リリカルなのは~優しき狂王~
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第三十一話~R2・誓い~
前書き
いや~ライがいてなくなるイベントがあるんじゃないか?とか考えていたら色々と複雑になってきました。
では本編どうぞ。
多くのモノを奪われた少年は、今度は記憶を奪われ平和な日常を籠の中で送っていた。
その少年はあらゆることに飽きていた。代わり映えのしない毎日に辟易しながら刺激という快楽を求め、賭けチェスと言う学生にとっては火遊びなようなモノに手を出していた。
その日も彼の弟を連れて行きつけのカジノに訪れていた。
そんな中、彼はテロに巻き込まれる。巻き込まれた拍子に彼は家族である弟とはぐれてしまう。彼は弟を見つけるために、非日常と化した戦場を探索する。
そして彼の前に運命の魔女が姿を見せる。いきなりの出会いに少年は困惑する。そして更にその場に自分を監視していたと言う軍人まで姿を見せる。自分の取り巻く現実に理解が追いつかなくなったとき、魔女はその少年の記憶を呼び覚ました。
少年、否、ルルーシュは記憶を取り戻し再び世界に反逆するために立ち上がった。
記憶を取り戻したルルーシュは始め、ギアスを使いその場にいたブリタニア軍人を全て殺した。
その後、ルルーシュにかしずく様な姿勢で3機のナイトメアが姿を現す。ルルーシュはその内の2機に指示を出す。残った1機、ライの月下を見上げルルーシュは口を開く。
「ライだな」
「……」
ライはルルーシュが記憶を取り戻したことに驚かなかった。ギアスによって失くした記憶を取り戻すのに、自分の記憶も取り戻すことも簡単に予想できたのだ。
その一言を聞いてからライは月下から降りてくる。C.C.が傍観する中2人は対峙する。
「……何故、俺たちの前から姿を消した?」
ルルーシュは憤怒の表情で質問する。
「僕は………君と同じでギアスを持っている。そして僕のギアスは既に暴走していた。皆を傷つけないために僕は――」
「お前が消えて俺たちが傷つかないと本気で思ったのか!」
ライの答えを遮るようにルルーシュは叫ぶ。そこには怒りだけでなく悲しみと後悔の表情を滲ませていた。
「記憶を失くした俺たちは苦しんだんだぞ!ナナリーは涙を何度も流した!カレンは必死に街で何かを探した!その原因を分からずにだぞ!俺やスザクも―――ッ!」
スザクの名前を出した瞬間、ルルーシュは顔をしかめ口を閉ざす。バツの悪い顔になったが、すぐにいつもの表情に戻りルルーシュはライに再び喋り始める。
「もう勝手にいなくなるな。これはギアスでも命令でもない。友としての頼みだ」
「もう僕は君たちを裏切らない。その為に僕はもう一度君の前に戻ってくることを選んだ」
ライのその返事にはかなりの覚悟が込められていた。その覚悟を感じたルルーシュは一瞬安堵の表情を浮かべた。
ルルーシュは言葉を紡ぐ。
「俺は世界を変える」
ライはその言葉に答える。
「僕はその道を共に歩む」
2人の物語が再び始まった瞬間だった。
その後、今回の作戦を利用し現エリア11の総督であるカラレスを殺し、それに伴いゼロの復活を全世界にメディアを通して示した。
そこから更に黒の騎士団は大きな行動に出ると思われたが、思わぬところから邪魔が入る。ルルーシュの弟としての役割を与えられたロロの存在が、ルルーシュの行動をかなり制限してしまうのだ。
ロロの最も厄介な能力が彼のギアスである。それは範囲内の人間の体感時間をストップさせるというもの。この能力の存在でライも一度命を落としかけたことがあった。
更に時期を同じくして、ブリタニア軍も黒の騎士団に対して手を打つ。その内容はブラックリベリオンにおいて捕虜になった、黒の騎士団のメンバーを処刑するというものである。
表側と裏側でそれぞれ厄介な案件を相手にルルーシュは賭けにも等しいやり方でそれを同時に収める。結果としてロロはルルーシュに抱き込まれ、黒の騎士団のメンバーも奪い返すことに成功した。
