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ドラゴンクエストⅢ 勇者ではないアーベルの冒険

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第53話 そして、別行動へ・・・

「ここが、アーベルの部屋」
「散らかっているわね」
「そんなことより、話が先だ」
俺の部屋の感想を述べるセレンとテルルを無視して、タンタルに話しかける。
俺の部屋は、新しい魔法研究の為の資料が散乱していた。
パソコンがあれば、資料整理は楽なのだが、あいにくそのようなものはこの世界にはない。

そんなことより、タンタルの話を聞くのが先だ。
「何があったのか教えてくれ」
「俺は、城門で皆さんの見送りを考えていました」

しかし、一向に姿を現さないので、城から少し離れた木陰で休んでいたら、遠くの方で急に現れた四人組の姿を見つけたという。
そのうちの1人は、俺達が買い付けた装備品を身につけていたという。
「城から出た後、勇者が襲われたのか。そして、きえさりそうか呪文で姿を隠したと?」
「俺は、そう思いました」
俺の仮説に、タンタルは頷いた。

「見間違いは無いの?」
「それはないです。それよりも、残りの3人の方が問題だ」
タンタルの口調が変わった。
「どういうこと?」
「まさか、タンタルさんが話をした・・・」
「ああ。あの3姉妹だった」
タンタルは、ちいさくつぶやいた。


タンタルから、以前に聞いたパーティの話を思い出す。
俺達と冒険をする前のパーティは、最悪だったということだった。
そして、そのパーティが今回目をつけたのが、こともあろうに勇者だったのだ。
「どうして、助けなかったの?」
「すぐに姿を隠した。それに」
タンタルはテルルの指摘に、悔しそうに反論する。
「あいつらは、化け物だ。今の俺達でも倒せない」
「そんなに強いのか?」
「ああ、3人ともレベルは99のはずだ」
「なんだと」
俺達は唖然とした。


確か武闘家のレベル99の経験値は800万以上必要なはずだ、盗賊にしても600万以上かかるはず。
一体、どんなあくどい事をしたら、これだけの経験を積めるのか。
「どうするのよ?」

「まずは、王宮にいって、事実を報告する。
そして、3姉妹の情報を冒険者ギルドから入手する。
明日もう一度、ここに集まって欲しい」
「わかったわ」
「俺は?」
「タンタルさんは、残ってください」
「はあ」
「あなたは、3人組に顔を知られています」
「そうですね」
タンタルは落ち着いたのか元の口調に戻っていた。
「可能性は低いですが、宿屋で襲われる可能性があります」
「・・・」
「今日は、私の家で泊まってください」
「わかりました」


セレンとテルルが部屋を出た後で、タンタルにたずねる。
「タンタルさん」
「なんですか?」
「協力をお願いしたい事があります」
「俺でできることなら」
「その前に、確認したいことがあります」
「なんでしょうか?」
「ドムドーラで、記憶を失ったことを覚えていますか?」
「はい」
「間違いなく、記憶を失ったのですね?」
「そうです」

「ならば、ロマリアで奪われた呪文を使用された可能性がある」
「奪われた呪文ですか」
俺は、タンタルに「わすれる」という呪文を説明した。
「でも、今の説明では、使用者だけにしか使えない呪文では?」
タンタルは、疑問点を指摘した。
「そうです。ですが、ある程度呪文を知るものならば、相手にかけることができるよう改変することができます」
「・・・」
「彼女たちならば、ロマリアで呪文を奪うことができます」
「・・・」

「勇者の誘拐であれば、計画的に行われています」
「・・・」
「誘拐するためには、勇者の情報を入手する必要があります。
そして、あなたから情報の提供を強要した可能性も高いです」
俺は、内心で後悔していた。
策を練ったつもりだったが、相手の方が上手であったようだ。
策に溺れたようだ。

「タンタルさんに、これから「おもいだす」呪文を唱えてもらって、その俺の推測が正しいのかどうか、そして、正しい場合には記憶を思い出してもらっていいですか?」
「いいですよ、俺も気になっていたところですから」
タンタルは了解した。

俺は、勇者の特殊呪文「おもいだす」を改良した、呪文を作成していた。
俺が、ロマリアで残した「わすれる」という呪文の効果を打ち消す呪文を考案していた。
それが、「おもいだす」という呪文だ。
この呪文も誰でも使用することができる。


