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鋼殻のレギオス 三人目の赤ん坊になりま……ゑ?

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第一章 グレンダン編
道化師は手の中で踊る
  和解と怒りとetc……

 
前書き
遅くなりました、危なく一ヶ月になるところでした。
今度から気をつけます。 

 
 老生体とは、都市が半壊するほどの被害と多くの武芸者が力を合わせることで撃退できるかもしれない存在だ。
 その姿はまさに変幻自在、デルクが戦った人型もいればレイフォンとシキが共闘したスライムのような姿をした個体もいるが、総じて老生体は通常の汚染獣とは隔絶した強さを持っている。それは直接的な戦闘力ではなく、個体ごとの個体能力が厄介な場合が多い。
 だが、そんな化け物を一人で相手取れる存在がいる。天剣授受者だ。
 老生体が汚染獣の外れた存在なら、天剣授受者たちは武芸者から外れた存在だ。
 汚染獣戦では滅多なことがない限り、都市外で戦うことになる。エアフィルター内で戦うことが出来ればいいのだが、汚染獣は総じて巨体だ。
 そんな汚染獣がエアフィルター内で戦えば、都市がどうなるかは火を見るよりも明らかだろう。
 だからこそ相手取れる、いや相応の相手が戦わなければいけないだろう。
 老生体と天剣、この二つは辛うじて均衡を保っていた。
 だが、それすら凌駕する存在が出てきた。
 シキという一人の武芸者である。
 実力に見合った相手と戦うのなら、シキは何を相手にするのか? 
レイフォン? 
リンテンス? 
それとも老生体を超えた存在か? 
それとも月に封じ込まれた悪意か?
 それはまだ誰もわからない。


 汚染獣襲来が知らされた次の日、ミンスは食事会を開いていた。
円卓に贅を凝らした料理が並んでいる。
もしこれがグレンダンの一般階級の住民が見たのなら、そのあまりの豪華さに目を剥いただろうというほどである。
ミンスの正面には、招待された五人の天剣授受者が並んで座っていた。
積極的に食べていないので、料理は減っていないのでもったいないように感じていた。
 食事をしていたミンスだったが、従者から聞かされた言葉に苦虫を潰したような顔をする。
「リンテンスは抱き込めなかったか」
 喉に酒を流し込み、なんとか平静を保とうとする。
 抱き込める確証は低かったが、抱き込めるなら抱き込みたいのが本音だ。相手は最強の天剣授受者と言われるほどの猛者であり、女王の懐刀と呼ばれるほどの人物だ。
 リンテンスの鋼糸という武器を恐れているためだ。気づかぬうちにナマス切りにされていたなど、笑えない話である。
 事実、彼は寝転がりながら汚染獣をバラバラにしたという話があるくらいだ。ミンスが気づかないうちに切られてもおかしくはない。
「だから言ったのです。あやつは陛下の手駒、それにこのようなことに興味など示さないと」
 言葉を発したのは、五十代を迎えた老齢の男である。短く刈り込まれた髪は、苦労人気質からか、それとも単純に歳だからか、灰色の髪が所々に生えていた。
 彼はカルヴァーン・ゲオルディウス・ミッドノット、天剣一の苦労人だ。
「それよりも陛下に言ったら、この計画は潰されてしまいます」
「それはないでしょう? あの人はそんなつまらない事をする人じゃありませんよ」
 カルヴァーンの言葉を否定したのは、サヴァリスだった。
 彼はにこやかに笑いながら、腕を組んでいた。
「しかし、万が一という場合が……」
「万が一も億が一もありませんよ。リンテンスさんはムダが嫌いですから」
「……まぁ、仮に知らせていてもやるけどね」
 カウンティアは薙刀の石突で軽く床を叩く。
 心地よい音が鳴るが、ミンスの心臓はバクバクと早鐘を打っていた。仮にカウンティアが剄を溢れ出したら、ただではすまないことを知っているからだ。
「だけど、あのクソ陛下だと全部知った上で待ち構えるはず」
 バーメリンは苛立ち混じりに言う。
 その態度にミンスは腹が立ったが、それを収める。ここで癇癪を起こしたら、それこそ終わりである。
「君たちの気持ちはよくわかる。これ以上、天剣の権威を陥れるような行為をさせるわけにはいかないだろう?」
 ミンスがそういうと一部を除いて押し黙った。
 ここにいる天剣授受者たちは、グレンダンでも有力な武門に所属する者たちだ。
 カウンティアとバーメリンは違うのだが、彼女たちが参加した理由は以下のとおりだ。
「私は単純に苛立ったからだけどね」
「クソ不本意だけど、同じく」
「……それでも協力してもらえるのはありがたい」
 ミンスはそう言って、一息ついてから天剣たちに宣言する。
「私が王になったら、各武門、個人にそれ相応の報酬を与えよう」
 ミンスがそういうが、天剣たちは反応しなかった。
 元々、金欲があまりない彼らである。だが、カルヴァーン、サヴァリス、カナリスの三人の後ろにいる奴らは違う。
 レイフォンが台頭することで、自分たちの武門の影響力が下がることを懸念する者たちがいるのだ。
 出る杭は打たれる、まさしくそういうことである。
「まぁ、秘策もある……心配するな」
「秘策とは?」
 今まで沈黙を守ってきたカナリスが口を開き、ミンスに質問する。
「秘密だ、当日に分かる。安心したまえ、君たちの邪魔はしない」
 そういって、ミンスは残った酒を勢いよく喉に流し込んだ。


