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万華鏡

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第二十一話 夏休みのはじまりその二十

「攻めるのよ。一切手加減しないで」
「本当に潰すつもりで」
「男はね、外に弱点を出してるのよ」
 これは誰でもだ。どれだけ屈強な男でも。
「そこを攻めないでどうするのよ」
「ううん、一人なら」
「潰すのよ」
 本当に容赦のない母だった。
「そうすれば悶絶して動けなくなるからね」
「大勢だと?」
「まず危ない場所には近寄らないの」
 これが第一だった、君子危うきに近寄らずということだ。
「それでいつも持たせてるけれど」
「催涙スプレーね」
「それかけて逃げるの。二人か三人ならね」
「そこで相手が怯んだところで」
「やっぱりね」
 ここでもこれを言う母だった。
「潰すのよ」
「思いきり蹴ったりして」
「二つあるから片方に当たってもいいのよ」
 男ならば聞いただけで痛くなる様な話である、とにかく男というものはそこを攻撃されると弱いのである、
「それでも潰れたらね」
「終わるから」
「悪事一瞬、激痛一生よ」
 しかも只の激痛で終わらないところがさらに怖い。一生もののダメージになる。
「もう男として終わるから」
「宦官になるのよね」
「お髭が生えなくなってね」
 それがなくなればそうなる、男性ホルモンはそこから出ているからだ。
「ならいいわね」
「神戸でもいるしね」
「男は潰すの」
 これに尽きた。
「そうすればいいのよ」
「そういうことね」
「夏は薄着に刺激されて普段よりそういうのが出るから」
「余計によね」
「気をつけてね。じゃあ五人でね」 
 彩夏を入れてである。
「夏休みもしっかりとね」
「楽しめっていうのね」
「夏休みでも何時でも楽しむ為にあるのよ」
 その時間、それはというのだ。
「人生は楽しむものよ」
「辛いことがあっても?」
「晴れる日ばかりじゃないから」
 そうしたことも入れてだというのだ。
「それもね」
「頭の中に入れて」
「それでやっていくものだからね」
「辛いことも入れて」
「そう、そうしてね」
 そのうえでだというのだ。
「楽しむのよ」
「わかったわ、そういうことなのね」
「お母さんいつも言ってるでしょ」
「実践もしてね」
「さてと、夜はね」
 晩御飯の後の話もする。
「DVDを観てね」
「何観るの?」
「魔法少女よ」
 それだとゲームを続けつつにこにことして語る。
「それ観るからね」
「アニメも観てそうして夏を過ごすのね」
「いつも通りね。けれど彩夏ちゃんはね」
「うん、普段と違う夏休みにしたいから」
 だから皆と一緒に夏期講習にも行くのだった、夏休みは今はじまろうとしていた。


第二十一話   完


                   2013・1・24 
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