「う、うああ!」
「大丈夫ですか、タンタルさん」
頭を抱えてうめき出し、椅子から倒れそうなタンタルを見て、俺は、タンタルに体を寄せて支えた。
呪文が失敗したのか。
自分に呪文をかけた場合は問題なかったのだが。


「大丈夫です。アーベルさん」
声はちっとも大丈夫ではなかった。
「思い出しました。全てを・・・」
「そうか」
「記憶を思い出して、叫んでしまいました」
叫んだのは呪文による副作用では無いことを確認する。
「ということは?」
「・・・。ええ、拷問をうけたようです」
「休まなくてもいいのか?」
「後で休ませていただきます。ですが、説明が優先します」
タンタルは、俺に失われた記憶を話し始めた。



「再会したのは、ドムドーラでした」
「下の世界にも行ったことがあるとは」
「どうやら、俺達の後をついてきたようです」
「そうか」
俺は、タンタルの説明を聞いていた。

「あいつらは、ドムドーラで俺が1人になった隙をねらい、俺をさらっていきました」
気がついたら、繁みのなかに連れ去られたらしい。
「盗賊である長女が、俺に変身して武器屋に侵入したようでした」
「長女の目的は?」
「よくわかりません」
タンタルは首を横に振る。
俺の考えでは、セレンが着替えている間に、俺と偽タンタルが外に出ることで、俺を連れ去ることを考えていたのかもしれない。

「どんなことを、聞かれました?」
「アーベルさん。あなたのことです」
「そうか」
彼女たちは俺の行動に興味を持ったようだ。
ひょっとしたら、タンタルを仲間にした時点から、彼女たちに見張られていたかもしれない。

「俺のどんなことを話したのか、詳しく教えてくれ」
「はい」
タンタルは、詳しく話を続けた。
タンタルが話したことは、俺と一緒に冒険をした以外のことは、知らなかった。
はっきり言えば、タンタルが話した情報は、これから一緒に勇者と冒険することを含めて、アリアハンやロマリアの冒険者のほうが詳しいぐらいだ。
「それと、アーベルさんが、オーブを所持しているかも質問されました」
一つだけ、はっきりしたことがある。
3姉妹は不死鳥ラーミアの復活を考えているのだ。

「ありがとう、タンタルさん」
「すいません。俺をパーティに加えたばっかりに」
「気にしないで下さい。それよりもこれからも一緒に冒険をお願いしたいのですが」
俺はタンタルにふうじんの盾を手渡しながらお願いをした。

ふうじんの盾は、武闘家が装備できる最強の防御力を誇る盾で、ロマリア王国の家宝だった。
俺が、ロマリア王を退任した時に餞別でもらったのだが、魔法使いの俺は装備できないし、セレンやテルルはみかがみの盾の方が防御力が高い。
そのため、タンタルにふうじんの盾を譲ることにしたのだが、俺と離れてから、王家の家宝を持ち歩くと疑われてしまうといって、結局昨日返されてしまった。

ちなみに、このふうじんの盾はすべてを吹き飛ばす風神の力が宿っていると言われているが、俺が道具として使っても効果がなかった。
他のドラゴンクエストシリーズなら、効果があっただけに残念だ。
ただ、商人時代のテルルに見てもらった時には、不思議な力を感じると言われた。
SFC版の発言と異なった気がするがどうだろうか。

「いいのですか?」
盾を受け取りながらタンタルは質問する。
「セレンとテルルに話をしないといけませんが、了解はもらえると思います」
「ありがとうございます」
タンタルは嬉しそうにうなずく。
「それでは、少し休んでください」
「いえ、一緒に・・・」
「無理はしないでください。あなたは重要な戦力なのですから」
俺は起きあがろうとするタンタルを押しとどめた。
「ありがとうございます」


俺は、タンタルが休んだことを確認すると、手紙を4通用意した。
アリアハン、ロマリア、ポルトガ、イシスの各国の王に対して、勇者が訪ねてきたら歓待して引き留めること、その間に俺を呼び寄せることの2点の要請であった。
3姉妹が何を考えているかわからないが、勇者を連れているのなら、勇者を利用して国王に何らかの行動をさせる可能性がある。
各国の国王に、それを警告することと、3姉妹に隙ができれば勇者を奪還するためだ。
3姉妹が国王に会うという行動する可能性は高くないが、用心はすべきだろう。