 その日の夜のことである。
「シキ様」
 クラリーベルは寝ているシキを見ながらそう呟いた。
 リーリンに劣らず、毎日病室に通うクラリーベル。ティグリスが心配するので家には帰るが、ティグリスがいない日などは病室に泊まることもある。
 選定式があった日からクラリーベルは訓練量を増やしていた。
 悔しかった。シキの本気に近づいてない、あの時見ていることしか出来なかった自分に憤りを感じた。
 シキが教えてくれたけい技を反復し、未だに習得出来ていなかった化錬けいをこの1ヶ月で習得した。シキが見ていたら、笑いながら頭を撫でてくれる。
 だが、シキは撫でてくれない。
 なぜ? 寝ているからだ。寝ているからクラリーベルに笑ってくれない、撫でてくれない、抱き締めてくれない、くれないくれないくれないくれないくれないくれないくれないくれないくれないくれないくれないくれないくれないくれないくれないくれないくれない。
「シキ様、起きてください、稽古してください」
 クラリーベルはシキに依存しきっていた。2ヶ月に一回だけの稽古では満足できず、一週間に何度も会うことも珍しくもない。
 シキも最近では妹を持ったような気がして悪い気分ではなかった。まぁ、孤児院で小さい子供達の面倒には慣れていたという点もあるのだが。
 シキも弟だ。年下の弟や妹に憧れることもある。リーリンも最初は呆れていたが、今では料理を教えるほど仲良くなった。
 周りも子供の友情だと三人の身分の差に目を瞑っていたし、まさかクラリーベルの気持ちが本気だとは思っていない。
 救いなのが幼いクラリーベルもシキに感じている感情が何か分かっていない。分かってしまったら、ティグリスがシキに襲いかかっていたかもしれない。……閑話休題。
 クラリーベルは泣きながら、シキの布団の下に手を忍ばせる。
「シキ様」
 クラリーベルは一瞬躊躇しながら、シキの手を握った。
 意外に柔らかい手に戸惑いつつも、手を握って落ち着いた。
 しかし、幸せな時間は長くは続かなかった。
「いやぁ、甘い甘いやり取りありがとう。胸焼けしてきたよ、ませガキ」
「なっ!?」
 クラリーベルは驚きながら、後ろを向いた。そして向いて見た光景に再度驚いた。
 そこには仮面を着けたら男が空中で胡座をかいていたからだ。
「なんですか、あなたは」
「人の名前を聞くときはまずは自分からだぜ?」
 クラリーベルは得たいのしれない悪寒に襲われたが、ぐっと堪える。
 相手に隙が見つからないからだ。シキやティグリスを見てきたクラリーベルだが、ここまでの相手は見たことがない。
 たがらこそクラリーベルは相手を刺激しないように要求に答えた。
「クラリーベル・ロンスマイア」
「うん、知ってる」
 男は馬鹿にしたような口調で言う。クラリーベルは歯を噛み締めながら怒りを噛み砕く。
「名前を言いましたよ、あなたは?」
「そうだなぁ……メアリー・スーだな、今回の偽名は」
 気持ちを落ち着ける。相手のペースにハマったら思う壺だからだ。
 しかし、腰の剣帯に手が伸びているのをクラリーベルは驚かなかった。
 ただ者ではない、彼女は目の前の人物にそう評価した。
 暗部、つまり暗殺を生業としている者に会ったこともあるがあれとも違う。
 言うなれば気圧されているというべきか。気配だけでクラリーベルはメアリー・スーに負けていた。
「偽名とはっきり言うんですね」
「まぁ剣から手を離せよ。別に戦おうなんて思っちゃない」
 そんな言葉を聞いてもクラリーベルは剣から手を離すことは出来なかった。
 まるで猛獣を前にした草食動物が如く一切気を抜かなかった。
 メアリーはため息をつきながら、何もない空中に座る。
 普通は床にしりもちをつくはずだが、そこに椅子があるような体勢で座った。
「……どんな手品ですか、それ」
「ただ空気に座っただけだよ、そこまで凄いことじゃない」
 クラリーベルは非常識の塊である目の前の人物に軽い目眩を覚える。
 シキという非常識の塊を知っているがここまでではない。
「さて本題だ、クラリーベル」
「……」
「そこに寝てる馬鹿が誘拐されるから、黙って見ていてくれないか?」
 瞬間、クラリーベルはここが病院だということを忘れて、体を剄で強化した。
 そしてそのまま砲弾のようにメアリーに突っ込む。
 愚直とも言える突進だが、狭い病室では避ける場所は限定されている。
 そんなクラリーベルの様子を見て、メアリーは何も言わず指を弾いた。
「なっ!?」
 突進していたクラリーベルの体が突然止まった。
 手で止められたわけではない、武器でもない、ましてはけいではもない。
 止められたときに衝撃はなかった。まるで映像を止めたようにクラリーベルの体は空中で静止していた。
 何をされたかわからないせいか、クラリーベルは呆然としていた。
「クラリーベルさんや、こいつは仕方ないことなんだよ」
「何を言っているんですか」
 あくまでも声だけは冷静にクラリーベルはメアリーの言葉に疑問をぶつけた。
「天災とでも思ってくれ。物語で言うなら序盤で魔王が出てくるもんだ」
「なんで……」
「まぁそうだな。お前が感じてる理不尽は正当だ。だけどこいつを誘拐させろ」
 ふつふつと怒りがこみ上げてくる。
 仕方ない? 理不尽? 誘拐させろ?
「ふざけないで」
「まぁよく言われるよ。俺は仕事熱心じゃないし、今回だってただの趣味でやってることだしな」
「趣味? 趣味で、大切な人を誘拐させれるのを見ていろと……」
「うん」
 軽い調子で言い放つメアリーにクラリーベルは殺気をぶつけるが、それを無視してメアリーはクラリーベルの頭を掴み、耳元で話しかける。
「安心しろ、この寝坊助を起こすためにすることだ」
「誰が信じろと?」
「……あー、もうメンドくさい。ちょっと寝てろ」
 次の瞬間、クラリーベルは気絶していた。
 メアリーは頭を掻きながら、シキが寝るベッドにクラリーベルを横たえる。
 そっと頭を撫でて、メアリーはシキに被っていた仮面を被せる。
「いつまで寝てるつもりだろうな、コイツは……はぁ、メンドくさい」
 そう言ってメアリーは姿を消した。



