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魔法少女リリカルなのはvivid 車椅子の魔導師

作者:月詠
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十四話

 
前書き
二か月と言う期間が開いてしまった事、申し訳ありません!

これからの話の展開を考えていたら、これだけ期間が開いてしまいました……


昼の鍛錬で魔力切れを起こしたクロムとアス。メガーヌさんに拾われる


ではクロムくんsideより始まります 

 
ロッジ内、僕とアスの部屋

「アス…。どう?」

「大体は回復したな……」

僕とアスはベッドに寝転がりながら、魔力回復に努めていた。でも総魔力量の多い僕はほとんど回復出来ずにいる

「かれこれ一時間。やっぱり自然回復には限界があるね」

「ああ。お前は特にな……」

やっぱり魔力を限界まで使うなんてバカなマネだったかなー。ここまで回復しないなんて

≪マスターもアス様も加減を考えないからですね≫

≪その通りです≫

デバイス二機にもダメ出しをくらう始末……

「お昼ですよー!!みんな、集合!!」

外からメガーヌさんの声が聞こえた。もう昼食の時間らしい

「残りは食事をして、だね」

「そうだな」

部屋から出て、ロッジの外に出ると、みんなが用意をしているところだった

「あ、クロムくん!アスくん!」

僕達を見つけたミルテがこちらに駆け寄ってくる

「なんで川遊びに来なかったの!」

「「自分達の精神と身の為」」

見事にハモった僕とアスの思考

「むぅ~~~~~~~~!!」

盛大に頬を膨らませるミルテ。いや、そんな表情で見られても……

「あれ?クロムくんとアスくん。川の方に行かなかったの?」

なのはさんがこちらにやってくる

「え、ええ。流石に同年代の子達ですので、僕とアスは遠慮させていただきました」

「えー?なんでかな~?」

その質問には答えかねます。なのはさん

【≪正直に答えたらどうです?僕は性欲が強くて、欲情しちゃうので遠慮しましたって≫】

【とりあえず根も葉もない事実無根な事を口走るのは止めようか。本格的にバラすよ?】

その一言で沈黙したロンド。誰が性欲が強いだ……

「ダメだよ。なのは。クロムとアスは思春期の男の子なんだから、そこはわかって上げないと」

「あ、そっか」

フェイトさんの言葉で納得した様子のなのはさん

「ミルテもダメだよ?ちゃんと男の子の気持ちを考えてあげられなくちゃ、ね?」

「はい……」

少し落ち込んだ様子のミルテ。でもまだ怪訝そうな表情だ

「うん。この話はもうおしまい!さぁご飯食べよう、ね?」

フェイトさんに促され、僕達三人も席につく

ミルテはアインハルトさんの隣に、アスはウェズリーちゃんの隣に、そして僕はアスの隣に。

一番端なのは、邪魔になるから

「じゃあ、今日の良き日に感謝を込めて」

『いただきます!!』

みんな、各々のペースで食べ始める

「美味い……!!」

「うん。美味しいね」

このソースが効いてるね。あとでメニュー教えてもらおうかな?


