洞窟
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第一章
洞窟
第二次世界大戦中の話である。
日本軍は東南アジア全域に進出していた。それでインドシナのスマトラ島にも進出しそこにいるオランダ軍を瞬く間に蹴散らした。
捕虜になった彼等は皆捕虜として扱われることになった、だが建物は限られているし建てるにも時間がかかる。
それで一時的にではあるが彼等を洞窟に入れることにした、そうしたのだった。
だがその洞窟に入れた捕虜達がだった。
収容所、その洞窟の管理を担当する広崎隼人少佐は難しい顔で彼の所属する連隊の隊長であり一帯の捕虜の管理の責任者である若本勇吉大佐にこう話した。
「毎日捕虜が減っているのです」
「脱走か?」
若本はその話を聞いてまずはそれを疑った。
「それは君の責任になるぞ」
「入り口は常に監視しています」
洞窟の入り口はだというのだ。
「常に何人もの衛兵に護らせていますし」
「そうしているな」
「それは怠っていません」
広瀬も責任者としてそれは忘れていないというのだ。
「脱走は許していません」
「それでもだな」
「はい、捕虜が毎日一人か二人ずつ減っているのです」
広瀬は怪訝な顔になって若本に話した。
「奇怪なことに」
「若しかして奥が抜け道になっていないか?」
入り口を押さえているのなら別の道からだ、若本はこう考えて広瀬に対してこう言った。
「それは」
「その可能性はありますね」
「そうだな。それは最初調べなかったか」
「調べました。それで抜け道はなかったので」
収容所として使っているというのだ。
「用足しはその都度申し出があれば外に出して監視をつけてやらせていますし」「
「そこで逃げることもさせていないな」
「そうです、抜け道もない筈です」
「余計にわからないな。だが」
「だが、ですね」
「洞窟の中、奥をもう一度よく調べてみろ」
若本は真剣な顔で広瀬に命令した。
「わかったな、隅から隅までだ」
「はい、わかりました」
「若しかして見つけられなかった抜け道があるかも知れない」
「暗がりの中だからですね」
「そうだ、あるかも知れない」
それを調べてだというのだ。
「あれば塞ぐ、そうしよう」
「わかりました、それでは」
広瀬は陸軍の敬礼で若本に応えた、そしてだった。
彼は直属の部下達を十人程連れて洞窟の奥を隈なく調べることにした、その際だった。
「銃も持ってですか」
「そして灯りもですね」
「どちらも持って、ですね」
「何があるかわからないからな」
それで武装してだというのだ。
「行こう、前よりもじっくりと調べよう」
「はい、それではですね」
「今から中に入って」
「そしてですね」
「調べましょう」
「抜け道があればすぐに塞ぐ」
広瀬は捕虜がいなくなっている原因をそれだと考えていた、最初の調査で見つけられなかったと思っていたのだ。
それでその穴を塞いでしまおうと考えていた。武装は軍人として当然のことだった。
兵士達には小銃を持たせ自身は拳銃を持って灯りも手に中に入った、その際捕虜達は外に出して残っている部下達に監視させた。
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