万華鏡
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第二十一話 夏休みのはじまりその八
「どうかしら。しかもね」
「あの塾あれよね」
「八条グループだからね」
このことも話される。
「余計にいいと思うけれど」
「八条家だから」
「そう、八条学園の生徒さんも多いしね」
「学校そのままで行けるから」
「どうかしら。部活もあるけれど」
「ううん、夏休みお家にいたままでもね」
基本的にアウトドアの琴乃自身が考えてみてみると。
「退屈だしね」
「だからどうかしら」
「ううん、部活もあるし」
「お友達と遊んだりもするわよね」
「ええ、結構予定入ってるけれど」
夏休み前から既にそうなっている、女子高生の夏休みも中々忙しいのだ。
「それでも時間は」
「ある?」
「そう思うけれど」
「じゃあ塾行くわね、夏の間でも」
「やっぱりそうした方がいいわよね」
「琴乃ちゃん八条大学受けるつもりでしょ」
「そう考えてるけれどね」
このことは既に母にも話している、それでお互い知っているのだ。
「八条学習塾っていったら」
「八条大学と同じ経営陣だし」
「余計いいわね」
「実際八条学園の問題集も多かったでしょ」
「高校受験の時それでかなり助かったわ」
「ううん、じゃあ」
琴乃は母と話をしてそうしてだった。
まずは熟考した顔になった、そのうえで母に答えた。
「夏休みの間ね」
「塾に行くのね」
「夏季講習よね」
「今なら受講応募出来るからね」
「じゃあ手続きして」
「もう願書とか用意してあるから」
母は笑顔で言いながら娘の前に早速願書やパンフレットを出した、用意がいいと言えばかなりいいと言えるだろう。
その母に驚いてこうも言うのだった。
「ううん、何かね」
「何かって?」
「いや、もう持って来てたのね」
「丁度塾の前通って夏季講習の垂れ幕が出てたから」
「思い立って?」
「そう、来たれ若人ってあってね」
「自衛隊みたいね、何か」
「黒と黄色の垂れ幕の色に目がいってね」
この配色は言うまでもない、とにかく目を引く色だ。
「黒とオレンジよりずっといいでしょ」
「それはそうだけれど」
「じゃあ早速願書書いてね」
「後は出すだけなのね」
「そう、お母さんが出してくるから」
「いいわよ、自転車で行って来るわよ」
「いいのよ、運動がてらだから」
母が自分で出しに行くという理由はそこにあった。
「最近ビールばかり飲んでるからね」
「夏だからよね」
「そう、だからね」
「ビール控えるとかは?」
「夏に?」
実に率直な問いだった。娘に怪訝な顔で言った言葉だ。
「まさかと思うけれど」
「夏にはビールよね」
「枝豆に冷奴にソーセージにね」
おつまみの話にもなる。
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