 緊急警報が鳴った。
 汚染獣が襲来したことを知らせるものだが、グレンダンの人々にとってはちょっとしたお出かけの合図みたいなものだ。
 事実、孤児院の子供たちはこの状況を楽しんでいるように元気だ。
 そんな中、レイフォンは準備をしていた。
 手にはシキが使っていた錬金鋼を握って。
「レイフォン……」
「……」
 ズキリとレイフォンの胸が痛む。
 シキとの戦い以降、レイフォンはリーリンとまともに話をしていない。
 話したいのに話せない、そんな微妙な距離感がレイフォンはもどかしく感じていたが、それを壊すようなことは出来ない、いやすることはしなかった。
 ここ一ヶ月、リンテンスに稽古をつけてもらったのも強くなりたいのと同時に、リーリンと距離を置きたいからだった。
「ごめん、行くね」
 そんな言葉しか出ない自分に腹が立つレイフォン。
 振り切るように扉を開けて、外に出ようとしたとき、リーリンが腕にしがみついてきた。
「リー――――」
「ゴメン、なさい」
 レイフォンは言おうとした言葉を飲み込んだ。
 しがみついてきたリーリンの顔に驚いていたからだ。
「全然、全然あなたたちのこと理解してなかった」
「リーリン」
 あのリーリンが泣いていたからだ。レイフォンが覚えている限り泣いている姿は数える程度だからだ。
「目をそらしてた、ずっとそらしてたの!!」
「……」
 レイフォンは黙り込んだ。
 急がないといけない、そのはずだ。帰ってきてからでもリーリンの言葉を聞くのは遅くないとレイフォンは知っている。
 だが、レイフォンは黙っていた。
「あの戦いでわかったの、シキとレイフォンがいた場所がどんなに危険なのか! 私、私ッ!!」
「……」
「心のどこかで、二人は無敵で傷つきもしないと思ってた。同じ人間なのに、血を流す人なのに」
「……リーリン」
 レイフォンはリーリンの肩に触れようとして、止めた。
 血で汚れた手でリーリンに触れるのは嫌だったからだ。
 だが、レイフォンは抱きしめたかった。目の前で自責の念に押しつぶされそうなリーリンを抱きしめて、秘めた想いを告白できたらどんなにいいか。
「あの戦い、私ずっとレイフォンを応援してたの。シキなんかまけちゃえ、って」
「そうなんだ」
「……ねえ、レイフォン」
 先ほどとは打って変わって、静かな声だった。
「無事に帰ってきて。怪我したら承知しないから」
 俯いて、リーリンはそう言うとレイフォンに正面から抱きついた。
 甘い香りがレイフォンの鼻腔を擽る。
 レイフォンは、驚きながらも抱きついてきたリーリンを引き剥がそうとしなかった。
「じゃあ、リーリン。怪我せずに戻ってきたら話をしよう」
「うん」
 レイフォンはそう言って、リーリンを身体からそっと離す。
 時間がないのと、もっと落ち着いてリーリンと話がしたかったからだ。
 もうリーリンは泣いていなかった。
 代わりに眩い笑顔をレイフォンに向けていた。
「いってらっしゃい」
「いってきます」
 レイフォンはその場から飛び上がり、屋根を蹴りながら都市外縁部を目指した。
 それを見送りながら、リーリンは呟いた。
「……帰ってきてね、レイフォン」


