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とある誤解の超能力者(マインドシーカー)

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レベル0 へやから でられない むのうりょくしゃ
  第1話 部屋から出られない無能力者

 
前書き
誰も書いたことの無いであろう、FCソフト「マインドシーカー」の二次小説です。
需要が有るとは思えませんが、掲載します。

あらすじにも書いておりますが、この作品はファミコンソフト「マインドシーカー」の二次小説であり、「とある魔術の禁書目録(科学の超電磁砲)」の二次小説でも、クロス作品でもありません。 

 


めざめは、新たなる一日の始まり。
ある人によっては、希望の始まりであり、別の人にとっては、変わらない日常の繰り返しの始まりだったり、中には苦難の1日の始まりだと思う人もいるだろう。

今、白い部屋の中で目を覚ました、牧石啓也(まきいし けいや)にとってはどうだろうか?

「今日も修行か……」
すこしだけ丸みを帯びた牧石の顔は、疲れた表情を見せていた。

それでも寝起きは良いのか、勢いよく備え付けられたベッドから立ち上がる牧石の姿からは、眠気を感じさせない。

6畳程度の部屋の中には、牧石が寝ていた備え付けのベッドと、そのそばには、コンピューターを兼ね備えた大型のスクリーンが設置されている。
その隣には、小さな小物入れや、超能力の開発に必要な装置が整然と置かれている。
他には、小さなテーブルが置かれているだけで、部屋の中では生活臭があまり感じられない。

牧石の目の前には、部屋の色と対照的な黒い扉がある。
この黒い扉の先には、廊下があるのだが、今の牧石が持つ力を全力で使っても、自力で廊下に出ることが出来ない。

物理的な力でも、そうでない力でも。


牧石は、黒い扉を忌々しそうににらみつけると、別の白い扉を開けて、浴室に入り、軽くシャワーを浴び、身支度を整える。

牧石は洗面所に据え付けられている鏡で、自分の姿を確認する。
校章の無い、黒い上下の学生服と、幼さを残した顔の表情から、周囲の人からは中学生か高校生に見えるだろう。

少し長めの黒髪を適当に整えると、
「こんなものか」
とつぶやいて、満足そうな表情を見せる。

身支度を整えた牧石は、ため息をつきながら、黒い扉を眺めていた。
「そうだな。まずは、ここから出なければ、何も始まらない」


牧石は扉の前で、目を閉じ、体をリラックスさせて、精神を集中する。
この建物の中で受けた講義で出てきた、超能力の開発トレーニングの内容に忠実に従い、呼吸を整えていく。


牧石がいる超能力開発センターでの研修内容は、基本的に精神力を集中させることと、意識を特定の状態に置くことからはじまる。

牧石は「この世界」に転生したとき、血管に薬を投与したり、脳に直接電極を挿入したり、軽い洗脳を施して超能力を開発するものだと考え、覚悟を決めていた。

しかしながら、牧石が生活及び訓練をしている、「超能力研究開発センター」では、無理やりに能力を開発させるような装置などは存在しなかった。

牧石はこの事実に対して、「この世界」ならば、学校の時間割(カリキュラム)の名のもとに、あちこちで行われているために、このセンターには存在しないだけと最初は思った。

しかし、牧石は「この世界」に来た事情から、このセンターですでに精密検査を受けている。
精密検査で能力開発訓練を受けていないのであれば、研究員がその事実に気づかないはずはない。
このことから、超能力を開発するために、投薬など必要ないことを推測した。
それは、牧石が思い浮かべた世界と異なることになる。

牧石は、自分がアニメで知っている「この世界」の知識との差異に違和感を覚えたが、確認する相手もいないため、ひとまずセンターから外出できるようにすることが、優先事項だと考え、違和感を無視した。

研究所を抜け出して外の世界に出るためには、ここでの訓練を終わらせてセンターのお墨付きを得なければならないのだ。

そして、最終的な目標である「元の世界に戻る」為には、超能力のレベルを最高レベルまで到達させて、「神と同じ水準」にまで、たどりつかなければならない。
俺を絶望に追い込んだ、瑞穂(みずほ)を一度殴るために……。

「いかん、いかん。
集中、集中……」
牧石は、そのような雑念を振り払い、精神を目の前の扉に集中させる。
「……」
精神を集中させた先には、漆黒の空間が広がっていく。
広がる闇の中にいる、牧石の閉じた瞳から思い浮かべるのは、小さな黒い球状の物体である。

漆黒に覆われた球は、目の前にある扉に仕掛けられた鍵をはずすための象徴である。
その物体が赤く光るように意識する。

その球が一定の数を満たすことで、目の前にある扉の鍵をはずすことができるのだ。
この鍵をはずすためには、目の前に思い浮かべた10個の球のうち6個光らせることができればよい。

これが、この世界で使用されている「サイロック」と呼ばれる施錠システムだった。
牧石が見た、アニメの世界では「サイロック」と呼ばれるシステムについての描写はなかった。
ひょっとしたら、牧石が読み損ねた原作には記載されているのかも知れない。
だが、残念なことに今の牧石には確認する術がなかった。

「……」
牧石のイメージで産み出さされた球体は、浮かんでは消えていった。
その中で光った球体は、一つも無かった。

牧石は、意識の中で生み出した球体を一端意識の外に追い出して、次の光の玉を生み出す。
しかし、牧石がどんなに念じても、光がともることは無かった。
講義の中で、基礎的なトレーニングをきちんと受けていれば、約5割の確率で点灯することを知っている。
逆に、全くつかないということは、逆の意味で確率が低い出来事だ。
だからといって、扉が開くわけではない。

牧石はそれでも、あきらめることなく意識を集中して、開錠を試みる。
「この程度、満足にできなければ、施設から出られない。
ならば、この部屋から出られないのも同じ事……」



牧石は、心の中で挑戦した回数を50まで数えていたが、いつの間にか数えることを放棄し、自分がここに至るまでの経過を思い出していた。
 
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