真・恋姫無双 矛盾の真実 最強の矛と無敵の盾
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立志の章
第1話 「あや……へんなのがいるよ?」
前書き
とりあえず1話を投稿して、文の形態をバランス調整するつもりです。
微調整後、同じ日に3話までは掲載予定。
あとはストック次第ですが、不定期にどばっとだすかもしれません。
はるか超古代、現代を遥かに上回る科学力を持つ文明が存在した。ある遺跡から発掘された金属板に、 その超古代文明の人々からの警告が記されていた。
「我々の残した遺産を、悪しき者より守れ」と。
そのメッセージに強い危機感を抱いた特殊組織「アーカム」は、彼らの遺産をあらゆる権力から守り、封印するチームを結成した。
様々な組織はそのアーカムのトップエージェント達を恐れ、こう呼んだ。
遺跡の守護者「スプリガン」と……。
―― ??? side とある戦場にて ――
「ハアッ、ハアッ、ハアッ、ハッ……」
俺は走っていた。ただただ、走っていた。
夕陽すら差し込まぬ深い原生林。道すらない森の中。ただひたすらに走っていた。
(俺はまだ――こんなところで死ねない!)
試験のはずだった。憧れの一員となれる試験のはずだった。
ただの試験ではない。死の危険は当然あった。むしろそれは日常茶飯事だった。
だが、俺と相棒にとってはさしたる障害ではなかったはずだ。いつものように仕事をこなし、脱出する。
ミッションの難易度もそれほど難しいとは思わなかった。相手とて。
だが、誤算があった。
(俺たちは浮かれていたのだろうか? この新型の最新装備をもらって――)
俺の持つ、いや”着ている”装備。
世界最高の、すでに”オーパーツ”と呼んでよい程の性能を持つ装備。
人知を超えた産物――AM(アーマード・マッスル)スーツ。
一見、ただの皮のライダースーツの様に見えるそれは、超古代の遺産と現代の先進科学、そして一部錬金術すら利用した奇跡のスーツ。
その”弾丸すら通さぬ”スーツと、一緒に戦い抜いてきた相棒と共に。
このミッションさえこなせば、晴れてこう呼ばれる存在になっていたはずなのだ。
――遺跡の守護者 スプリガン、と。
(どこで間違った……なあ、相棒)
俺は走りながら、肩に背負った”モノ”に問いかける。
それはすでに事切れ、首の無くなった”相棒”の成れの果て――
(置いていきはしない。置いていくことは許されない。共に死んでやることはできなくとも――)
共に十八年間、戦い抜いてきた相棒だった。生まれてすぐに捨てられた唯一の肉親。
たとえ死んでも、その場に置き去りになどできるわけが無い。
(魂の誓いにかけて、お前を連れて帰る――)
俺は、心の中でその誓いを再度起て――失策をした。
後ろを見てしまったのである。
―― ??? side ここでない刻 ここでない場所 ――
――迫る闇が。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ……………………あ、あ?」
俺は叫ぶが、ふいに現実感が喪失した。
「あ、あれ……?」
さっきまで走っていたはずの森ではない。
周囲は闇。音も無く静まり返り、上下の感覚もないような闇。
であるのに――
「……光がないのに自分の姿が見える?」
思わず口に出してしまった言葉に、気付く。
(俺は……”喰われた”のか?)
思い出すだけでも体が震える。圧倒的な恐怖。
たしかに”アレ”に飲まれた筈――
(ならここは……いや、そもそも)
「俺は死んだのか……」
「死んでないわよ」
「!?」
闇の中から声が聞こえた。
「誰だ!?」
「ちょぉぉっとまってねぇん。今、調節してるからぁん」
聞き間違いかと思ったが、確かに”ソレ”は声だった。
「これで……どぉかしらん? アタシの姿、み・え・る?」
「いや、まったく……」
「あらぁ~おかしいわねぇ……接続がうまくいってないのかしら?」
妙にカマっぽい声だった。俺は不安になりつつも周囲を探る。
「どこにいるんだ?」
「あ~無理、無理よ。アタシそこにはいないから。さすがに他の外史から外史に干渉するのは、無理があったかしらねぇ」
「が、ガイシ?」
カマっぽい声に嘆息が漏れる。
「とりあえずこっちに引き寄せるわね。たぶんこっちのどこかに来られると思うけど……さすがにアタシの傍は無理みたい」
「引き寄せるって……どういうことだ!」
「アナタ、そっちじゃ死んだことになるはずだけど、ソレは諦めてね? 銅鏡の暴走はもう止められないのよ」
「ちょっと待て! 説明――」
「向こうで会えたらしてあげるわ……がんばってね。もう一人の”ご主人さま”」
「おい、おま――」
俺が叫ぼうとした瞬間、視界に突然光が溢れた。
―― other side 幽州啄郡 五台山の麓 ――
「二人とも遅いのだ! 急がないと何が落ちたかわからなくなるのだ!」
「ま、待ってよぉ、鈴々ちゃん。一人で行かないで~!(涙)」
「そうだぞ、鈴々! こんな昼間に、流星が落ちてくるなんて、どう考えてもおかしい!」
荒野に三人の美少女達が、姦しく騒いでいる。
「愛紗ちゃんのいうとおりだよ~。もしかするとおばけがでるかもしんないよ? や、やっぱやめない?」
「そんなことないのだ! 劉玄徳と関雲長ともあろうものがなさけないのだ!」
「り、鈴々! 桃香様は、いや私達は、べ、別に怖がっているわけではない! ただ、危険かもしれないと……」