 身体が軽かった。
 シキを切り裂いてから感じていた重さを感じなくなった。
 我ながら単純だなぁ、とレイフォンは都市外装備を付けられながら苦笑した。
「どうした、そんな顔をして」
 レイフォンが浮かれているのに気づいたのか、リンテンスは諌めるような声色でレイフォンに話しかけた。
「……約束したんです。話そうって」
「ほぅ?」
「だから、僕は帰ってきます」
 リンテンスはレイフォンに抱いていた不安を消した。
 今まで自殺するような顔をしていたのが、今では生き生きとしているのだ。
 何があったのかわからないが、レイフォンの精神状態に良い傾向をもたらした存在に興味が湧いた。
「今回、俺はお前のカバーだ。打ち漏らしたときは俺がケリを付けることになるが、これからは一人で出ることになる。なるべく殺しきれ」
「……逃しませんよ。逃すもんか」
 スッと、レイフォンの顔から感情が抜け落ちたが、今まで感じられなかった闘志のようなものを感じた。
 リンテンスは、それを見て唇を上げた。
「なら、やって来い、弟子」
「え? ……は、はい!! 先生!」
 リンテンスはヘルメットを被せて、レイフォンを弟子と認めた。

 後年、この時のことをリンテンスはこう語る。
 ――――魔が差した、アレは恥ずかしかった。
 ――――ザマァアアア!! 師匠ざまぁあああ!! って、鋼糸がぁあああああああ!?
 その時、とある少年が鋼糸で都市外に吹っ飛ばされたやらなんやら、というのは本当にどうでもいい話である。

