ネギま!?の世界で憑依?
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第八話 オスティアは落ちず
前書き
お待たせしました。調子が今日は良いので更新です。
1983年9月29日
■魔法世界 オスティア 墓守り人の宮殿
月詠が、黒幕を蒼い結晶体に封印し、(月詠以外にはライフメーカーは月詠の攻撃で雲散霧消したように見えた)敵の攻撃が完全に無くなり、勝利したと知った参加者達が外で大歓声を上げていた中、アリカは一人墓守り人の宮殿の最深部へと足を運び入れていた。念のため紅き翼が途中まで護衛してきたが、アスナを助けられるのは自分だけと嘘をついていた。
「妾は判ってしまったのじゃ、ライフメーカーがアスナを利用し魔法世界破滅の術式を不完全ながら完成させた事をな、魔法世界を守る為、術式を破壊する因子としてアスナを礎にするしか無いとは、ナギよ、アスナを助けると言っておったが、それも敵わんとは熟々因果な王家じゃ」
独り言を言いながらアリカは最深部で水晶のような物質に死んだように眠りながら閉じ込められて居るアスナに語りかける。
「アスナよ、百数十年もお主を苦しみ続けた上で更にこの世界の礎になってくれなど、烏滸がましいことを言う妾じゃ、幾らでも怨んでくれて良いぞ。出来うるなら妾が変わってやりたいが、それすら敵わんとは、何が女王じゃ!何が英雄じゃ!……済まぬ……アスナ済まぬ……」
泣き崩れそうに成りながらも気丈に立ちライフメーカーが黄昏の姫御子を使い、世界を無に帰す儀式=広域魔法消失現象を消失させる為に、アスナとオスティアを犠牲にしてまで世界を救う術式詠唱の準備を続ける。
「アスナよ、そなただけを犠牲にする事はせん、この術式でオスティアは崩壊するであろう、市民全てを避難させた後で、妾は残り、最後のウェスペルタティア王国女王として国の消滅に殉じるつもりじゃ」
水晶の中のアスナに涙ながらに話しかけた刹那、今の泣き顔を一番見せたくない人物が飛び込んできた。
「姫さん、今の話は本当なのか!」
「ナギ、何故此処へ入ってくるなと言ったはずじゃ」
「姫さんが、あまりに遅いから心配で」
ナギが珍しく照れたようにブツクサと言うが、アリカにとってはそれが心の底から嬉しさを醸し出していた。所謂木漏れ日のような暖かさであったが、アスナを犠牲にするという、ナギに言い逃れの出来ない行為をする自分を見られた事で自分にその様な木漏れ日を浴びる資格がないと考えて気丈に振る舞おうとした。
「ナギ、帰ってくれ!」
「姫さん、無理すんな!」
「帰れと言うのじゃ!!!」
「お前と、姫子ちゃんを犠牲にしてまでやる儀式なのか!」
ナギの言葉に、アリカは意を決し答える。
「ナギよ!この世界を救う為には心を鬼にしてアスナと妾が犠牲にならねばならんのだ!」
「そんな事許さねー!」
「許す許さないではない!」
「巫山戯んな!お前も姫子ちゃんも幸せになる権利があるんだよ!!」
ナギの独白にアリカは心の底から、この男と共に生きたいと言う思いが浮かぶが、それが敵わなぬ事と振り払う。
「数十億の民の命を捨ててまで妾は生きたくはないのじゃ!」
アリカの言動にナギが驚く、精々オスティア程度の事だと思っていたのに何故数十億なのかと。
「姫さん、数十億なんて大げさだぜ」
ナギの言動に不審を感じたアリカが聞く。
「ナギ、何処から聞いておったのじゃ?」
「はぁ?オスティア云々あたりだけど?」
アリカが珍しく先走ったと言う表情をする。
「姫さん、どうしたんだよ?」
「ななな、なんでもないのじゃ」
「姫さん、何を隠してるんだ?」
「言葉の文じゃ」
アリカは、ナギに決定的なことを知られていないと判り誤魔化しに入る。
「姫さん、根性で姫子ちゃんを助けるぜ!」
「ナギ……」
無理なのじゃと言う言葉を飲み込みアリカは無言になる。
「姫さん、泣いているのかよ」
ナギは鉄仮面姫と言われたアリカが涙ぐんでいるのを見て驚く。
「何を言うのじゃ、泣いてなどおらん」
「なら良いが、姫子ちゃんはどうすれば此処から出せるんだ?」