その際、ルルーシュの思考の一部が六課のメンバーに流れ込む。
(ナナリーの居場所に居座る偽物が。散々使い潰した後にボロ雑巾のように捨ててやる)
そこにあった感情は純粋すぎるほどの嫌悪と憎しみ。それを感じたメンバーは身震いした。
その数日後、アッシュフォード学園に転校生がやってくる。それはルルーシュにとって親友であり最大の敵、そして今は憎むべき相手、スザクであった。
ブラックリベリオンの最後、ルルーシュはスザクに敗れブリタニア皇帝の前に連れて行かれた。その際スザクはその功績を利用し、ブリタニア帝国最強の騎士団『ナイトオブラウンズ』に入団していた。ルルーシュはそのスザクの行動が許せずに彼を憎んでいた。
しかし未だ、ゼロとしての記憶が戻っていないことになっているルルーシュはスザクと親友だった頃の演技を続ける。何も知らない第三者がそれを見れば何も違和感がないだろう光景。しかしルルーシュの本心を知っていた六課メンバーはそれがどこか虚しく見えた。
スザクの転入でアッシュフォード学園ではその歓迎パーティーが開かれる。その祭りが終盤に差し掛かる頃ルルーシュは驚愕の事実を知る。
次のエリア11の新総督が自分の実の妹、ナナリーであること。そのことを聞いたとき、ルルーシュが感じたのは怒りであった。それはゼロ、否、ルルーシュに対しての牽制と人質としての効果があるからだ。八年前と同じくナナリーが道具にされたことが彼の感情をささくれさせた。
その頃、ライは一度日本から離れ中華連邦にいるラクシャータの元に訪れていた。理由はライのブリタニアで集めたデータを彼女に引渡し新型のナイトメアの制作を依頼するためだ。
ライの渡したデータを見た彼女は制作を快諾した。しかし現時点ではいつ完成するのかわからないということで、それまでは紅蓮に近い性能にまで引き上げた改良型の月下である『蒼月』を与えられる。蒼月の名前が出た時に六課のメンバーは驚いていた。
その後、ライは何機か新型のテストをしていたがそんな時、ルルーシュからの連絡が入る。内容はもちろん新総督であるナナリーの件であった。そしてナナリー奪還のために決行される作戦をルルーシュは説明する。
報告を聞いたライは静かに問いかける。
「ルルーシュ、君にナナリーと戦う覚悟はあるか?」
『………それはなんの冗談だ?』
「質問に質問で答えるな。それに君ならこの意味がわかるだろう」
『………』
苦虫を噛み潰すような顔をするルルーシュ。それに構わずにライは続ける。
「彼女は……ナナリーは弱いように見えて強い。肉体的な意味ではなく精神的な意味でだ。彼女はユーフェミアのことを知った上で新総督という地位についた可能性がある」
ライはマオに捕まっているにも関わらず、それでもルルーシュを気にかけるナナリーを思い出していた。
『それでも!……俺はもう止まらない』
「そうか………ルルーシュ」
『なんだ』
「僕は君がどんな答えを出そうとそれについていく。それは何があっても変わらない」
『……当たり前だ』
どこかぶっきらぼうに答えるルルーシュに満足したライは通信を切ろうとする。その間際にルルーシュのつぶやきがライの耳に届いた。
『ありがとう』
嘘で塗り固められた仮面をかぶり続ける彼のそれは紛れもない本心であった。
ナナリーがエリア11に入国する日、その作戦は決行された。
黒の騎士団はナナリーの捕縛を目的に海上を移動中の空中艦隊を奇襲した。陸戦兵器であるナイトメアを敵の空中艦に取り付くことで敵艦からの砲撃を阻止したのだ。そして敵がナイトメアの方に意識を割いている間にゼロはナナリーの元に向かった。
戦場が硬直化してきた頃、ブリタニア側の援軍が到着する。それはたった2機と1人の援軍。しかしその少数の援軍がブリタニア軍には安心感を、そして黒の騎士団側には緊張感を与えた。
『ナイトオブラウンズ』の名を冠する騎士が戦場を舞う。