 
 レイフォンが出撃していった三十分後。
 アルシェイラは寝ていた。
 そりゃもういびきを掻いて腹を丸出しにして、ヨダレ垂らして熟睡していた。
 アルシェイラはこの日を楽しみにしていた。わざわざカナリスに丸投げしていた書類を自分でやって、疲れを貯めたのだ。
 日向で寝て、もう襲ってくださいと言わんばかりだった。
 しかし、アルシェイラは目を覚ました。
 目を見開いて、身体をワナワナと震わせる。
「なんて、なんてことを……」
 アルシェイラは起き上がり、大声を出す。
「何してるの! カナリス? いいえ違うわね、あなたは後三歩くらいならいけてたわよね? ちょっと出てきなさい、ほら集合!!」
 アルシェイラが手を叩くと、いつの間にか五人の天剣授受者がその場に現れた。
「陛下」
「言い訳禁止!! ちょっと、グレンダンの最高戦力が寝てる奴に気づかれるとかどういうことなの!?」
 断っておくと、天剣たちの殺剄は完璧だった。
 ただアルシェイラの気配察知の方が上だっただけだ。
「あら? ミンスも来ると思ったのに。まったく暗殺を他人に任せるなんて言語道断よ」
「陛下、ミンス様は逃げておりません。策を実行中でございます」
「ダメ、ていうかあんたたちの言い分を聞きましょうか? カルヴァーン」
 カルヴァーンは片膝をつきながら、アルシェラに言った。
「最近の天剣授受者の採用……」
「没、あれだけの戦いを見せて天剣にするなってのは横暴。はい、次」
 サヴァリスは微笑をかなぐり捨てて、ニヤリと獰猛な笑みを浮かべながらこう言った。
「陛下と戦いたくて」
「それだけ?」
「ええ、それだけです」
「つまんないなぁ……、次、カナリス」
 だが、カナリスは無言で天剣を復元する。
 この行動にアルシェイラは目を見開き、驚く。カナリスとは小さい頃からの付き合いだ。
 その性格はわかっているつもりである。
「へぇ、カナリスがねぇ。次、バーメリン」
「クソ陛下、死ねっ!!」
 天剣ではなく、シキが持っているのと同じ銃を復元し、トリガーを引く。
 しかし、アルシェイラは手を軽く振って銃弾を弾き飛ばす。
「ふぅーん? あんたが来るなんてね。で、最後にカウンティアは?」
「バーメリンと同じ。なんでシキがあんな目に遭わないといけなかったの?」
 それを聞いて、アルシェイラの表情に影が見えたが一瞬のことなので誰も気づいていない。すぐに笑みを浮かべる。
「なら、私に勝てばいいのよ。言い分は聞いてあげるかもね」
「しかし陛下、バーメリンさんは殺す気ですが?」
「あー、そうね。それは聞けないわ」
 そこでカルヴァーンの言葉が遮る。
「……陛下、『かもね』という発言は撤回してもらいたい」
「勝つつもり? 気概はもらうよ、だけど」
「黙れ、クソ陛下!! シキに土下座しろ!!」
 バーメリンは引き金を引いているが、ハエを叩くような動作で弾き飛ばしているため、アルシェイラにはダメージが入っていない。
「そうね、負けるつもりで戦うわけじゃないし」
 カウンティアが薙刀を復元した。