アリカは、ナギに嫌われても彼を騙して、アスナの犠牲の上で術式を完成させようと考えはじめた。
「ナギ、判ったのじゃ。アスナを其処から出す術を詠唱するので離れていてくれ」
「姫さん、判ったよ」
ナギがホッとした表情でアスナから離れるのを見ながら、心の底から彼に詫びながらアリカは世界を救う術式詠唱を開始しようとしたが、それは間の抜けた声で中断された。
「アリカは~ん、嘘は~いけませんで~♪」
気が付くとアリカの手を押さえる月詠が居た。
「月詠殿、何故此処に??」
突然の出現に驚くアリカ。
「そんなん、どうでもええ事や、アリカはんがアスナはんと自分とオスティアを犠牲になさるって言うはるからそれを止めに来ただけや」
月詠の言葉にアリカもナギも驚く。
「月詠殿何故それを?」
「月詠、姫さんは姫子ちゃんを助けるって言ってくれたんだぜ」
「ナギはん、話をよく聞かへんとあかんで、アリカはんは嘘ついてるんや」
月詠の言葉にアリカの表情が曇る。
「姫さん、俺に嘘を言ったのか?」
「そうじゃ、ナギ、我が騎士よ、妾達は此処世界を守る為に礎になるつもりじゃ」
そう言うアリカの目から大粒の涙がこぼれてきた。
「姫さん、無理すんな、俺も居るんだ」
「ナギ」
「姫さん」
見つめ合う二人。
「え~と、二人ともええかな?」
月詠の言葉に我に還る。
「月詠、それにみんな」
「月詠殿、皆も」
いつの間にか、他のメンバーが直ぐ側に集まってきていた。
「話は聞いたぜ、水くさいぜ」
「アリカ姫、ナギ、我々は仲間なのですから」
「そうじゃな、儂等はそんなに頼りないかな」
「そうですよ、僕だって何かの役に立てるはずです」
「タカミチの言う通りじゃ」
「そうですよ」
「いやー良い写真が撮れましたね」
ラカンが、詠春が、ゼクトが、タカミチが、ガトーが、クルトが、意を決した顔で2人に話しかけるが、アルだけはおちゃらけていた。
「しかし、皆が集まろうと、アスナを犠牲にする以外、広域魔法消失現象を消すことは不可能なのじゃ」
アリカが現実を思い出し暗い顔で独白する。
それを聞いた皆も押し黙るが、普段はおちゃらけた態度の月詠が真面目な顔で話し始める。
「まあ聞いてな。確かにライフメーカーの世界を無に帰す儀式=広域魔法消失現象はアスナを使って消すしかないのが現状やけど」
「じゃあ、姫子ちゃんを犠牲にするって言うのかよ!」
ナギの叫びに話の腰を折られた月詠がにこやかに笑いながら凄む。
「ナギ、さっきも言うたけど、話は最後まで聞く事やで」
「月詠さんの後にドラゴンが見えるけど、気のせいだよね?」
タカミチの言葉に皆が脂汗を出しながら否定する。
「儂も見える」
「私もです」
威圧感の凄さに皆が縮みこむ。
「さて、アリカはんには世界を救う術式詠唱をやって貰うで」
「月詠お前人でなしか!」
「ナギ、静かにしてくれへんか」
更に威圧感が上がる。
「世界を救う術式詠唱はやって貰うけど、アスナはんは無事に此処から出る事ができるんや」
「月詠殿何故じゃ?」
「まあ、見とってな」
アリカの疑問に答えずに月詠が護符をアスナの封印されている水晶に張り付けるとアスナだけが水晶から浮かび上がり浮かんだ状態で月詠の目の前に来た。
「アスナ」
「姫子ちゃん」
アスナ姫の姿に安堵する皆。
「月詠殿、アスナを出してしまっては、世界を救う術式詠唱が完成しないのじゃが」
アリカが顔を曇らせながら話す。
「アリカはん、アスナはんが居のうても大丈夫なんや」
「何故じゃ?」
「此や、此」
「何じゃそれは」
そう言う月詠の手には真っ赤な宝石が握られていた。
「此はうちが集めた余剰魔力や、此にアスナの髪の毛を添加して呪文を唱えれば、あら不思議」
そう言いながらアスナの髪の毛を抜いて真っ赤な宝石にまるでゼリーに刺すように髪の毛がスーッと消え去っていき。呪文が終わると未だ眠っているアスナと寸分違わぬ人間が誕生していた。
「おいおい、姫子ちゃんそっくりじゃねーか」
「アスナに瓜二つじゃ」
「此は」
「ツルペタで素晴らしいですね。此は是非私にも月詠さんのコピーを」
