八条学園怪異譚

　だがここでこうも言う先生だった。
「ドミンゴももう七十を超えてるけれどね」
「あの人どう見ても三十位ですよね」
「もっと若いかも知れｊないですね」
「じゃあ息子さん位ね」
　兄弟ではなくそちらになるというｊのだ。
「それかお孫さんね」
「そんな年齢ですね」
「兄弟ではないですね」
「うん、それじゃあ」
　ここでこんなことが言われた。
「隠し子とかね。ドミンゴさんの」
「プラシド＝ドミンゴの隠し子って」
　少し聞いただけでこうなることだった。
「それって世界的なスキャンダルですよね」
「それこそシュワちゃんの隠し子並ですよ」
「流石にそれはないわよね」
　言い出した先生自身も流石にそれはないと言う。
「やっぱり」
「まあ普通はないですよね」
「幾ら何でも」
　生徒達もこう言う。
「ドミンゴの隠し子がこの学園にいるとか」
「幾ら何でも」
「ただそっくりさんで名前が一緒なだけですよね」
「それだけですよね」
「ええ。絶対にそうよ」
　隠し子ではなくそちらだというのだ。
「有り得ないから。まあとにかく大蒜には大蒜よ」
「匂いを以て匂いを制す、ですか」
「そういうことですね」
「そう、ちょっと行ってくるわ」
「一応これでも牛乳飲んだんですけれどね」
「そうしたんですけれど」
「それでも残るものは残るのよ」
　幾ら牛乳を飲んでもだというのだ。大蒜の匂いというものはとにかく強く残るものなのだ。
「だからちょっと行って来るわね」
「わかりました、じゃあパエリア食べに行って下さい」
「是非共」
　生徒達も反対することではなかった、そうした話を授業の中でするのだった。
　愛実と聖花もその話を聞いた、それでだった。
　昼休み二人は高等部商業科の食堂でパエリアを頼んだ、大きな皿の上にある黄金の御飯を食べながら二人でいた。
　愛実はその中のプチトマトやピーマン、それに鶏肉と様々なシーフードに大蒜を食べながら聖花に言った。
「やっぱり美味しいわよね、パエリアって」
「そうね。それにしても学生食堂でパエリアが出るっていうのは」
「凄いことよね」
「そう思うわ。量も多いしね」
「これ食べたらもうお腹一杯だからね」
「いいメニューよね。栄養のバランスもいいし」
　この点でもパエリアは合格だった、それに。
　鶏肉にシーフードも食べてからこんな話もした。
「これ冷凍よね」
「絶対にそうよね」
　愛実は聖花の言葉に答えた。
「だから安くて沢山作られるのよ」
「この鶏肉もシーフードも他のメニューにも使われてるけれど」
「親子丼とか海鮮麺とかにね」　
　そうしたメニューにも使われていることはすぐにわかることだった。
「使ってるわよね」
「色々なお料理にね」
「一つの食材は沢山のメニューに使わないと」
　愛実はスプーンでパエリアを食べながら言う。
「効率が悪いのよ」
「手間とかお金のことで」
「でしょ？パン屋さんでもだし」
「そうね。それはね」
「一緒に出来るものはそうしないと」
「食堂はやっていけないわね」
「トンカツだってそれぞれで焼き加減とか衣の具合は変えるけれど」
　だがそれでもだというのだ。
「使う素材は一緒だからね」
「豚肉に卵に小麦粉に」
「油もね」
　それに香辛料もだ。
「素材は一緒なのよ」
「調理の仕方で変えるのね」
「そう、そうするものだから」
　こう聖花に話すのだった