問題児たちが異世界から来るそうですよ? 召喚士の軌跡
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第15話 オオカミですよ?
白亜の宮殿に侵入し、飛鳥と二手に分かれた十六夜、ジン、耀、修也の4人は息を潜め、柱の影からペルセウスの騎士達を見ていた
「どうする? これじゃ動けねえぞ」
十六夜が困ったように言う
「俺が出て、奴らを叩く」
修也が言う
「悪い、失格にな「その心配は要らない」は?」
「ヴォルザ、ミラージュハイド」
《了解》
修也の姿が瞬く間に色を無くして姿を消す
「幻影魔法、【ミラージュハイド】。自分にしか出来ないのが難点だがこういうときには役に立つ」
「おいおい、そういうのが出来んのなら最初からしろよな」
「残念ながら時間制限付きでね、せいぜい1分が精一杯だ」
「分かった、頼むぜ」
十六夜の声と供に修也の気配が騎士達の方へと向かう
そして
「うお!」
騎士の1人の体が宙に浮く
「何だ!?」
「気をつけろ! 不可視のギグホオ」
続けてもう1人の体が地面に押さえつけられる
「クソ! 名無し風情ガハ!」
最後の1人の体が柱に叩きつけられる
そして、修也の体が現れる
「ふう、探査結界に反応は無し。出てきて大丈夫だぞ」
「凄いです、修也さん」
「確かに。見事だな」
「うん、やっぱり修也は凄い」
一同が口々に褒める
「やめろよ。何もでねえぞ」
修也は照れたように頭をかく
「でも、これで【ミラージュハイド】は使えなくなったな」
その時、修也の探査結界に反応が出る
「修也!」
耀の言葉に修也はうなずく
「十六夜、ジン。お前らは隠れてろ」
修也に言われ十六夜とジンは再び柱の陰に隠れる
修也は
8センチ程の柄の無い小さな刀を召喚し
グサリと左腕に刺した
修也は青い光に包まれ、その姿を変える
その体は雷である
その爪牙は断罪の刃である
その足は全てを駆ける
それは
雷の狼
黒い体をした
雷の獣である
「グワオオオン!」
黒狼へとその姿を変えた修也は咆哮を上げる
その大きさは耀の身長を軽く超えていた
黒い狼へと姿を変えた修也を見た一同は驚きの表情に染まる
『コッチの方が鼻が利くからな。来るぞ』
修也は念話で耀に言う
耀は頷き、気配のするほうを見る
そこには姿は見えないがしっかりと人の気配がした
一方の不可視のギフトで姿を消していた騎士は腰を抜かしていた
それもそのはず。刃物を刺すところを見ていなかった騎士は突然人が獣に変わったところを見たのだ
人へと姿を変えることが出来る獣と言えば幻獣か神格保持者くらいのものだ
それに修也の体毛はバチバチと帯電している
電気を持つということはかなり霊格が高い証拠だ
腰を抜かすなと言う方が酷だろう
そんな騎士は接近する耀に気づくことなく後頭部を激しく強打され、一撃で失神した
倒れた騎士から兜が落ちる。すると騎士の姿が虚空から出現する
それを見た耀が察する
「この兜が不可視のギフトで間違いなさそう」
「ウォン」
修也が兜を咥え、ジンに向かって投げる
「わっ」
ジンがあわてて受け取り、兜をかぶる
するとジンの姿が瞬く間に色を無くして姿を消す
「ウォンウォン」
「…? なに言ってんだ修也、ちゃんと人間の言葉で話せ」
「この姿だと人間の言葉は喋れないらしい」
「マジか。それじゃあ人間並みの知能を持ったただの狼じゃねえか。なんて言ってんのか通訳頼むぜ。春日部」
「任せて」
「ウォン」
「そろそろ次の奴らが来るから十六夜は隠れとけ。だって」
「おう、分かった」
そう言って十六夜は柱の影に再び身を隠した
その時、ほかの騎士たちが現れた
「いたぞ! 名無しの娘だ!」
「あの狼はどうする?」
「構わん! まとめて捕まえろ! 人質にして残りを炙り出せ!」
耀に襲い掛かる騎士
しかし
『耀、こいつらは俺に任せろ!』
修也は雷を身に纏いその騎士に向かって突撃する
その一撃はすさまじく近くにいた騎士にまで電撃を浴びせ、数秒で戦闘不可能にした
「凄い……わ!?」
『耀!?」
突然、前触れなく耀が吹き飛んでで壁に叩きつけられる
修也はすぐに反対方向に向かって電撃を放つが地面を抉るだけに留まった
(嘘だろ。レプリカじゃなくて、本物を使ってる奴がいるのか……!)