食事が終わると、次はみんなで食器と使った器具の片づけ。僕とアスは皿洗いに回された

「じゃあ、早めに終わらせちゃおうか。でも、適当にやったらやり直しね」

「わかってる……」

まぁアスはそこまでいい加減じゃないから、大丈夫だと思うけど……

「あと、アス。割らないでね?」

「割らねぇよ」

だったらいいんだ

皿洗いは思ったより早く終わり、今は拭く作業に没頭している

キュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュ

「クロム……」

少し怒気を含んだ声色でこちらを睨むアス

「ゴメン。つい…」

アスはどうやら、この音が嫌いらしく、昔もこれをやって思いっきり頭をぶん殴られた記憶がある

悪ふざけも止めて、さっさと終わらせると食器の入ったかごをアスが持ってしまう

「アス。僕も一緒に片づけるよ?」

「どうせ届かんだろ?先に陸戦場に行っておけ」

そう言ってスタスタと行ってしまうアス。んーなんか納得いかないけど、今はいいや


てなわけで少し急ぎ目に陸戦場に来ると、先客がいた

「ん?お、クロムが最初か」

ノーヴェさんだった

「終わったのか?」

「ええ。最後の食器を戻すのはアスが勝手に全部やるって言ってもってちゃいましたけど……」

気遣ってくれたんだと思うけどね。やっぱり納得がいかない

「でも、そうなら少しゆっくりしたら良かったんじゃないのか?」

「そうも言ってられないですよ」

ノーヴェさんが頭に?を浮かべている

「まぁ見てて下さい。ロンド!録画スフィアを十機展開。ステルスと隠蔽をつけて、陸戦場全体に配置。録画優先順位はロンドに任せるよ」

≪はい。録画優先はお手本になる動き、連携、プレイを優先的にします。メニューを作りやすいような物もですね?≫

その通り。流石相棒

「なるほどな。お前、色々と盗む気満々なのな?」

「僕の総合魔法格闘技。あれは色々な人の技や動きをマネしてとり入れたものです。今更技や動きを盗むのに躊躇なんてありやしませんよ」

せっかくの高ランク魔導師のトレーニング風景が見られるんだ。この目で盗める事は全部盗むよ

「お前、昔みたいにインターミドルに出る気はないのか?」

「……なんですか?いきなり」

「お前の事、少しだけ調べた。名前を聞いた時にインターミドルの常連だって事はわかってたからな。少し深いところを」

そうですか……

「お前、元の戦闘スタイルは今の物とかけ離れてるだろ。どうしてだ?」

「……話すとでも?」

あの事はもう僕の中ではどうでもいいこと。だけど、他人に踏み荒らされるのを良しとはしない

「思わねぇ。だから別に無理に聞き出すつもりねぇ」

「話す気になったら、だったら僕はずっと話しませんよ。聞かせるような話でもないので……」

≪……配置完了しました。あとはトレーニング開始されてからです≫

うん。ありがとう

「正直、迷ってますよ。いつまでも昔の事に囚われていたらダメって気持ちと、今更公式戦に復帰して、恥を晒す事もないと言う気持ちの狭間で……」

どうしようもないくらいに……

「それに、やっぱり顔を合わせづらいんです。あの人達と」

「そうか、そうだったな。お前、ランキング上位組と結構仲良かったって話聞いた事ある」

その通りかな。あの人達にはホントに顔を合わせづらい。選考会で会うことはまずないけど、地区予選。そこに上がった時は男女混合の試合になる。これで顔を合わせる可能性はぐんっと上がる

「いえ、少し訂正です。僕は会うのが怖いだけなんです」

「怖い?どう言う事だよ」

「僕は半ば逃げる形で二年もインターミドルを離れています。今更戻って、あの人達に会った時、どれだけ冷たい目で見られるか……」

あの時のようにいくつもの冷たい視線で射抜かれて、体中を恐怖で取り込まれそうになるあの感覚が……

「お前は信じてないのか?そいつらがそんな事をするような奴じゃないって」

「……無理ですよ」

信用なんてものは脆く崩れやすいんですよ

僕はそう言って、その場から立ち去った……


ノーヴェside

「……」

だったら…だったら、てめぇの周りにいる親友はどうなんだよっ!クロム!

「そんな事も言えねェなんてな」

それほど、あいつの言葉が衝撃的だったって事か

「信用なんてものは脆く崩れやすいんですよ、か……。クロムに何があったら、そんな風になるんだよ」

その問いかけに答える奴はいない。そうだろう。その答えを知っているのはクロムだけなのだから……

「ん…?」

何かが頭に引っ掛かった。

でも、その正体は引っ掛かったままで、わからない

「あーっ!!すっきりしねぇ!」

ガシガシと頭をかいてしまう……

「しゃあねぇ。そろそろ模擬戦スタートするし、お嬢たち呼ばないとな」

私はお嬢に通信を繋いだ……


クロムside

[お前は信じてないのか?そいつらがそんな事をするような奴らじゃないって]