素っ裸のアスナコピーを見てアルが場違いな暴走をしているのを無視しながら、月詠が素早く魔法で出したドレスを纏わせる。
「これは、アスナはんのコピーで黄昏の姫御子のスペックを全て備えた魔法生物や、此をアスナはんの代わりに生け贄にすれば、アスナはんは晴れて自由の身や」
月詠の言葉にアリカの顔に喜色が見えるようになる。
「月詠殿、それは真か?」
「真も真、この月詠嘘を言う事はありゃへん」
「姫さん、これで姫子ちゃんは助かるんだよな」
「そうじゃ、アスナは助けることが出来るが……」
アリカの顔色が優れないのをナギが心配する。
「姫さん、どうしたんだよ、姫子ちゃんも助けられたんだぜ」
「しかし、妾がこれからする所業でオスティアは浮いていられぬのじゃ」
「アリカ殿、それはいったい?」
「ゼクト殿なら判るじゃろうが、オスティアは魔法の力で浮いている浮遊都市じゃ、それが広域魔法消失現象を消す際に反動でこの地の魔力が消え去るのじゃ」
その言葉に驚愕する皆。
「アリカ様、別の場所で儀式をするわけにはいけないのですか?」
「そうじゃ、別の場所ならば」
「そうは行かないのじゃ、この地でライフメーカーが発動した術式詠唱じゃ、此処でしか解除が出来ない事なのじゃ」
「その為に、オスティアの全域に避難措置を発動するのじゃ」
アリカの悲痛な叫びに皆が押し黙るが月詠の言葉に皆が驚く。
「アリカはん、オスティアに避難措置なんぞ無用やで」
「月詠殿、それはどうしてじゃ?」
ニヤリと笑う月詠が先ほどの宝石より更に大きい蒼色の宝石を浮かばせながら見せる。
「此奴は、ライフメーカーや、流石に2000年以上存在しているだけ有って凄い魔力やな、うちに比べたら遙かに下やけど」
「その宝石が?」
「そやで、うちの魔力で封印したんや」
「あの時突然消えたのはその為だったのですか」
皆が皆驚きの表情で月詠と宝石を見る。
「月詠殿はいったいぜんたい何者なのじゃ?」
「秘密でっせ、アリカ殿」
「益々興味が湧いてきますね」
「変態に知られる程、脇は甘くないで」
「それはそうと、その宝石をどうするのですか?」
「流石、タカミチ少年探偵団やな。ライフメーカーが魔法世界の崩壊を救おう言うんやら、その意志を尊重して、魔法世界崩壊のリミットを先延ばしする為のエネルギー源に成って貰おうと思うてな」
「どの様に、行うのじゃな?」
「ゼクト、簡単な事や、魔法世界の崩壊の原因はマナの枯渇にもかかわらず魔法をバンバン使う事だけど、今更魔法を使うなと言っても、MM辺りは聞かないやろうけどな」
「そうだな」
「其処で、マナが足りなければ、補充すればいいと訳や、バッテリーがあがったら充電する様な物や」
「つまり、充電池役にライフメーカーを使うと言うわけか」
「アリカはん正解や」
「最早、神の領域に近い気もしないでないんだが」
「詠春、遠くを見るんじゃない」
「判るぜ、判るよ詠春」
「こう見えて一応神様と友人やで」
「なんか、月詠が言うと冗談に聞こえないぜ」
「此をオスティアの中心に叩き込めば魔力切れは防げるんや」
「なんじゃと」
「なんちゅうバクだよ」
「ナギが呆れる程とは素晴らしい幼女ですね。是非この服を着てポーズを決めて下さい。魔法のプリンセス ミンキーモモの服ですから」
「変態は置いといて、さっさと作業はじめるで」
「どうすれば良いのじゃ?」
「耳を塞ぐ、ただそれだけや」
「なぜじゃ?」
「うちのSLBでオスティア王宮中心部に大穴空けて固定するからやで」
「SLB?」
「スターライトブレーカー、星砕きや」
「星砕き??」
「そや、全力全壊なら小惑星ぐらい砕けるで」
SLBの壁抜きでライフメーカーを封印した宝石は無事オスティア最深部に封印され魔力電池になった。
その後、アリカによって世界を救う術式詠唱が完成したが、オスティアも落ちず、アリカもアスナも無事でありゼクトすら無事という事態になった。
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