ソードアートオンライン VIRUS
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お見舞い
前書き
あー、最近書き進まない
雪が少し残る街を走り終えた優は汗をシャワーで流す。それが終えてシャワー室を出るとちょうど和人が目を擦りながら階段を下りてきていた。
「よう、キリト」
「おはよう、優。お前、相変わらず早いな……ちゃんと寝てるのか?」
「寝たぞ。二時間ぐらい。それぐらいでも一応大丈夫だ」
「そうなのかよ、相変わらずお前は凄いな……」
「いいから顔を洗って来い。飯を作っておくから」
そう言ってキリトを外にある手洗い場に向かわせてからキッチンに向かおうとすると今度は直葉が階段から目を擦りながら降りてきた。なんか和人と同じだな、やっぱ兄妹だからかと思いながら直葉に声をかける。
「おはよう、スグ。眠そうだな」
「あ、おはよう、優君……昨日は寝るのが遅かったからね……」
「そうなのか?まあ、何して遅く寝てたか知らないけど、体には気をつけろよ?」
「うん、じゃあ顔洗ってくるね……」
そう言って直葉は外にある手洗い場に向かって言った。優はいつもどおりキッチンに入り料理を作る。今日は手軽に作れる物にしようと材料を選んでいると悲鳴が聞こえた。
「きゃああああああ!!」
優はとりあえず直葉の悲鳴が聞こえたためそちら向かう。手洗い場では和人は直葉に追いかけられていた。直葉に事情を聞くと、和人が背中にいきなり冷水を入れたからということらしい。
「ったく、何してんだよ、カズ」
「いや、なんかついやってしまいたくなったんだよな……」
「う~……背中が冷たいよー……」
「わかったからスグ、シャワーを浴びて来い。風邪引くぞ」
そう言って直葉を家の中に上げたあと、和人に言った。
「なんで昨日ゲーム内でしたことをスグにするかな」
「いや、なんか眠そうだったし、兄としてしっかりとさせるためにやったことだ。後悔はしていない」
「うわ、なんか質の悪いやつの台詞だな、それ」
そう言って優はキッチンの方をに歩きながら和人に言った。
「後で何かスグに奢ってやれよ。今日病院行く前か後にな」
そう言って優はキッチンに戻って行った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
キッチンに戻ると直葉が椅子に座って頬を膨らましていた。
「スグ、そんなに怒るなって。今度カズがなんか奢らせることにしたから」
「ほんと?」
「ああ、だから機嫌直せ」
「わかった。じゃあ今日宇治金時ラズベリークリームパフェを奢ってもらおっと」
直葉はそう言って機嫌を直してくれた。そして優は直葉にも手伝ってもらいながら朝食を作り始める。
「じゃあ、今日の昼前に優さんも近くのファミレスに行かない?」
「ああ、いいけど……今日はちょっとな。あいつの見舞いがあるし、昼から用事があるんだ」
「そうなんだ……」
そう言うと直葉の暗くなる。そしてしばらく無言の状態が続くが直葉が口を開く。
「ねえ、優さん……あたしも一緒に病院に行っていい?その……アスナさんには挨拶したんだけどまだ優さんのお見舞いに行ってる人に会ったことないから」
「ああ、いいぞ。ユキも喜んでくれるだろうし」
言い終えると同時に和人がシャワーを浴び終えてリビングに入ってくる。すると直葉は皿をキッチンから持っていって和人に笑いながら言った。
「お兄ちゃん、今度ファミレスで宇治金時ラズベリークリームパフェ奢ってよね。さっきのお詫びとして」
「え~、あれ結構高かったようなきがするんだけど。俺の小遣いが一気に減っちまうよ」
「お前がするのが悪いんだ。自業自得だ」
そう言って優もキッチンから出て朝食を取り始める。
「ねえ、お兄ちゃん、優君。学校のほうはどうなるの?」
生野菜をかじりながら直葉は訊いた。
「俺は福岡の家の方になんか届いたSAOから帰ってきた中高生向けに臨時学校に行くことにしてる」
「あれ?でもお前のおばさん、こっちの借りてた場所返したからどうすんだよ?まだ、居候するのか?そのほうが俺らの家族はありがたいけど」
「いや、お袋達が俺がこっちに通うんだったら部屋を借りてくれるらしいからそっちに住むと思う」
「そうなのか」
そう言って和人は、俺が色々としないといけなくなると呟いていた。そして和人は付け加えるように言った。
「でも、実際、あの学校って普通にいいんだよな。入試ないし、卒業後は大学の受験資格ももらえる」
「へえ、いい話だと思うけど……なんかそれ、十把ひとからげに対応しすぎな感じも……」
「おっ、いい勘してるな」
直葉がそう言うと和人は反応して言った。
「政府の狙いはまさにそこだと思う。なんせ俺たちは、二年間もあの殺伐したデスゲームに明け暮れてたわけだからな。心理面にどういう影響を受けているかお役所は不安なのさ。ついでに言うけどパンフレット自体は存在しない。優はあっち世界での影響が大きかったから政府がお前だけに送ったんだろうよ」
