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万華鏡

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第二十二話 夏休みその二

「ここで大事なのはさ」
「大事なのはって?」
「あまり食べ過ぎると塾の講習で寝るからな」
「身体動かしたし」
「そう、そこでお腹一杯食べたらさ」
 そうすればだというのだ。
「眠くなってさ」
「そうなるわよね。けれどね」
 琴乃はここで自分の腹に右手を当てた、そして言うのだった。
「お腹かなり減ったから」
「食べたいよな、やっぱり」
「うん、かなりね」
「実はあたしもなんだよな」 
 美優は鞄を持った両手を後ろで組んで言った。
「それはさ」
「食べたいわよね、やっぱり」
「ああ、たっぷりとな」
「やっぱり身体動かすとお腹減るわよね」
「適度に動かすと余計にな」
「丁度お弁当も持ってるし」
 母が昨日の夜の残りものを入れて作ってくれたものだ。
「それにおやつもあるし」
「おやつっていうかそれもお昼だよな」
「そう、サンドイッチもあるから」
 これもあるのだった。
「食べるものはあるわ」
「そうよね」
「どうする?ここは」
「要するに食べても寝ないといいのよ」
 琴乃はダイレクトに言った。
「つまりはね」
「それはその通りだよな」
「じゃあどうするかだけれど」
「コーヒー飲んだら?」
 美優の左隣にいる彩夏がこう提案してきた。
「そうしたら?」
「コーヒーね」
「コーヒー?」
「つまりそれで」
「目を覚ませばいいのよ」
 まさにそれでだというのだ。
「それでどうかしら」
「そうね」
 琴乃が彩夏のその提案に頷いた。
「コーヒーはいいわよね」
「目が覚めるでしょ」
「ええ」
 カフェインが入っているからだ。これはお茶もそうであるがコーヒーを飲んで目が覚めるのはそれ故になのだ。
「だからよね」
「そう、いいでしょ」
「そうね。折角塾に入ってもね」
 琴乃はここで腕を組んで言う。
「寝たらね」
「意味ないでしょ」
「ええ」
 その通りと頷く琴乃だった。
「そういうことよね」
「そうよ、じゃあいいわね」
「コーヒーにするわ」
 琴乃は決めた。
「それじゃあね」
「そう、私も飲むし」
 彩夏もコーヒーにすると言う。
「実は好きなのよ」
「コーヒーなのね」
 彩夏の左隣にいる景子はというと。
 コーヒーと聞いて顔を曇らせてこう言うのだった。
「あまりね」
「景子ちゃんはやっぱり」
「ええ、お茶」
 そちらだというのだ。
「それも日本茶ね」
「紅茶もなの」
「コーヒーも紅茶も嫌いじゃないわ」 
 このことは断る。 
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