可変式ナイトメア、トリスタンを操るナイトオブスリー、ジノ・ヴァインベルグは機動性を活かした戦い方で黒の騎士団側のナイトメアを各個撃破していく。
ナイトオブシックス、アーニャ・アールストレイムは砲撃特化型ナイトメア、モルドレッドの高火力を存分に披露し目標を排除していく。
スザクもランスロット・コンクエスターを受け取り戦線に参加する。
カレンの乗る紅蓮弐式に向け引き金を引く際、スザクは自分の覚悟を口にする。
「カレン。今更、許しはこわないよ」
ランスロットの新武装、ハドロンブラスターから放たれた光条を受け止めようとした紅蓮はそれに耐え切れず、機体が半壊し空中艦から落ちてゆく。
「こんなところで!………ごめんね、お母さん、お兄ちゃん……ライ………」
整備不良で脱出機能が作動しない紅蓮の中でカレンは悲しむように口を開く。自分の死を覚悟したカレンに一本の通信が入る。
『カレン!間に合ってよかった!』
「ライ!?」
現れたのはライが操るフロートユニットを装着した蒼月と黒の騎士団の保有する潜水艦。
潜水艦から射出された紅蓮の新しき力。それを装着した紅蓮可翔式はライの蒼月と肩を並べる。
「カレン、行くよ!」
『言われなくたって!』
そこから『黒の騎士団の双璧』の本領発揮であった。紅蓮は新武装の徹甲砲撃右腕部から放たれる輻射波動砲弾を放ち雑魚を蹴散らす。それを避けた他の機体はライが追撃し行動不能にしていく。その攻防は空戦魔導師であるなのはやフェイトたちが見てもレベルの高いものであった。
それを見ていたジノとアーニャは興味を惹かれたようにライとカレンに向かっていく。
「カレン、ここは僕が抑える。君はゼロを」
『分かった!』
紅蓮の後を追おうとしたジノとアーニャの機体の前にライが蒼月で割り込む。
『君が僕らの相手をしてくれるのか。でも一人だと足止めは難しいんじゃないかい?』
どこか楽しげに喋るジノに対してライは断言する。
「足止め?違うなここで君たちを倒す。」
気負うわけでもなくライはただそれが事実のようにそう宣言する。それを合図に戦端は開かれる。
その頃、ゼロはナナリーの元にたどり着いていた。そこでゼロはナナリーの気持ちを知る。自分がユーフェミアの想いを継ぎ『行政特区日本』の再建を行うということを。
それは誰かに強要されたわけではなく、ナナリーが自ら現実に対して踏み出した第一歩であった。
ライから言われたことがゼロの脳裏を過ぎる。その迷いがアダになったのか、その場に突入してきたスザクのランスロットによりナナリーの奪還はできずに終わる。
艦から放り出されたゼロをカレンは回収する。そのことを確認したライは全軍に撤退を指示し自らも撤退しようとする。
撤退しようとしたライは一度、ジノとアーニャの機体の方に向き直り言葉を残す。
「次は墜とす」
それだけ言うとライは撤退していった。その蒼月は刀を持った右腕は健在だったが、左腕は肩から先が無くなっていた。
「へぇ~、やるな~あのパイロット。……最初から本気で行けばよかった」
ジノはその目に闘志を宿しながら呟く。トリスタンは右足が損傷し、ハドロンスピアーの片方がへし折れていた。
「なに?あの機体……」
少し困惑気味に自分の気持ちを口にするアーニャ。モルドレッドは頭部が半壊し、右肩の装甲が真っ二つになっていた。
こうして海上での戦闘は終息した。それぞれに様々なものを残して。
後書き
と言う訳で海上でのナナリー奪還作戦まででした。
最近、R2を見直したりしています。そこで感じたのですが、よくスザクを嫌いと言う人がいるのですが自分はそこまでスザクが嫌いではありません。やれることできることを精一杯やった結果が彼のあの姿なのであまり嫌いになれませんでした。…………自分の考え方が甘いんですかね?
ご意見・ご感想をお待ちしております。
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