「そうだったのか……あの眼鏡をシバきたくなってきた……」
優は苦笑しながら言った。そして和人が言葉を続ける。
「まあ、それはわかるがやめておけ。で、話しの続きだけど、政府は一箇所にまとめて管理したほうが安心できるんだろ」
「そ、そんな……」
そう言うと直葉はくっしゃっと顔をゆがめたので、和人が慌てて付け加えた。
「でも、管理云々はさて置き、セーフティーネット的な対処をしてくれるから有り難いよ。たとえば、俺が今から普通に高校を受験しようと思ったら、今年一年予備校なりで勉強しなおさないといけないしさ。まあ、優はそこまでしなくてもいいとこは入れると思うけど」
「う~ん、どうかな。一応、パンフが届いてなかった時は色々と復習とかしたから大体はできるけど少しいい高校に行くにはもう少し勉強しなきゃなんないな」
「そうしても大丈夫だよ、優君やお兄ちゃん成績いいんだしさ」
「まあ、優わな。俺はほとんど何にもしてないから、過去形になってるよ」
「なら、私と優君が家庭教師をしてあげるよ!いいでしょ、優君?」
「いいけど、俺もカズに勝てないのあったからな」
「大丈夫だよ」
「ほう、じゃあ、優が唯一勝てなかった情報処理を教えてもらおうか」
「うっ……」
それを聞いた直葉は言葉を詰まらせる。その状況を微笑みながら見る優は食べ終わった食事の食器を片付ける。その時に少し考え事をした。実際、今は正直学校に行く気にすらなれない。ユキの安否にほとんど気にして授業どころではないだろう。しかし、実際、学校に行く以前に時間がない。素早く情報を手に入れなければそう思い、素早く皿を洗い終えた優は一度着替えてから直葉と和人ともに病院に向かった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
病院の前に着いた直葉は大きい病院を眺めていた。優は直葉に声をかける。
「どうした、スグ」
「え、うんとね、やっぱりこの病院大きいなってね」
「まあそうだな」
そして、いつものゲートを潜り抜けて院内に入り、いつもどうりカウンターでパスをもらう。エレベーターに乗って最上階へと向かう。いつもの場所で和人と別れて直葉とともにユキの眠る病室に向かった。
ユキの病室前に来て足を止める。
「ここ……?」
「ああ、ここに眠ってるんだ」
そう言ってパスをスリットに差し込んで扉のロックを解除する。
「本庄……雪乃さん……。キャラネーム、名前の一部分を使ってたんだね……。よくいるタイプの人だね」
「そうなのか?俺、そういうのあんま気にしたことないからさ。正直わかんないんだよ」
ドアが開きその中に優と直葉は踏み込む。同時に化粧品会社の香水だろうか、そんなにおいと花のにおいがほのかに漂っていた。そしてカーテンを手に掛け開く。そこには、今だナーヴギアによって拘束されたユキの姿があった。
「また来たよ、ユキ。今日は俺の友人の妹いるから紹介するよ。直葉って言うんだ」
「こ、こんにちは」
そう言って直葉はベットの前に立って挨拶する。
「桐ケ谷直葉です」
「挨拶も終わったとこだし、紹介するよ。彼女がユキ。血盟騎士団で姫騎士といわれていてアスナと同等の指示を得てて信頼されてた人だ。まあ、ちょっといかれたファンクラブとかがあったけどな」
優は苦笑しながら答える。
「はじめまして、雪乃さん」
「そんなにかしこまらなくても大丈夫だぞ。ユキは同姓だったらその辺気にしないと思うから」
そう言って優はユキのベットの横にある椅子に座って、ユキの手を握る。直葉にも椅子を出してあげる。直葉は優の隣の椅子に座って呟くように言った。
「アスナさんもそうだったけどユキさんも本当に眠っていると思えない」
「ああ。俺もそう思えるよ……」
苦笑しながらユキの顔を見た。ユキはそこまで肉や筋肉が落ちておらず、あの世界とまったく同じだった。
「……本当に眠ってないならどれだけうれしいことやら……」
そしていつもどうり手を握ってたまにユキに話しかける。しかし、こんなことを何日も繰り返しているがまったく帰ってこない。あまりにも悲しい現実につい涙腺が緩みかけて涙が出そうになる。ほんと、泣き虫になったな、そう思いながら目を擦る。そして、優はユキの近くに居続けた。
「優君……私、今日はもう帰るね。ちょっと用事思い出したから」
「そうか、じゃあ俺も帰るとするか」
そう言うと直葉は首を振って言った。
「ううん、優君はまだその人の傍にいてあげなよ」
「そうか……わかった」
「じゃあね、優君。それにユキさんも」
そう言って直葉は病室を出て行った。出て行ったときの直葉の目には涙のようなものが見えた。
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