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八条学園怪異譚

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第二十三話 犬と猫その十四

 暗い土の穴の中だった、愛実はその奥の土の壁を見ながら聖花に対して言った。
「ここも違うね」
「普通の防空壕の中だったわね」
「そうね、何かここもだったけれど」
 愛実は残念そうに、しかしそこに何処か安堵したものも見せて聖花に言うのだった。
「また次があるし」
「そうね、それで次は」
「古墳行こう」
 同じ動物園にあるそこにだというのだ。
「そこに行こうね」
「そうね、次はね」
「また次があるしそれに」 
 愛実は言葉を続けていく。
「これで終わりじゃないから」
「余計にいいっていうのね」
「うん、そう思わない?」
「そうよね」
 聖花も愛実のその言葉に微笑みで頷く。
「これで終わりじゃなくてね」
「まだあるから」
「じゃあまたね」
「うん、今日はこれで終わりだけれどね」
 それでもだと話してだった、二人は防空壕を出た、そして入り口のところで待っていた猫又達にこう言ったのだった。
「今度は古墳に行くから」
「そうするからね」
「ああ、じゃあそういうことでさ」 
 猫又もあっさりと返す。
「また今度ね」
「うん、宜しくね」
「明日にでもまたお邪魔するから」
「そのうち見付かるさ」
 猫又は至って陽気な顔だった。
「落ち込んでいない様だしよかったよ」
「だから次があるから」
「リスクもないから」
 だから落ち込んでいない二人だというのだ。
「これがお料理だとそうはいかないから」
「パンでもね」
「一回一回が真剣勝負だからね」
「神経も使うから」
「それと比べるとね」
「全然平気よ」
「強いね」
 猫又は二人の言葉を受けて言った。
「割り切っているっていうかね」
「だってね、本当jにお料理は本気だから」
「真剣っていうのは言い過ぎかも知れないけれど」
「実際にまずいとか腐ってるとかいう話になったらね」
「それこそ商売にならないから」
 それでだというのだ。
「食べ物を出す商売って難しいのよ」
「食中毒とか出たら終わりだから」
「まずいとか高いのも禁物」
「本当jに気が抜けないから」
「根っからのお店の娘さん達だね」
 このことは猫又から見てもだった。
「立派だよ。それでだけれど」
「ええ、古墳はまた今度ね」
「明日にでも行くから」
 今ではないと話してそうしてだった。
 二人は妖怪達と別れてそのうえで帰路についた。防空壕のことは終わったが動物園の話はまだ続くのだった。


第二十三話   完


                          2013・1・20 
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