ノーヴェさんの言葉が頭の中で繰り返される

「そんなの信じたいよ……。僕だって、疑いたくなんて……」

でも、あの事があってからは……

「クロムくん?」

「っ!!」

突然、ミルテが目の前に現れた

「どうしたの?陸戦場に行ったんじゃ……」

「あ、うん。陸戦場に録画スフィアを配置して来たから、そこは大丈夫だよ。……少し疲れちゃってね。ロッジに戻ろうかと思ってるんだ」

「クロムくん。何かあった?」

ッ!!ホントこう言う時はいつも鋭いな……

「何もないよ。どうして?」

いつものように対応する

「……。わかった。話せるようになったら、話してね?」

そう言って、ミルテは陸戦場の方へ歩いて行ってしまった

「敵わないや……。ミルテにも隠し事出来ないなんて」

昔は普通に隠し通せたのに…。どうしてだろう


その後は誰にも会わずにロッジに戻った

「あれ…?」

ロッジの中にメガーヌさんの姿がない。どこか掃除でもしてるのかな?

「ま、いっか。ロンド。浮遊お願い」

≪はい≫

車椅子ごと、浮かせてもらい二階へ上がる

二階の一番端の部屋が僕とアスが使っている部屋

部屋に入り、ベッドに横たわる。車椅子は邪魔にならないように、端の方に押しやる

≪マスター≫

「ん?何?」

ロンドが話しかけてくる

≪私は以前、マスターがインターミドルに出るのは反対と言いました。ですが、今のマスターなら、私は大丈夫だと思うんです≫

「何を言ってるの…?僕がフィールドに入った時の事は知ってるはずでしょ?」

≪それは重々承知です。ですが、マスターは試験の時。短期決戦でも、ちゃんとフィールドに立ててたじゃないですか!≫

あれは……

≪あの時、ちゃんと記憶に向き合っていました!それ以前に、そろそろ乗り越えなくちゃなって言ったあの言葉、あれは嘘だったんですか!?≫

「嘘じゃないっ!!」

嘘なはず……ない…

≪マスター。貴方は気づいてますか?試験の時、先ほどのアス様との模擬戦。自分が笑っていた事を気づいていましたか?≫

「……」

笑う?そんな事あるはずがない。もう、戦いの時は笑わないって決めてたんだ。笑うはずなんて……

≪マスターは二年前の感覚を取り戻しつつあるんです。あの、戦うことが楽しくて楽しくて仕方なかった日々の感覚を……≫

………そうか…

「ねぇロンド。あの写真、まだ残ってるかな?」

≪三年前の写真ですか?≫

無言で頷く

≪ちゃんと残してありますよ≫

モニターに表示された写真。日付は三年前、三年前のインターミドル。つまり僕が初出場した時の写真だ

僕を含めた12人の男女が映っている。身長はバラバラ、年齢もバラバラだ。みんな10代だけど、同い年は三人くらいしかいなかった記憶がある……

その写真で中心にいる鈍銀のショートカットの男の子。……そう、三年前の僕だ

