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とある星の力を使いし者

作者:wawa
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第60話

食堂で一悶着があった後、麻生と美琴は目的もなく校舎を歩いていた。
麻生は常盤台の校舎内で行動できる範囲が決められているので、美琴の案内もすぐに終わってしまいやる事がないのだ。

「はぁ~~、どうして俺が意味のない勝負をしないといけないんだ。」

「うっ・・・それについては謝るけど、どうしても我慢できなかったんだからしょうがないじゃない!!」

「開き直るな。
 もっと反省しろ。」

あの女子生徒達が提案した勝負について麻生は教師側が承諾しないと考えていた。
しかし、少ししてから食堂に理事長自らやってきて、正式な形で勝負を認めると言い出したのだ。
これについては美琴を驚いていた。
どうやら、美琴の頭の中ではここまで大事になるとは思っていもいなかったらしい。
それを聞いた麻生は既にテンションが下がりに下がりきっていた。
本来なら適当に勝負して負けを演出したりするのが無難なのだが、麻生が負ければ本当に一時編入を取り消すと理事長本人から聞いた。
嘘かどうかは分からない。
だが、本当だとしたら負けて学校に戻る事になると愛穂達に迷惑がかかってしまう可能性がある。
なので、引くに引けない状況になってしまった。
どこかで昼寝でもしようかと考え、ふと窓の外に視線を送った時、奇妙な集団を見つけた。
星のマークが入ったバッグを肩からかけた生徒を先頭に後ろには何十人もの生徒達が着いてくるように歩いていた。

「おい、美琴。」

「何よ、まだネチネチ文句を言う訳?」

「それについてはまだ言い足りないから後で言う。
 それよりもあの集団は何なんだ?」

「どちらにしても文句は言うのね。」

呆れながら麻生が見ている窓の外の風景を美琴も見る。
そこで奇妙な集団を目にしてあぁ~、と納得したような表情をする。

「確かに普通の中学校や高校じゃあ、あんなものは見れないし存在しないでしょうね。」

「で、アレは何だ?」

「あの集まりは派閥って呼ばれてるわ。」

「派閥?
 この常盤台には政争が起こっているのか?」

派閥とは基本的にはお遊びグループのようなものだが、同じ目的を持った者達が集まって学校から設備を借りたり資金を調達し、研究分野などで名を残すという部活のような性質を持つ。
大きな派閥は人脈や金脈、独自の知識などまでも収めており、第一線で活躍する生徒の中にはそれらの力を借りて功績を挙げる者も多い。
そのため大きな派閥は学校の外にまで影響を及ぼす大きな力を持つ事になる。
ゆえに大きな派閥に属する事が一種のステータスとなり、その派閥の創始者ともなれば並ではない名声を得ると言われている。
美琴がそう説明すると、麻生はもう一度その派閥を見つめる。

「あれは常盤台の中でも最大の派閥って言われるわ。
 創始者の名前は食蜂操祈。
 学園都市第5位の超能力者(レベル5)で能力、心理掌握(メンタルアウト)っていう能力で学園都市最高の精神系能力者よ。」

心理掌握(メンタルアウト)?」

聞き覚えのない能力名に麻生は美琴に聞き返す。

「簡単に説明すると、記憶の読心・人格の洗脳・念話・想いの消去・意志の増幅・思考の再現・感情の移植など精神に関する事ならなんでもできる十徳ナイフのような能力。」

美琴の説明を聞いてへぇ~、と言い興味が湧いてきたようだ。

(その能力があれば俺の頭の中をもしかしたら覗かれる可能性もあるな。
 まぁ、不服だが星の加護を受けているから問題はないと思うが、可能性はゼロじゃない。
 一応、警戒はしておくか。)

そう考え、どこか適当な所にでも行こうかと思った時だった。

「あら、御坂さんではありませんか。」

後ろから美琴の名前を呼ぶ声が聞こえたので振り向く。
そこには三人の生徒が立っていた。
一人は不自然なほどサラサラの黒髪を持ち腰くらいの長さで、片手には扇子を持っている。
二人目はショートな髪形で茶髪の生徒。
三人目は肩よりも長い黒髪のストレートの髪形をした生徒だ。

「御坂さん、聞きましたわよ。
 何でも勝負を申し込んだと学園中で噂になっていますわよ。」

「え?
 どういう事?」

「あら、ご存じありませんでしたか?」

茶髪の生徒が少し頬を赤くしながらも言う。

「一時編入してきた男子生徒を庇い、その生徒を認めさせるために勝負を仕掛け、その男子生徒の能力を少しでも上げるために特訓をされているとお聞きになりました。」

それに続いて、黒髪の生徒が少しだけ頬を赤くしながら言う。

「素敵ですわ、さすが御坂様です。」

「な・・な・・なな・・・・」

美琴は顔を真っ赤にしながら言葉が出ないようだ。
その噂の話を聞いた麻生も少し面倒くさそうな表情をしている。
未だに言葉が出ない美琴に麻生は言う。

「自業自得だな。」

「何でそうなるのよおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

本日何度目になるだろうか。
美琴の叫びが校舎内に響き渡った。







三人はどうにかして興奮している美琴をなだめると麻生の存在にようやく気付く。

「もしや、そこの殿方が。」

麻生は自分の事を指している事に気づき一応、自己紹介をする。

「知っているの思うが、俺がその編入生の麻生恭介だ。」

「婚后光子ですわ。」

扇子を持った女子生徒の名前は婚后光子という名前らしい。

「わ、わたくしは湾内絹保と申します。」

「わたくしは泡浮万彬と申します。」

「お二人と御坂さんはわたくしの友達ですわ。」

茶髪の女子生徒は湾内絹保といい、少し麻生に怯えながらも自己紹介をする。
もう一人の黒髪の生徒は泡浮万彬と言う名前だ。
麻生と美琴の噂を聞いて気になったのだろうな、と麻生は考える。