「大丈夫なのだ! みんなでいけば怖くないのだ! だから急いでいくのだ!」
「わかってない……わかってないよぉぉ……」
桃香と呼ばれた少女が、涙ながらに歩く。
その肩をぽん、と叩いた少女――愛紗は、美しい黒髪を首と共に左右に振った。
その前を走る鈴々という少女は、自身よりも遥かに長い蛇矛を振り回して叫ぶ。
「お姉ちゃん! 前のほうに誰か倒れているのだ!」
「えっ!? 誰かに流星が当たったのかな!?」
「いや、さすがにそれはないかと……」
愛紗がツッコむが、それを聞きもせず桃香は走り出す。
「あや……へんなのがいるよ?」
「二人とも男の人だね……私達と同じくらいの歳かな?」
「二人とも離れて! 姿からして怪しい! もしや、妖やもしれません!」
「「でも、気持ちよさそうに寝てるよ(のだ)?」」
「……」
愛紗が、おっかなびっくり顔を覗こうとする。
「わっ!」
「わひゃぁぁぁぁっ!?」
鈴々に後ろから大声を出され、五尺(九十cm)ほど飛び跳ねた愛紗は、奇声を発して振り返る。
「り、鈴々! いたずらにも程があるぞ!」
「にゃはは~愛紗は怖がりさんなのだ」
「ち、違う! 違うぞ! 私は怖がっているのでなく、ただ、ただ……そ、そう! 驚いただけで!」
「愛紗ちゃん……」
「と、桃香様! そんな、怖いんだよね、わかってるよ、みたいな顔はやめてください!」
「……っさい」
「にゃ!?」
「はわっ?」
「……っ!?」
―― ??? side ――
「……うるさい、な……なん……?」
俺が目を開けると、三人の美少女がこちらを覗きこんでいた。
「「「……」」」
「…………?」
三人の美少女は、俺をじっと見つめている。
正直こんな青空の下、上から覗き込まれるのは居心地悪くてしょうがない――空?
「空だと!?」
「「「わっ!?」」」
俺は唐突に身体を起こした。
危うく頭がぶつかりそうになり、三人共仰け反っていた。
だが、今はそれどころじゃない。
「闇の中……いや、その前は夕暮れだったはずだ! ここは……」
周囲を見回す。見事な地平線。
遠くに見える山脈。見たこともない場所だった。
闇の中の前には確か、ブラジル南部の原生林だったはずだ。
「一体どこだ……?」
「あ、あのぉ~……?」
「ん?」
「ええっと……大丈夫、ですか?」
美少女の一人が、心配そうにこちらを見ている。
見たことも無いような美少女、といっていいだろう。
というか、周囲の二人もとんでもない美少女と言える。
「あ、ああ……君達が助けてくれた、のか?」
あの闇の中で聞こえた声――ではなさそうだ。アレは明らかにカマっぽかった。
「助け……? お兄さんは寝てたんじゃないの?」
「寝て……? いや、確かに闇の中で光に包まれたまでは覚えているが……」
「じゃあ二人ともどうしてこんなところに……?」
「……二人?」
俺は、訝しげに少女の視線の先を振り返る。
「!?」
そこには死んだはずの相棒――北郷一刀が横たわっていた。
「相棒!? ばかな、頭が喰われて――いない。これは夢か!?」
俺は相棒――一刀を抱き起こす。
”アレ”に喰われたはずの頭は元通りになっていた。
そして血色もよく……息もある。
「相棒……よ、よかった……生きていて、う、うぉぉぉぉっ……」
俺は泣いた。死んだはずの俺の片割れ。
共に生き、共に死ぬと魂に誓い、戦場を駆け抜け、二人でスプリガンになろうと決意した相棒。
そしてその試験で唐突に”アレ”に喰われ、失ったはずの魂の欠片。
それが今、再びここにある。
「一刀、かずと……起きてくれ、一刀っ! 生きているって、俺に教えてくれ……っ」
俺は一刀を揺さぶる。しかし、一刀は目覚めない。
「……一刀? どうして起きないんだ! 一刀!」
いくら呼べど叫べど、一刀は目覚めなかった。
「そんな……起きてくれ、一刀。助かったんじゃないのか……!?」
俺は喜んだ反動で、今度は深い悲しみに暮れる。
何故だ、どうして……
「あ、あの……」
「桃香様、どうしましょう……?」
「はわ~男同士なのだ……」
一人、あまり聞きたくない言葉が聞こえたが、そんなのはどうでもいい!
「頼む! 一刀を……兄貴を助けてくれ! なんでもする! お願いだ!」
「えっ……お兄さん、なの?」
「似てないのだ……」
「鈴々! そんなこと言っている場合ではない!」
黒髪の少女が背の小さい少女を嗜めると、こちらにしゃがみこんでくる。
「事情はわからぬが、その御仁が大変だと言うのはわかった。とりあえず近くの邑に向かおう。医者がいるかもしれぬ」
「頼む! この礼は必ずする! だから……」
「困っている人に手を差し伸べるのは当然だ。礼などいらぬ。桃香様……」
「うん、もちろんだよ! すぐに移動しよう!」
「すまない……」
俺は一刀を背負い、立ち上がった。
「そういえば名をまだ聞いていなかったな、お主、名は……?」
「ああ、俺は、北郷――北郷盾二だ」
後書き
なお、文章中に原作と似通った文がありますがあくまでわざとです。
このお話は蜀ルートで、原作にある程度は沿うようにしています。
構成も文章もちゃんと変えてあるので問題はないはずですが、もし問題があるならお知らせください。
なお、設定は後日出す予定ですが、スプリガンは原作漫画とゲームの後日談を元になっています。
以前、作者本人がゲームも正史としてるという記述を見たので。
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