包帯を巻いて、傷だらけだけど、今ではもう作れない、満面の笑みを浮かべている

「もう一枚の方も出してくれる…?」

≪はい≫

もう一枚も表示される。これは二年前、事故に遭う前のインターミドルの時の写真

写真の中には今となってはインターミドルではその名を聞かない事はないと言うほどの人達が五人と僕。昔は一緒に写真を撮るくらい仲良かった

でも、今はもうわからない。二年も離れちゃったんだもん

「もう、こんな風に写真、撮れないのかな……」

写真を見ていた瞳が揺れた。どんどん滲んでいく……

≪マスター……≫

「ごっ…めんっ…。す、少しだけっ…だから……」

嗚咽を漏らしながら、ロンドに謝る。僕は腕で目を隠し、声も抑える……

誰かに聞かれたくないし、見られたくもない。こんな、誰にも見せた事ない、惨めで格好悪い姿……


涙がひいた頃にはもう、空は夕暮れに染まっていた……

≪落ち着きましたか?マスター≫

「……うん」

今の状態では部屋の外には出られないな…。目の周り真っ赤だろうし……

「ロンド」

≪わかってますよ≫

どうやら考えてる事がわかったようで、認識阻害の魔法をかけてくれた

≪洗面所に行って、ちゃんと治してから、みなさんの前に≫

そう言って、車椅子を動かして乗せてくれる。今回だけはロンドに全部おまかせしようかな……

下に降りると、メガーヌさんとエリオが夕飯の準備をしているところだった。アスはどうやら、ソファに沈んでいる

「あ、クロム。さっきは姿見えなかったけど、部屋で寝てたの?」

「うん。少し疲れちゃってね。ちょっと、洗面所に行ってくるね。戻ったら手伝うから」

エリオと少し会話を交わし、洗面所に入る

蛇口を捻り、水を出す。それを両手で掬い、顔を洗う

「冷たい……」

≪我慢です≫

わかってるよ。言ってみただけだから……

「うん。これで大丈夫かな」

≪はい。いつも通りです≫

ロンドにもお墨付きをもらったところで顔を拭き、キッチンに向かう

「あら、いいのよ?クロムくんは車椅子だし」

「大丈夫ですよ、メガーヌさん。これでも料理は得意なんですから」

でもとまだ少し渋るメガーヌさん

「ロンド」

≪はい。操作はお任せ下さい≫

戦闘の時と同様に浮き、必要な物を切っていく

「随分と慣れてるね。クロム」

「自炊は毎日だからね。慣れるどころか、そんじょそこらの奥様には負けないよ」

こんなもんでいいかな。一通り切り終え、メガーヌさんの方向を向く

「どうですか?」

「ふふ。なら手伝ってもらおうかしら♪」

お任せあれ。お店の味って言うのは無理かもだけど、ちゃんと美味しい物作るよ


その後、何故かお風呂に行っていた女性陣と一緒にシスターセインが戻ってきて、料理を手伝おうとして、何もやる事がないとわかった瞬間、崩れ落ちて絶望していたのは別に気にしないでおこうか