「お二人が校舎内を歩いている姿を見ると、噂は本当なのですね。」

泡浮は麻生と美琴の顔を見比べながら言う。
美琴は少し顔を赤くしながらも否定する。

「ち、違うわよ!!
 こいつにそんな特訓何て必要ないわよ!!
 だって、この私が手も足も・・うぐぅ!?」

美琴は言葉を続けようとしたが麻生が後ろから美琴の口を両手で塞ぐ。
その行動を見て三人は首を傾げる。

「どうかされましたか?」

婚后は心配の表情を浮かべながら聞いてくる。
麻生は美琴の口を塞ぎつつ後ろに下がりながら答える。

「ああ、こいつが特訓の内容を言おうとするから俺が止めただけだから気にするな。
 それじゃあ俺達はこれから特訓があるから、そろそろ行かせてもらう。」

「が、頑張ってください。
 わたくし達はお、応援しておりますわ。」

少し脅えながらも湾内は言う。
麻生は美琴を連れて人気のない中庭まで移動する。
両手を美琴の口から離すと、美琴はものすごい勢いで振り返り麻生に言う。

「何でいきなり後ろから私の口を押えたのよ!!」

「お前が余計な事を言いそうだったからだよ。」

「余計な事?」

「お前、さっき自分が手も足も出なかったとか何とか言うつもりだっただろう。」

「そうだけど。」

美琴が正直に答えると麻生は疲れたような溜息を吐く。

「それが困るんだよ。
 お前の言う事を他の奴が信じれば、嫌でも俺に注目が集まる事になる。
 そうなると色々と面倒なんだよ。」

「どうしてよ?
 その・・大きな声で言えないけどあんたはあの一方通行(アクセラレータ)にも勝ったのよ。
 どうしてそれを自慢とかしないのよ。」

美琴は不思議で仕方なかった。
自分に勝ったことやあの一方通行(アクセラレータ)に勝ったのに、その事が学園都市内に全く広まっていないのだ。
美琴の問いかけに麻生は視線を逸らし、空を見上げた。
その表情はとても暗く、遠い目をしていた。

「俺の能力は自慢できる能力じゃない。
 できる事なら目覚めてほしくなかった。」

そう語る麻生の表情を見た美琴はその訳を聞くに聞けなかった。
二人の間に沈黙が流れる。
そして、チャイムが構内に響き渡る。

「もうすぐ、授業が始まるな。
 そろそろ戻ろないとな。」

麻生は自分の教室に向かった歩き出す。
美琴もその後に着いて行く。
麻生の言った言葉の意味もその表情の意味を美琴は考えるが分かる訳がなかった。








その日から四日間は至って平和な学園生活だった。
麻生の事を認めていない生徒達の嫌がらせもピタリと止んだ。
おそらく、自分達が勝ってこの学園から追い出す予定なので嫌がらせをする意味も無くなったのだろう。
麻生はこの平穏がずっと続くように密かに祈ったが続く訳がなく、運命?の能力測定の日がやってきた。
能力測定とは簡単に説明すると自分の今のレベルを測るというもの。
様々な能力に合わせて測定を行う。
麻生は無能力者(レベル0)なのでどの能力に該当するか分からない。
本来なら時間割り(カリキュラム)を受けてどの系統の能力と一番合うか分かるのだが、麻生はどれも平均的な成績なので全ての測定を受ける事になった(それを聞いた麻生がこれまでにないくらい面倒くさそうな顔をしたのは言うまでもない)。
麻生の能力は使い方次第ではどの能力を使う事ができ、さらには新しい能力を発明する事も可能だ。
だが、そんな事をすればどれだけ自分が注目を集めてしまうのか分かっている麻生は適当に受ける事にしている。
体操服に着替え、測定を受ける。
測定結果はどれも無能力者(レベル0)
その結果を見た教師達は少し残念そうな顔をしている。
その瞬間だった。
ドン!!!、という何か爆発でもしたかのような音が聞こえ衝撃が響き渡る。

「この音と衝撃。
 美琴か。」

麻生の発言に教師の一人が答える。

「プールで衝撃を緩和して、さらに御坂さん自身が威力を調整してやっと測定できるんです。」

「まぁ、本気であんなものをぶっ放せば測定もくそもないけどな。」

本気の超電磁砲(レールガン)を受けた事ある麻生はつくづく思った。
あんなものをよく自分に撃ったな、と。
その後、麻生は教師にグランドに行くように言われ移動する。
グランドに行くと、ちょうど真ん中に三人生徒が立っていた。
美琴もプールの水を浴びたのか髪や服が少し濡れている。

「あそこにいる三人が代表みたいよ。」

「代表?」

「聞いた話だと、あんたの一時編入を認めていない生徒は結構多いみたいで、それら全員相手にしたら勝負にならないって話になったみたい。
 それであそこにいる三人が代表みたいよ。」

麻生の姿を見つけた美琴は近づいて説明をする。
グランドの周りには生徒達が集まっていて、その中には湾内や泡浮や婚后の姿も見えた。
それだけ注目されているのだと麻生は再認識する。
同様に教師達の姿を見受けられた。
美琴は麻生の背中をバン、バン!!と叩く。

「さぁ、あんたの実力を見せてやりなさい。」

「まぁ、適当にやるさ。」

麻生は頭をかきながらグランドの中央まで歩いて行った。 
 

 
後書き
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