万華鏡
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第二十一話 夏休みのはじまりその十八
「結構ね」
「そうなの」
「あえて誰とは言わないけれど」
わかっていてもあえて言わない、こうしたことについてのエチケットだ。
「まあそういう世界だから。そうそう」
「今度は?」
「全年齢版と成人版で声優さんの名前が違っても」
「同じ人?」
「生き別れの姉妹だから」
こうしておくのがエチケットだ、声優業界の暗黙の了解である。
その暗黙の了解を話してなのだった、母はゲームを続けながら娘に言う。
「今晩は楽しみにしておいてね」
「晩御飯何なの?」
「八宝菜よ」
それだというのだ。
「お野菜たっぷり入れた熱いの作るから」
「夏に熱いもの食べて、なのね」
「たっぷり汗をかいてお風呂に入ってね」
「思いきり温まれっていうのね」
「そうしたら違うから」
「その方が夏バテしないから」
「そうよ、御飯も食べて」
母は娘に笑顔で言う。
「明日も頑張りなさい」
「暑い時に熱いものね」
「しかも精のつくものね」
「それを食べないといけないのね」
「寒い時も同じよ」
やはり熱いものを食べないといけないというのだ。
「身体を冷やさない様にしてね」
「お母さんいつもそう言うわね」
「秋田は寒かったし神戸もそうじゃない」
神戸も冬は寒い、だからだというのだ。
「余計に温まらないといけないのよ」
「じゃあ冷えた麦茶は?」
彩夏が先程飲んだそれはというと。
「いいの?」
「いいのよ。身体を熱くしてばかりでもよくないから」
「熱中症ね」
「適度が一番なのよ、水分もよく摂って」
「そういうことなのね」
「そう、基本は温めて」
そしてそれが過ぎない様にだというのだ。
「傷口だって冷やすでしょ」
「そうよね」
「お風呂でも一回冷やしてからまた温めると腰や肩、膝もよくなるから」
それを繰り返すといいのだ、血流にも影響していることだ。
「バランスだからね」
「そういうことなのね」
「じゃあ今日もたっぷり食べなさい」
量の話にもなる。
「食べ物は身体にいいものをバランスよくたっぷりよ」
「お肉もお野菜もよね」
「そうよ。だから八宝菜にもお野菜あたっぷり入れるから」
今晩の料理もだった。
「生姜もね」
「それも忘れないのね」
「生姜は身体にいいから」
だからだというのだ。
「お母さんいつも使ってるでしょ」
「葛湯にも甘酒にも入れるわよね」
冬に飲むそうしたものにも入れているのだ。
「お素麺にも」
「大蒜は翌日お休みでないと駄目だけれど」
こちらもよく使うが生姜はそれ以上にだというのだ。
「生姜は何時でも使えるからいいのよ」
「それで八宝菜にも」
「そう、使うの」
そうだというのだ。
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