僕とエリオが手伝った夜ご飯は好評で、色々と聞かれたりした。主になのはさんやフェイトさんだけど……

夜ご飯が終わり、片づけは女性陣が受け持ってくれると言うことなので、僕、アス、エリオはお風呂へ

「広いな……」

「うん。とても三人では回れないほどに」

「ルーはまた大きくしたんだね」

またって事は前はもう少し小規模だったって事なんだ

「ふぅ。いいお湯だね」

「親父くさいぞ…。クロム」

気苦労が絶えない身としては染みるわけだよ。これが……

「それにしても、クロムもアスも随分傷が多いね」

エリオが僕達の体を見て、そう言う

「まぁね。昔からの特訓の怪我とかが傷として残ってるって感じかな」

「基本的にはクロムにつけられた傷ばかり……」

それは僕もだよ。アスと特訓してる時ぐらいだよ。怪我が絶えないの…

「でも、それを言うならエリオだって結構あるよね。やっぱり六課時代のが多いの?」

「そうだね。なのはさんの訓練とか、あとは実戦とかでね」

身体の出来方は全員、似たり寄ったりだが、傷の数はやはりエリオが一番だ

「でも、クロムのその、左腕の肩から二の腕にかけてと右のわき腹の大きな傷。抉られた怪我の傷にも見えるんだけど…」

「あー…これは……。ゴメン、流石に見なかった事にして」

エリオが見つけた僕の

これは流石に言えないかな。手を合わせてエリオに頼む

「うん。わかった。無理に聞くのも野暮だしね…。あ、そう言えば、明日の陸戦試合。クロムは参加しないんだって?」

「ああ、うん。日程を見た時に最初になのはさんに断ったんだ。流石にまだ本調子で動けるわけではないから、チームで迷惑をかけちゃうしね」

ちなみにアスとミルテはちゃんと組み込んでもらうように言ってあるよ

「って事は、観戦に回るのか……?」

今まで黙っていたアスがやっと話した

「休憩の時の飲み物と間食は僕が担当する事になるかな」

「ミルテが大喜びだな……」

うん。それは目に見えてるよ

「そう言えば、さっきからこの温泉。ピリピリしない?」

「確かに……」

アスとエリオが首を傾げている

「あーそれは、少し微弱な電気を放出し続けてるからね。軽く電気風呂状態になってるはずだよ」

これって、結構筋肉が固まってる時にやるといいんだよねー

「お前な……」

怪訝そうな顔でこちらを見て来るアス

「まぁ確かに少し加減間違えば感電だね」

と言っても、僕とエリオは雷の変換資質持ちだし、そこまで影響はないと思うけど……

「随分と操作が上手いんだね」

「まぁ、血を吐く勢いで頑張ったからね。これぐらいはお茶の子さいさいかな」

さて、そろそろ身体と頭洗ってあがろうかな

「僕はもう少し入ってるよ」

「俺も……」

「うん。わかったよ」

さっさと洗い、僕はお風呂から上がった


お風呂から部屋に戻るのに、皆さんが集まる部屋を通ると、大人組の方達だけがそこに残っていた。どうやら高町ちゃん達は部屋で遊んでいるようだ

「あ、クロムくん。早かったね」

なのはさんがこちらに気づき、話しかけてくる

「烏の行水ですので」

「でも、ちゃんと洗ってはいるよね」

それはちゃんと……

「エリオとアスは?」

「どちらも長湯するそうです。逆上せる前に出て来ると思いますよ」

今、この場にいるのは、なのはさん、フェイトさん、スバルさん、ティアナさん、ノーヴェさん、メガーヌさん。ここに1人でいるのは少々キツイような気がする……

「ねぇクロムくん。少しお話しない?」

「え、お話ですか…?」

まいったな……

「別にいいんじゃねぇか?クロム。お前、ミルテとアスのメニュー組むのにスフィア飛ばしてたろ?」

「うぐっ…」

いきなりそれかー。ノーヴェさんは容赦ないなー

「スフィア?ノーヴェ、何の事?」

「クロムの奴。午後のトレーニング、録画スフィアを飛ばして撮影してたんですよ」

そう言えば、まだ確認してないよね。あれ

「へー。全然気づかなかったけど……」

「変な視線みたいな物は感じたわね」

スバルさんは少しは周囲に警戒をしましょう。ティアナさんは流石ってとこかな

「ロンド」

≪録画スフィア十機の内、二機は流れ弾で破壊されましたが、メニューを作るには十分な物が撮れました≫

だったらよかった

「ねぇクロムくん。それ見せてもらえるかな?」

「え、ええ。まだ僕も確認していませんので、どう撮れてるかはわかりませんよ?」

基本的に全部ロンドに任せたからね

「それでもいいよ」

「わかりました。ロンド」

≪はい。大型モニターで表示します≫

大型の空間モニターで表示する。さて、どんな物があったのかな?

