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牧場の娘

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第六章

「最近アマンダと仲がいいな」
「二人で馬に乗るのっていいだろ」
「馬は一度乗ると止められないだろ」
「そうだろ」
「ああ、結構いいな」
 智和も英語で答える。
「これは」
「だろ?それにな」
「アマンダと中がよくなったな」
「随分いい感じじゃないのか?」
「付き合ってるのかい?」
 一人が笑ってこんなことも言った。
 だが智和はその言葉に顔を赤くさせてこう返した。
「いや、そういうのはさ」
「ないのかい?」
「そういうのじゃないんだな」
「そうだよ、特にな」
「じゃあ付き合えばどうだよ」
「あんたもアマンダもフリーだしな」
「丁度いいだろ」
 周りは笑ってアマンダにこう言う。
「だからどうだよ、それでな」
「交際するかい?」
「それでどうだい?」
「いや、そう言われてもな」
 智和は困った顔で彼等に返した。
「俺そういうつもりでここに来た訳じゃないしな」
「アクシデントは付きものだろ」
 これはいい意味においてもだ。
「だからいいだろ、ここはな」
「もうアタックしろよアタック」
「向こう次第だけれど当たって砕けろだよ」
「オールブラックスみたいに突き進めよ」
「俺ラグビーもやらないからな」
 ニュージーランドといえばラグビー、そして代表的なチームはオールブラックスである。兄弟国オーストラリアと並んでラグビー大国であるのだ。
 だが智和はラグビーをしない、それで言うのだった。
「やるっていったら空手だからな」
「おお、ジャパニーズだな」
「いい感じだな」
「空手なら二段でな」
 中学時代からしていて腕はそこそこある。
「結構自信があるけれどな」
「じゃあその空手でアマンダをゲットしてみろよ」
「勝負に勝ってな」
「勝負って何だよ」
 智和には見えない話になっていた。何故アマンダとそういう話になるかだ。だが二人のことは牧場の中で広く言われる様になり。
 それでオーナーにも笑ってこう言われた。
「アマンダいい娘だろ」
「オーナーまでそう言うんですか」
「いやな、実はな」
「実はって何ですか」
「アマンダも年頃だろ」
 それでだというのだ。
「そろそろ相手がって思ってな」
「俺日本人ですけれど」
「そんなの関係あるか。俺は人種主義者じゃないからな」 
 だから日本にも留学に行ったのだ、オーナーはそうした下らない偏見とは全く無縁の人物である。
「気にするものか」
「けれど俺達本当に」
「いやいや、前アマンダからも言われたんだよ」
 その相手からもだというのだ。
「結構気になるってな」
「俺のことがですか」
「だからあんた次第だよ」
「俺次第ですか」
「そうだよ、どうだい?」
 オーナーはにこりと笑って智和に問うた。
「アマンダのことが嫌いかい?」
「嫌いじゃないですけれど」
 悪い娘ではないと思っている、性格は好きだ。
 それでこう答えたのだがオーナーはまさに直進するラガーマンの様に強引だった、そしてこう解釈したのだった。 
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