DQ4TS 導く光の物語(旧題:混沌に導かれし者たち) 一~四章
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二章 やんちゃ王子の観光
2-05おひとりさま
「ブライは反対するかと思ったが」
「王子の身を危険に晒すのは不本意ですが。領内の村がこれほどの被害を受けているものを、放置はできませぬ。状況からすれば、助けを呼べぬよう監視されておるでしょうし、呼べても明日には間に合いませぬ。山越えの拠点としても重要な村ですし、見殺しにはできませぬ」
「なるほど」
翌朝、生贄の身代わりとなって魔物に近付き、倒すため、村の教会に向かう。
「……籠が小さい」
生贄を運ぶ籠が、予想外に小さい。
「一人用ですな。」
「では、私が入りますね」
「駄目だろそれは。俺が入るから、ふたりは後から来てくれ」
「いけません。入っているのが男性では、魔物が逆上するかもしれませんし、アリーナ様におひとりで魔物の相手をさせるわけには参りません。」
むしろひとりで倒したいとか言ったら怒るだろうなあ。
「なら、女装するとか」
少し嫌だが。
「我らが追い付く時間を稼ぐには、それも良いかも知れませんな。しかし、王子はそれで良いのですか。自分から、女装などと言い出すとは。」
「良くはないが、仕方ないだろう」
正直、戦えればなんでも良い。
「では、そのように。クリフトも、良いな?」
「女装して戦うアリーナ様……私のために……はっ。はい!」
村人の協力で女装が完成し、籠に入る。
「王様には見せられぬお姿ですな。下手に亡きお妃様に似ておられるだけ、質が悪い」
「言うな」
「アリーナ様、素敵です」
「言うな」
「娘らしく怯える振りでもして、時間を稼ぐのですぞ」
「わかってる」
時間を稼いだかどうかなど、確認のしようが無いだろう。
準備ができたと見たのか、神父が近付いて来る。
「おお!神のごカゴがありますように!」
駄洒落か。
そんな明るく流して良い話ではないだろうに。女装しておいてなんだが。
「神父さん!シャレを言っている場合ではありませんよ!」
運び役の男にたしなめられている。
今は良いが、本物の生贄の娘に言ってないだろうな。
「では、行きますよ」
「ああ、出してくれ」
教会の裏手の森の奥、生贄を捧げる祭壇の上に、籠が下ろされる。
運び役たちは逃げるように戻って行く。
これは、中で待っていれば良いのか、出たほうが良いのか。
言われてないから好きにするか。
気配を感じたら、飛び出して先制。先手必勝。これだ。
しばらく待つと、近くに邪悪な強い気配がひとつ、いくらか弱い気配がふたつ、生まれる。
弱いほうは、テンペ周辺にいた暴れ狛犬か。
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