そこから映像を大人組と一緒に分析と反省を重ねつつ見て行き、僕は頭の中で色々と組み立ててみる

「えっと、とりあえずはこれでっと」

メニューをデバイスの記憶機能のメモ帳に打ち込んでいく

「どれどれ?」

なのはさんが横から覗きこんでくる

「………うん、よく考えて組まれてるね。ちょっと、アスくんやミルテちゃんにはには多めだと思うけど、大丈夫なの?」

「昔のメニューに比べたら少ないくらいです。まぁその代わり、内容が濃いですけど。これだったら、無理なく行けそうですね」

少し強くなってるって実感は感じないとは思うけどね

「あれ?アスとエリオは……」

「もう、部屋に行ったぜ」

気付かなかった……。うーん、集中し過ぎると周りが見えなくなるのがちょっとなー

「じゃあ、僕も部屋に行きます。お休みなさい」

『お休み』

その声を背に二階に上がる

メニューは出来た。明日は陸戦が控えてるから、明後日からはメニュー開始。これでいいか

「戻ったよ。アス」

部屋に入り、アスに声をかける

「ああ……。どうだった…?」

「何が?」

「なのはさん達に囲まれていただろう……」

まぁね。でもあれは今日の録画した映像を見る為だったし

「まぁ特に緊張とかはしなかったよ。あと、ロンド」

≪はい。転送します≫

ロンドからレイヴンに明後日からのメニューを転送する

「これは?」

「見て分かるように新しいメニュー表。明日は陸戦が控えてるから、開始するの明後日からになるよ」

「わかった……。ミルテには渡さなくていいのか?」

思い出したようにアスが聞いてくる

「アス。流石にあの女の子だけの部屋に入っていけるほどの神経は持ち合わせてないよ」

まず、絶対高町ちゃん達に足止めされるはずだし……。そしたら絶対に寝るまで離してくれないだろうからなー

「なら、明日渡すのか……?」

「そうだね。明日の陸戦が終わった後にでも」

陸戦の前に渡すと多分、集中力が回らないと思うし……

「じゃあ、とりあえず試験の時の反省点を探しながらみんなが寝静まるまで待とうか」

「了解……」

それからアスの試験の映像を重点的に見て、どこがいけなかったのかを見つけていきながら色々と話し合う。ここはこうした方が、ああした方が、戦術についての話は尽きない

でも、アスに一つだけは釘を刺した。作戦を立てるのは大いに良い。でも、策に溺れるのはダメ。策士、策略に溺れる。この通りにはならないでと……


話に熱中していたのか、耳を澄ましても何も聞こえない。深夜二時をまわっていた

「そろそろか……」

「そうだね」

タオルやらドリンクとかを用意して、音を立てないように一階に降り、外に出る

「昼に使ったところはロッジに近いから、大きい音を立てられない。もう少し奥の方に行こう」

「ああ」

昼に使った場所を通り過ぎ、さらに奥に進む

「っ!!」

「……どうした?」

急に振り返った僕に疑問の声を投げるアス

「しっ」

静かにのジェスチャーで伝え、耳を澄ませる

「……か……」

「…え……そ……」

微かに話し声が聞こえる。そこまで遠くってわけでもない

「アス。先に行っててくれるかな?少し様子を見てから行くから」

「…………」

あーこれは、俺も行くって言うサインだ

「大丈夫だよ。危険があれば、すぐになのはさん達に念話で知らせるから」

「……わかった」

そう言って、奥の方に歩いて行った

「さて、ロンド」

≪はい。声が誰かは大体の予想が出来ました≫

だよね。微かだけど、聞き取れた声は特徴のある声だった

「あまり盗み聞きってのは趣味ではないけど……」

僕は声のする方に足を進めた……


ノーヴェside

夜も更けた頃、通信でお嬢に呼び出された。なんで呼び出されたかは知らねぇ

「何だよお嬢。こんな時間に……」

ロッジから結構離れた場所にお嬢はいた。誰かに聞かれちゃマズイ話か…?

「ゴメンね。ノーヴェでも、一応、話しておこうと思って」

そう言ったお嬢の顔色は何故か優れない

「お嬢。顔色が悪いけど、大丈夫か?」

「大丈夫。えっと、話しておきたいのはクロムの事なの」

クロムについて?何かあったか?

「あいつが何かしたか?」

「ううん、そうじゃないわ。ノーヴェはこの都市伝説知ってる?」

「都市伝説?」

ウェンディに色々と聞かされたから、そのくらいなら

「ミッド中央部17区にはDSAA公認の組織がいるって話なんだけどね」

あー、そう言えば結構前にウェンディから聞かされた事があったな……

「それがどうしたんだよ。あれはただの噂だろ?」

「それが、噂では収まらないみたい」

「どう言うことだよ」

お嬢の話しぶりからして嘘ではない。そう考えると、ホントに

「ミッド中央部17区。これはヴィヴィオ達が参加するインターミドルの地区ね。でも、その地区は不正を監視し、摘発する組織がいるって事よ」

「不正を監視?そう言えば、ウェンディに聞いたのは不正を行った場合、その組織の人間に試合で断罪されるって聞いたな」

コクンと頷くお嬢

「その通りね。過去のインターミドルで不正を働いた人のデータは全部、エミュレートを突き抜けてダメージを負わされてるわ。しかも、精神的にも傷を負うらしく、その試合からはインターミドルには出てきてないわ」

そう言うとお嬢の顔がまた少し青くなる。まぁ確かに不正をしてない奴でも、そんな都市伝説があって、実際に被害者がいれば怖くなるよな

「それで?その話とクロムに何の関係があるんだ?」

「そこなんだけど、どうやらクロムはその組織に加わってる可能性があるのよね」

お嬢の言葉を一瞬疑った。クロムがそんな組織に加担してる?