 それに続いて、天剣たちが武器を復元していく。
 アルシェイラは吹き出し、大声で笑いこげる。
 こんな楽しいのは、シキと過ごす時間くらいかと思ったが根っからの武芸者だったらしい。アルシェイラも戦いに悦を感じる種類の人間だったらしい。
「そういえば、陛下は先ほど我々の体たらくを怒りましたね?」
 サヴァリスがそう言うと、アルシェイラは笑いを止めて、サヴァリスの言葉に耳を傾ける。
「実は僕たちは正々堂々、戦うつもりでした。……それに僕も陛下と戦いたいのは本心ですが、この一撃は違いますよ?」
 直後、超速と言えるほどの速さで近づいたサヴァリスは、怒りに歪んだ顔でアルシェイラ目掛けて技を放った。
「シキのための一撃ですよ」
 外力系衝剄の変化、剛力徹破・衝。
 愚直な正拳突き、だがその拳は受け止められるほどヤワなものではない。
 アルシェイラは身の危険を感じて、後ろに下がった。次の瞬間、突き刺さった拳を中心に、地面が二メートルほどヘコんだ。
「うわっ、なんてことしてくれたのよ」
「避けますか、本気で放ったのですがね」
 サヴァリスがしたのは単純なことだ。
拳のある一部分に剄を凝縮し、対象に当たった瞬間にそれを解き放つ。単純な拳の破壊力に、一点に集中された高密度の衝剄、やっているのは単純なものだが、溜めた剄の制御と放つタイミングと大胆かつ繊細な動作が必要な剄技である。
「カルヴァーンさん、連携は止めましょう。陛下には無意味です」
「そうだな、個々人、好き勝手にやるということで」
「ハッ、最初からあんなクソ連携するか」
「まっ、そっちの方が簡単よね」
「……」
 天剣たちはそういうと剄を練ろうとするが、その暇は与えられなかった。
「まったく、君たちが暴れると庭園が壊れる。私はここが好きなの」
 アルシェイラは指を一本立てる。
 そして、今までの雰囲気から一変して言い放った。
「後……納得してないのは私も同じだからね?」
 次の瞬間、戦いは終わった。
 
 

 
後書き
レイフォンとリーリンの和解フラグ、文章力なくてすいません。
時間かかってこれですから……おうふ。
仮面の野郎出すぎじゃね? と思う、そこのあなた! すまない、出番はこれ以降あんまりないから、安心してください。
次回は早めに! ではちぇりお!!


Q、一ヶ月何やってたの?
A、四苦八苦してました……すいません、平日に時間がなくて。

Q、サヴァリスのキャラ崩壊について
A、(∩ ゚д゚)アーアー聞こえない。ちゃうねん、戦闘狂でも友達を想えるってやりたかったでけやねん。

Q、クララってヤンデレ?
A、原作からそうだけど、あの子、片腕ぶった切られても惚れ直す狂いっぷりですよ? ヤンに決まってるじゃないですか。

Q、ミンスはこれからどうなるの?
A、「おい、見ろよ。ミンチよりもひでぇや」

Q、カウンティアが戦うと都市ぶっ壊れるんじゃ?
A、逆に考えるんだ、戦わせないで勝てばいいと。 
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