があった。
美琴はそのことに少しほっこりすると、“いつものように”当麻の手をとる。
「ほら、アンタはしゃきっとする」
「…うう、なんか不幸だ」
「…美琴ちゃん容赦ないなぁ」
美琴達の様子を見ていてそう言う美鈴の顔には呆れながらも笑顔が浮かんでいた。そんな美鈴に向かって美琴は改めて向き直ると最高の笑顔を見せた。
「あらためてっと。ただいまママ」
「うん、あらためまして、おかえりなさい美琴ちゃん」
そんな美琴に美鈴も満面の笑みでそう返す。そこには母子による温かな光景が広がっていた。
もっとも――
「あ、でもママ。太ったでしょ?ちゃんと運動しないと」
――そんな美琴の発言で笑顔が引きつったのは内緒だ。
後書き
誤字、脱字やおかしいなと思うところなどありましたら良ければ報告お願いします。
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