| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

戦国異伝

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第百十八話 瓦その二

「その程度じゃ。しかし雨でもじゃ」
「雨が城にもなる」
「そうなりますな」
「その通りじゃ」
 まさにそうだとだ、信長は池田に答えた。
「今ならばじゃ」
「楽にすみますや」
「そうなりますか」
「今ならそうじゃ」88
 楽に終わらせられるというのだ。
「それで待っておったのじゃ」
「この時をですか」
「今を」
「さて、よい天気じゃ」 
 信長は笑って外を見た。見れば天気は曇り今にも雨が降りそうだ、それを見ながら二人に言ったのである。
「この天気はのう」
「ですな、今は」
 二人も信長の言葉に頷く。
「格好の時です」
「仕掛けるにしましては」
「晴ればかりがよい日ではない」 
 こうも言う信長だった。
「雨の日もじゃ」
「時と場合によっては」
「よい天気ですな」
「その通りじゃ。それではじゃ」
「はい、それでは」
「殿の仰せのままに」
 信長はまだ外を見ていた、そして思うのだった。
 その石田を見て、である。
「全く、よき奴じゃが」
「それでもですな」
「あ奴は」
「困った奴でもある」
 石田はそうだというのだ。
「どうにものう」
「歯に衣を着せず己を決して曲げませぬからな」
 森は彼の鋭さ一本気を見抜いていた。
「それがよいところですが」
「厄介なところでもあるからのう」
「長所が短所ですな」
「結果としてそうなるな」
 信長も森にそうだと答える。
「あ奴はな」
「やはりそうなりますか」
「して殿」
 池田はあらためて信長に問うた。
「それで具体的にはどうされますか」
「佐吉と虎之助達をどうして収めるかじゃな」
「一時手を結ばせてもそれは所詮一時のこと」
 池田は信長にあえてこう言った。
「長きものではありませぬ」
「それでは何の意味もないな」
「はい、ですからここはどうされるのでしょうか」
「少し話をしたい者がおるわ」
「その者とは一体」
「こ奴じゃ。入れ」
 信長が言ったところで部屋に一人入って来た、池田と森にその者を見せながら話をするとそれで、であった。
 二人共納得した顔になりこう言ったのだった。
「またそれは仕組みますな」
「そうされますか」
「最初わしもどうかと思ったが」
「それがしから殿に申し上げました」
 その者が二人に述べる。
「あえてと思いまして」
「それはよいが身体を張るのう」
「そこまでするか」
「家臣の間のひびは戦よりも難儀なものです」 
 それが家を割るからだ、その者はよくわかっていた。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