そう、姿だけでなく臭気、熱量、物音までをも消す完全な気配消失を可能にするギフト
それを持った騎士が付近で息を潜めているのだ
修也は考えをめぐらし、ひとつの結論に至る
それを実行すべく修也は耀の下に駆け寄り、体の下に隠す
「ウォン!」
修也は柱の影から様子を伺っていた十六夜に向かって一鳴きする
十六夜は柱の影に完全に身を隠す
それを確認した修也は
「アウォォォォォォオン」
遠吠えをする
そして体からバチバチッ! と雷を迸らせあたり一面に放つ
360度、3次元に、放たれた雷は本物をかぶっていた騎士に当たる
そう、これが修也が出した結論
「姿が見えないのであれば、炙り出せばいい」
感電し、失神した騎士から兜が落ちる
やがて放たれた雷は収まり、あたり一面は真っ黒焦げになっていた
「おいおい、危ねえぞ! 修也!」
十六夜がボロボロになった柱の影から姿を現す
どうやら無事だったようだ
「ちゃんとあたらないようにしたから問題ない。だって」
続けて耀が修也の体の下から出ながら通訳する
「ウォウ」
修也は本物の兜を咥えて十六夜に渡す
「へえ、これが本物の【ハデスの兜】か」
修也は光に包まれて元の姿に戻る
「それつけてさっさと行きな」
修也は階段のほうを指差して言う
見ればそこも真っ黒焦げでそこを守っていたであろう騎士たちは全員失神していた
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「ラ、ギャアアアアァァァァァァアア!!」
十六夜達が最奥に言ってから少し経ち甲高い不協和音の叫びが響いた
「な、何!?」
耀が驚いて辺りを見渡す
いつの間にか自分と修也を除く全てのものが石化していた
「耀、無事か!」
修也が瓦礫の山から顔を出す
「修也! 周りが…!」
「分かってる。最初にした加護のおかげか俺達は石化してないが…」
修也は辺りを見渡す
「飛鳥は大丈夫かな?」
ポツリと耀が言う
「心配なら見に行くか」
そう言って修也は手を差し出す
「うん」
耀はその手をとって頷く
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「飛鳥!」
「春日部さん!? 修也くん!? 無事だったのね!」
赤いドレスを揺らしながら修也たちのほうへと駆け寄る飛鳥
「よかった。飛鳥にも加護がちゃんと働いていた…!」
「そう、これってあなたのおかげだったのね。ありがとう」
その時、白亜の宮殿が黒く染まり、壁が生き物のように脈打ち、黒い染みから蛇の形をした石柱が修也たちを襲った
「何!? コレ!」
飛鳥はギフトカードから出した銀の十字剣で蛇を切り捨てながら言う
「分からない!」
耀は旋風で蛇を払いながら言う
「とにかく分かってんのは宮殿がモンスターになったってこと!」
修也は剣を召喚し蛇を切り捨てて言う
その時、上の階で轟音が響いた
それこそ3階まで崩れたような音だ
「……とりあえず逃げよう」
修也が8センチ程の柄の無い小さな刀を召喚していう
「そのほうが良さそうね」
「賛成」
そして修也は再び雷の獣の姿に変わり、耀と飛鳥を乗せて白亜の宮殿から脱出した
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