部屋を出ると、母親がいた。
「アーベル。ど、どうしてここにいるの?」
俺が旅立った日のことを思い出したのだろう。
あのときはかなり気まずい思いをした。
そんな話は脇において、母親にも説明が必要なことを思い出す。
「かあさん。まずいことになりました」

俺はかいつまんで説明をして、アリアハン国王への親書を手渡した。
「ロマリアとポルトガは俺が行きます」
「大丈夫なの?」
「相手が1人なら、なんとかなります。2人以上なら、これで逃げますよ」
俺はキメラの翼を見せつける。
「無理はしないでね」
「大丈夫。あの日から、無理はしたことないから」
俺はお茶目に笑うと、セレンとテルルに逢いにいった。


翌日再会するという予定を、急遽夕方に変更して、俺は再びテルルとセレンを、俺の部屋に集めた。
さすがに、部屋は片づけた。
「勇者はどうするの?」
「俺達だけでは無理です」
どんなに相手が強くても、相手が1人なら勝機がある。
俺が覚えた変身呪文「モシャス」があれば、同等の戦いが出来るからだ。
いざとなれば、魔法の玉も投入できる。

だが、相手は3人だ。
そして、勇者を人質に取っている。
普通なら、人質など蘇生呪文でなんとかできるが、先日の事件のように復活が出来ないくらい死体を破壊する可能性がある。
現状ではあきらめるしかない。

「じゃあ、どうするの」
「さきに大魔王を倒す」
「なんだって!」
「どうして?」
俺は理由を述べる。
「大魔王のほうが弱いからだ」
「そんな」
「ばかな」
テルル達は驚く。

「通常であれば、大魔王を倒すのは至難だ」
全員が頷く。
「だが、倒すためのアイテムを入手すれば問題ない」
「そのアイテムは・・・」
「ここでは、話せない」
俺は、テルルの話をさえぎった。
「どうしてですか」
セレンは質問する。
俺の部屋の防諜設備は、王の会議室並に完璧である。
さらに、ルーラで逃走できないように、バハラタの東にある洞窟に行ってリレミトが使用できない原理を元に、解析した成果も導入している。


「タンタルの例もある」
俺は、ベッドで休んでいるタンタルに視線を移しながら、理由を説明する。
「そうね」
テルルは頷く。
例の3姉妹に誘拐されて、話を聞かれる可能性があるからだ。
念のため、俺とテルルとセレンは「おもいだす」の呪文を唱えて、3姉妹から消された記憶が無いことを確認している。


「とりあえず、3人でロマリアとポルトガ、イシスに行ってくる」
俺は、ベッドで休んでいるタンタルに話しかけた。
「すまない、アーベルさん」
「元気になったら、ちゃんと仕事してもらうから」
「任せてくれ」
俺達は、新しい旅に出た。 
 

 
後書き
第6章が終了しました。

第6章終了時点でのステータス

テルル
盗賊
ぬけめがない
せいべつ:おんな
LV:34
ちから:106
すばやさ:229
たいりょく:151
かしこさ:95
うんのよさ:117
最大HP:302
最大MP:190
攻撃力:148
防御力:215
EX:300999
はがねの鞭、みかわしの服、みかがみの盾、ミスリルヘルム

セレン
僧侶
ふつう
せいべつ:おんな
LV:36
ちから:53
すばやさ:77
たいりょく:107
かしこさ:95
うんのよさ:110
最大HP:215
最大MP:188
攻撃力:120
防御力:196
EX:410444
ゾンビキラー、ドラゴンローブ、みかがみの盾、ミスリルヘルム

アーベル
きれもの
せいべつ:おとこ
LV:37
ちから:35
すばやさ:125
たいりょく:82
かしこさ:161
うんのよさ:113
最大HP:160
最大MP:315
攻撃力:85
防御力:205
EX:476337
賢者の杖、ドラゴンローブ、魔法の盾、ミスリルヘルム

タンタル
ぶどうか
くろうにん
LV:34
ちから:200
すばやさ:145
たいりょく:178
かしこさ:52
うんのよさ:133
最大HP:350
最大MP:49
攻撃力:240
防御力:154
EX:381533
パワーナックル、黒装束、風神の盾、黒頭巾
 
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