「昔、その事について無限書庫や色々なデータベースを使って調べたのよ。そしたら、その組織が過去に囲っていた選手の名簿らしき物を見つけたのよ」

「おいおい。いくらなんでも、それはおかしくないか?そんな組織が無限書庫や他の場所に保管するか?普通は組織の本部に保管するか、DSAAに管理してもらうとか……っ!!」

私はその言葉を口にしてわかった。お嬢ならやりかねないと……

「気づいた?そう、一応DSAAの本部にも手を伸ばしておいたのよ。そしたら、そのデータが出てきたってわけ」

「それで、クロムの名前があったのか?」

「あった、と言っても私が見たのは除名名簿。その中にクロムと同じ名前があった、それだけなのよ」

除籍名簿。って言うことはクロムはもう、その組織とは関係がない……?

更なる思考を巡らせようとした時だった。パチパチと渇いた音が響いた

「「ッ!?」」

「お見事だよ。アルピーノちゃん」

音の正体、それは茂みの影から拍手をしながら出て来るクロムの姿だった……


クロムside

「あー。これはヤバいかなー」

足を進めると、森を抜け、ロッジの近くに出た。誰かがいるのはわかっているから、気づかれない様に近くの茂みに隠れる

話をしていたのはノーヴェさんとアルピーノちゃん。別に話自体は問題ないけど、その話題は問題ありだ

「ちょっと、アルピーノちゃんを甘く見過ぎてたかな?まさか、情報収集能力まで高いなんてなー」

≪どうしますか?機密を守る為ですし、口止めを……≫

「いや、あの二人の事だから、多分言いふらしたりはしないよ。変に確証のない情報を言って混乱させたくはないだろうしね」

それに、あくまで見られたのは除名名簿のみ。現存している名簿を見られていないだけいいとしようかな

「うん。その腕あっぱれだよ」

僕は堪らなく拍手をしてしまう。どうやらその音は予想より響き、二人に気づかれてしまう

≪マスターはアホでいらっしゃいますか?≫

いや、そんな毒舌執事みたいに言われても……。まぁ仕方ないかな

僕は拍手したまま、茂みから出て行く

「お見事だよ。アルピーノちゃん」」


「さて、僕の話をしてくれるのは嬉しいけど、その話題以外でお願いしたいな」

「ていうことは……」

アルピーノちゃんは確信を持ったみたいだね

「うん。その通り、君たちの言う組織は存在するよ。もちろん、僕は元そこのメンバーだ」

月の光だけが二人を照らし、顔を見せてくれる。でも、その顔は驚愕の一言だけだった

「でも、見られたのが除名名簿で良かった。現存するメンバーの名簿なんて見られたら、危険じゃ済まないからね」

その言葉はさらにアルピーノちゃんの顔を青くさせる。まぁでも、ホントに良かった

「おい、クロム。お前はその組織での仕事はやった事はあるのか?」

「いえ、僕の出ていたブロックには不正を働く人はいませんでしたから。他のブロックにはいたみたいですけどね」

それと、二人は組織を薄暗い組織みたいに思ってるみたいだけど、別に後ろ暗い事はない。組織はただ、IMCSでの不正を許さない。見つけ次第、断罪する。それが役目なだけ

「クロム。お前はなんでそれをあたし達に……?」

少し怪訝そうな表情でこちらを見るノーヴェさん

「ノーヴェさんにアルピーノちゃん。貴方達二人なら、間違っても秘密はもらさないだろうと踏んだんです。一応、信用してるんですよ」

「信用って、そんな会って一日も経ってない相手を……」

まぁアルピーノちゃんにおいては直感だけどね

「これ以上は僕でも話せません。いくら聞かれてもね」

色々と機密事項に引っ掛かるからね。それは除名されても話しちゃいけないし

「じゃあ、さっき話した事は秘密でお願いします。あと、アルピーノちゃんはもう除名名簿とかも見ちゃダメだよ?」

それだけ言い残し、僕は森の中に戻り、アスの魔力を辿ってアスを追った


「あ、いた」

