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内緒にしてたのに

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第三章

 しかしその団欒の時にだった。オウムが。
 真耶子と家族のいるところでこんなことを言い出したのだった。
「ネエサトシクン」
「理!?」
「理って!?」
 彼氏の名前だ、家族にも血縁にもこの名前の人間はいない。
 家族は箸と茶碗を手にいぶかしみ真耶子はぎくりとした顔になった、そこにだった。
 オウムはさらに言う、それはまさに追い撃ちだった。
「キョウオカアサンタチカエルノオソイカラネ」
「今日のこと!?」
「まさか」
「タノシンデッテネ。オカシモアルシ」
「あんたまさか」
 母が最初に気付いて目の前に座る娘に問うた。
「私達がいないうちに」
「ち、違うわよ」
 真耶子は慌てふためいた顔と態度で母に返す。
「ドラマの話よ、ドラマの」
「嘘でしょ」
「嘘じゃないわよ、フランコがドラマの台詞言ってるだけよ」
「あんた一人でいたらお部屋でゲームじゃない」
 しかし母は手強い、娘のことがよくわかっている。
「リビングにいないじゃない、テレビだって点けたままにしないし」
「それはたまたまで」
「あのね、彼氏のことはいいけれど」 
 完全に見抜いたクールな顔での言葉だった。
「結婚は就職してからにしなさい」
「何でそうなるのよ」
「あと悪い男だったら駄目だからね」
 まだ隠そうとする娘にさらに言う。
「そんな奴いたら一族会議に呼ぶからね」
「理君はそんな子じゃないから」
「ほら、今自分で言ったわね」
 墓穴だった、しかし言った言葉はもう戻らない。 
 真耶子もそれでしまった、という顔になるがもう手遅れだった。
 母は確かな顔で娘に言った。
「今度お母さんにその彼氏の子連れて来なさい、面接するから」
「うう、わかったわよ」
 真耶子の完敗だった、かくして。
 真耶子は暫く経ってからクラスで香織にたまりかねた感じの顔でこう話した。
「いや、許してもらえたけれどね交際は」
「それでもなのね」
「本当に参ったわよ」
「まさかオウムとはね」
「盲点だったわ。これからは気をつけないと」
「また同じことになるからね」
「恋愛はあらゆることに対して気をつけろってことね」
 そのことを実際の経験でわかった真耶子だった、彼女にとっては痛いがとても貴重な経験となったことである。


内緒にしてたのに   完


                   2013・1・24 
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