久遠の神話
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第四十話 同盟結成その十二
「ああした病気には」
「なりたい人いないですよね」
「誰だってね。だから軍ではね」
「衛生管理もちゃんとしていたんですね」
「そう、さもないと兵隊さんが性病にかかるから」
それでだ。戦力が落ちてしまうからだ。軍の敵は敵軍だけでなくそうした伝染病もそうなのだ。実際にそれで戦力を落とした例は実に多い。
「だからね」
「そういうのもしっかりしてたんですね」
「そう、そうしていたんだ」
「そうですよね」
「それに。書類としてはね」
「強制的に集めていたってないですよね」
「関与はあってもね」
それもだとだ。高橋はこの場に男しかいないことに感謝しながらそのうえで上城に対して語っていくのだった。
「それは民間の悪質な業者を取り締まるもので」
「そういう奴っていたんですね」
「今で言うと悪質なブローカーがね」
それがだ。いたからだというのだ。
「そういうのに警告を出す通達はあったんだ」
「つまり軍が強制的な徴用、民間のを止めていたんですね」
「それはあったよ」
あくまでそういうものだ。しかしだったのだ。
「間違っても軍自体が強制徴用はしていないよ」
「書類を見てもそれが確かなんですね」
「書類を見てわかることは軍は悪質な業者を警戒していた」
「それですね」
「そう。強制徴用はなかった」
「間違いなく」
「書類の上からでもわかるんだ」
そういうことはだというのだ。
「残していればね」
「ですよね。慰安婦については」
「残していたね」
「はい、間違いなく」
その悪質な業者への警告があったという事実に対してだ。
「そういうことですね」
「作戦一つ取ってもそうなんだ」
「書類が必要ですね」
「普通の作戦はね。だからこの作戦は」
「特別ですね」
「そうした意味でもそうなんだ」
「このことを知っているのって日本政府だけですよね」
そうした極秘の作戦が行われていることを知っているのはだとだ。そのことを問うた上城だった。彼については聞かざるを得ないことだった。
「そうですよね」
「いや、多分ね」
「他にも知ってる人いるんですか?」
「いるっていうか他国の政府だね」
「っていいますと」
「アメリカとか中国とか」
言わずと知れた大国達だった。
「あとロシアだね」
「ああした国がですか」
「知ってると思うよ」
「書類に残していなくても」
「それでもどうしてもね。ばれる相手にはばれるんだよ」
「そうなんですか」
「そう。あの三国にはね」
どうかというのだった。
「ばれてると思うよ」
「そうなんですか」
「だから。若しもだよ」
高橋はこう前置きして話す。
「この三国に剣士がいればね」
「送り込んで来るんですね」
「そうしてくるだろうね」
こう言うのだった。上城に対して。
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