DQ4TS 導く光の物語(旧題:混沌に導かれし者たち) 一~四章
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二章 やんちゃ王子の観光
2-07滋味溢れる山の幸に舌鼓を
解放された明るい雰囲気の中で、目当ての山の幸を堪能し、ブライはご満悦だった。
「これでこそ、苦労した甲斐もあったというものですな!」
それが目的だったような言い方をしないでほしい。
「素材もですが、調理法も素晴らしいものですね。教えて頂きましたから、帰ってから試すのが楽しみです」
「ほほう。それはまた、楽しみなことじゃな」
ブライとクリフトが和気藹々と話すのを複雑な気分で眺めていると、生贄を免れた村長の娘、ニーナがやってきた。
「アリーナ王子様!助けて頂き、本当にありがとうございます!王子様が、私のために、命を懸けて戦ってくださるなんて……」
命を懸けるほど手強い相手ではなかったが、そんなことを言っては亡くなった娘たちが浮かばれないので黙っておく。
「ははは、王族として、当然のことをしたまでだよ。亡くなった娘たちのことは残念だが、君だけでも助かって、本当に良かった。」
「王子様。あの、私、私は」
「ニーナさん!助かって本当に良かったですわね!」
ブライと話していたはずのクリフトが、すっと割り込んできた。
笑顔が怖い。冷気を感じる。
「道具屋さんの息子さんと、ご結婚されるそうですね!おめでたいことですわ。私たちも祝福しますわ、ね、アリーナ様!」
「あ、ああ。おめでとう、ニーナ嬢。幸せになってくれ」
「……はい。ありがとう、ございます。アリーナ王子様の、旅のご無事を、お祈りしています……」
ニーナは気落ちしたように去って行った。
何か申し訳ない。
クリフトは、塩でも撒きそうな様子で見送っている。
「若いもんは、ええのう」
他人事だと思って。
今度は村の老人が話しかけて来る。
「いやはや、全く大したお方じゃ!なんでも、力試しの旅とか。東の国エンドールでは、武術大会が開かれているというが」
「何。武術大会」
「エンドールには、この国の南東の祠から、行けるそうじゃ」
「よし行こう」
立ち上がり、ブライに止められる。
「待ちなされ。エンドールは遠いのです。こんな時間に発っても、どうにもなりませぬ。大会の期間にはまだ余裕がありますゆえ、焦ることもありますまい」
「そうか。なら良いが、止めても行くからな」
「止めはしませぬがな。申しました通り、エンドールは遠いのです。途中、町には寄りますぞ」
「ああ。間に合うなら、それで良い」
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