夏の終わりの忘れ物
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俺は平凡を望む
ピピッ、ピピッ、ピピッ
8月、後半。目覚まし時計の音で目が覚める。現在8時、今日も部活。めんどくさい
まだ蝉が鳴き、日差しが強く、蒸し暑い。部屋の中は扇風機しかないものだから余計に暑い
俺はいつものように顔を洗い、制服に着替え、ご飯を食べようとした、その時、異変に気付いた。いや、まさかだろうと思うがそのまさかだ
時計はもうとっくに学校についてる時間を指していた。8時50分。いえば、遅刻である。恐らく自分の部屋の時計が壊れていたんだろう
「うわぁぁぁぁ!」
驚いた俺は食パンを加え、急いで体操服袋を持ち、あわてながら家を飛び出した
俺は陸上部、足は速いほうだが、どう考えてもあと10分で学校なんて無理だった。どんなに頑張っても片道20分はかかるのに、無理だった、間に合わないと思った。確実に遅刻魔と言われ、確実に先輩から嫌な目で見られる。それだけは何としてでも避けたかった
あぁ、なんて俺は不幸なんだろう・・・・・
俺は、ここまで来てやっと気づいた。これは夢にもあったなと
俺はさっきまでずいぶん長い夢を見ていた。タイムスリップして、でも結局は何もやり直せなくて、苦労する夢を
しかし本当にリアルだった。ひょっとしたら現実だったのかもしれない
するとその時、夢でも聞いた、少女の声を聴いた
「ねぇ、私の話も聞いて?」
その時、俺は「あのことはすべて夢ではなかった」と確信した。本当に俺はタイムスリップしたんだ・・・・・
「私もね、昔、あなたみたいなことがあったの。愛する人を失った。だから私は永遠を望んだの。でも、彼はつい10年前に死んでしまった。なぜか知らないけど、永遠のはずなのに死んでしまった。私は愛が付きかけたからじゃないかと思っている」
「つい・・・・・ってずいぶん長いぞ」
「私はもっと長い時間を生きてきた。ずっと一人で、永遠の命だから死ぬこともできない。だから仲間がほしかった。共通の苦しみを味わった君を仲間にしたかった。でも君は永遠も望まず、現在に帰ってきた。その時私は、あなたのほうがつらくて、あなたはこれからを生きていく人だって思った。さみしいけど、悔しいけど、私はもう消える、またどこかに消える。最後に一つ、「忘れたことに気づかせてくれてありがとう」じゃあ」
そういって、声は消えた。それと同時に学校についた。もちろん、遅刻だった
誰もいない教室、俺は一人で座っていた。俺になぜあの能力が身についたのか、理由が分かった。いえば、ただの偶然だったのだ。
でも、大きなことに気づいた。過去にとらわれちゃいけない。過ぎたことは過ぎたこと、俺は未来を生きていく。命あるもの終わりが来る、だから・・・・・・
それまでしっかり生きろって、そういうことだと思った。
夏の夕方ひぐらしの声と風鈴の音を聞く、やけに熱い真夏日、俺は忘れ物に気が付いた。もう大丈夫だ、前を向いて歩こう
ひぐらしの声が、やけにこだまして聞こえた・・・・・・
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