さっきの場所から五分くらい移動したところにいたアス。結構、奥の方に行ってたんだね

「アス」

「ん……。来たか」

自分の周りにターゲット用のシューターを浮かべ、練習をしていたアス

「ゴメン。少し遅くなっちゃったね」

「いや、気にはしない……。それより、時間が惜しいから始めるぞ」

ターゲット用のシューターを回収し、息を整える

「そうだね。もう、二時半だし」

朝方に戻るのなのはさん達に見つかる可能性があるから、そこまで時間もないしね

「雷装」

昼間同様に雷装を展開し、アスと対峙する。

「でも、アスは明日の陸戦試合もあるんだし。そこまで長くは出来ないよ」

「確かに、誰と戦うにもよるが、楽しみだしな……」

珍しくウキウキしているらしい。まるで遠足前日の子供だね

「だから、短時間に色々と詰め込んでいくよ。もちろん、僕もお昼以上の力を使う」

お昼は少ない魔力消費を限界まで使ったからね。これなら、アスもついて来れるか、来れないか

魔力をさらに使った事により、回りでバチッバチッっと電気の起こる音がいくつか聞こえる

「さぁ死角のない相手にどう攻める?アス」

「……ハードなこった……!!」


昼とは違い30分1セットで繰り返していたところ、五戦目を終えた瞬間、アスが倒れた。ヤバいと思ってすぐに駆け寄る

「アス!大丈夫!?」

「あー……。悪い、また魔力切れだ……」

ほっ、良かった。昼間の疲労が残っててそれえ倒れたのかと思った

「じゃあ、はい。タオルとドリンク」

タオルを目のところにかけ、ドリンクを口に突っ込む

「ん!?………んぐ……」

毎度のことながら、このやり方でよく飲めるなー

あっという間にドリンクの中身が空になった。吸収早いから、トイレ近くなるよ?

「……もうない…」

「僕のも飲む?」

まだ一口も飲んでないドリンクを置く

「いや、体冷えるから止めとく……」

うん、そうだね。僕も少しだけドリンクを飲む

「魔力切れで立てる?」

「立てないほどじゃないな……」

なら、早いとこ立ってもらいたいなー

「もうそろそろ夜明けなんだよね」

現在時刻、午前五時半。と言うか、もう朝です

「下手したらもう誰か起きてると思う」

「……見つかった時の言い訳は……」

そんなの考えてないよ。見つからない事を前提にしてるんだし

「とにかく、急いで戻ろう。誰かに見つかると「誰に見つかるって?」……」

機械のような動きで顔を後ろへ向ける……

「の、ノーヴェさん。い、いつから……」

「お前があたしらと話してどっかに行った後から」

ずっとつけられてたっ!?

「にしても、てめぇら。魔力切れになるまでオーバーワークしやがって、この後の事はわかってるよなぁ?」

ノーヴェさんの後ろの阿修羅の姿がぁぁぁぁぁ!?

「ついでになのはさんにはもう、報告済みだ。覚悟するんだな」

「……終わったな」

お願い。冷静に考えないで。いや、考えさせないで……


この後、ロッジに戻った僕達に待っていたのはもの凄くいい笑顔を浮かべたなのはさんとフェイトさんだった……

その後?お願い、思い出させないで!軽くトラウマなんだから!?

とにかく、合宿二日目。開始です 
 

 
後書き
十四話です

前書きでも書きましたが、二か月と言う期間を開けてしまい申し訳ありません!

途中まで書いていた物を一度消去して、書き直していたのでここまで時間がかかりました。

今回はクロムくんの闇が少し見え隠れする回でもありました。クロムくんが見せた弱い姿、過去の話……

次のお話は苦手な戦闘描写を多く使う回になると思います。そして、IMCSの事についても少しずつ触れて行こうと思っています!


感想、評価、誤字報告、指摘待ってます


では次のお話で…… 
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